【2025年最新動向】法制度改正など建設業界で注目の変更点まとめ

昨今、建設業法や建築基準法など建設業に関する法制度の改正が相次いでいます。
これらの改正は、建設業に従事する皆さんの業務や働き方に大きな影響を与える可能性があり、しっかりと内容を把握して適切に対応することが求められるでしょう。
そこでこの記事では、2025年に変わる/変わった法律や各種制度の主な変更点を簡単にまとめてご紹介します。ぜひ参考にしてください。
建設業法関連

技術者配置の金額要件を引き上げ
建設業法施行令が一部改正され、2025年2月1日に施行となりました。これにより、主任技術者または監理技術者の配置・専任が必要となる金額要件などが緩和されました。
金額要件 | 旧 | 新 |
特定建設業許可・監理技術者の配置を要する下請代金額の下限 | 4,500万円 (7,000万円) |
5,000万円 (8,000万円) |
主任技術者または監理技術者の専任を要する請負代金額の下限 | 4,000万円 (8,000万円) |
4,500万円 (9,000万円) |
※かっこ内は建築一式工事の場合
詳しくは、『【2025年建設業法改正】標準労務費や資材価格高騰による変更契約の対応が急務!徹底解説』や『土木施工管理技士講座 第11回「第一次検定 土木法規」』でご紹介しています。
技術者の現場兼務が条件付きで可能に
主任技術者・監理技術者の配置については、上記のとおり工事1件の請負代金額が一定の額を超える場合、専任配置する必要があります。
しかし、2024年12月13日の改正建設業法施行により、いくつかの条件を満たせば専任要件が緩和され、2つの現場まで兼務することが可能となりました。
兼務が認められる条件としては
- 請負代金が1億円未満(建築一式工事の場合は2億円未満)の工事
- 各工事の下請次数は3次まで
- 工事現場の状況を確認するためのICT機器(情報通信技術)の導入
などとされています。
その他の条件など詳細は、『【2025年建設業法改正】標準労務費や資材価格高騰による変更契約の対応が急務!徹底解説』をご参照ください。
改正法は段階的に施行されています!
2024年6月に第3次担い手3法(建設業法・品確法・入契法の一体的改正)が成立し、改正建設業法・入契法は大きく3段階に分けて施行されることとなっています。
これまで2024年9月と12月に一部の改正が施行されました。残る最終段階も2025年12月までに実施されることとなっていますので、今後も注視しておく必要があるでしょう。
なお今回の建設業法改正の全体像については、『【2025年建設業法改正】標準労務費や資材価格高騰による変更契約の対応が急務!徹底解説』をご覧ください。
こちらの記事では、いわゆる「おそれ情報」の通知義務(資材価格が上がるおそれがある場合、そのリスクを受注者から発注者へ伝えなければいけないというもの)などについても詳しくご紹介しています。
建築基準法・建築物省エネ法

2025年4月1日、改正建築基準法・建築物省エネ法が施行となりました。
改正法の概要については『2025年度からの建築基準法改正で建築業界はどう変わるか?』の記事で詳しく解説しています。
「4号特例」の縮小
建築基準法ではこれまで、確認申請を出す必要がある建築物について、その規模や構造によって第1~4号に分類。
そのうちの4号は、一般的な木造戸建て住宅の多くが該当するもので、一定の条件を満たせば、4号建築物を建てる際の確認申請において構造審査などが省略されるという特例がありました(いわゆる「4号特例」)。
今回の建築基準法改正によりこの分類基準が見直され、4号は廃止、従来の4号建築物は新2号と新3号に再編されています。
一般的な木造戸建て住宅は新2号に該当しますが、一部審査が省略される特例の対象は新3号のみとなるため、多くのケースでこれまで不要とされていた審査が今後は必須となるでしょう。
構造基準の改定
上記の4号特例の縮小に伴い、新2号に該当する旧4号建築物は構造審査の対象となりました。
また、今回の改正では壁量基準や柱の小径基準も見直されています。
これまでは「重い屋根」と「軽い屋根」という2種類の区分に応じて必要壁量などを計算していましたが、この計算方法は太陽光パネルの設置などを想定していない時代に定められたもの。
近年は、次の「省エネ基準適合の義務化」にも関連する太陽光パネルや断熱材の使用などにより建築物が重量化しているため、そうした実態に即し、建築物の仕様や重量に応じて算定する方式に改定されました。
省エネ基準適合の義務化
改正建築物省エネ法の施行により、2025年4月以降に着工する建築物は原則、住宅・非住宅を問わずすべて省エネ基準への適合が義務となりました。
改正後は、建築物の断熱性能を表す断熱等級において「等級4」以上が必須に。断熱等級は1~7の7段階に分けられ、かつては「4」が最高等級とされていました。つまり、今後はかつての最高ランクが最低水準になるということです。
建築物の省エネ性能を向上させる取り組みとしては、断熱材の使用やLED照明の導入、太陽光発電設備の設置などがあげられます。
これらは建築物の重量化につながり、構造上の安全性確保が欠かせません。前述した「4号特例の縮小」や「構造基準の改定」は、この「省エネ基準の適合義務」と密接に関わっているのです。
【関連記事】
〈東京都〉太陽光発電設備などの設置義務化

2025年4月から東京都では、新築建築物へ太陽光発電設備など再生可能エネルギー利用設備の設置を義務付ける制度が始まりました。
これは都の環境確保条例が改正されたことに伴い施行されたものです。
延べ床面積2000㎡以上の大規模建築物は全棟、2000㎡未満の中小規模建築物は都内で一定量以上の建物を供給する事業者(大手ハウスメーカーなど)が建てたものを対象に義務化されています。
そのほか、電気自動車充電設備の設置、断熱・省エネ性能の確保なども義務となりました。
制度の概要や背景、ねらいについては、『【東京都】2025年4月から新築建築物に太陽光発電設備など設置義務化!都担当者に聞く背景やねらい』の記事で詳しくご紹介しています。
その他、各種制度などの改正ダイジェスト

品確法運用指針の改正
2024年6月の品確法改正にあわせ、「発注関係事務の運用に関する指針」も改正することとなり、2025年2月にその内容および4月から運用開始することが決まりました。
品確法の改正を踏まえ、担い手確保のための働き方改革・処遇改善、新技術の活用等による生産性向上などが盛り込まれています。
【参考】
品確法の運用指針改正案に「新技術の活用」 自民党品確議連:2025年1月31日(金)配信
品確法運用指針改正4月から 「適切な対応」発注者に要請:2025年2月4日(火)配信
設計労務単価、全国全職種平均6%増
国土交通省は2025年2月14日、3月から適用する公共工事設計労務単価を発表しました。
全国全職種単純平均で前年度比6.0%の増、13年連続の引き上げとなりました。これにより全国全職種の加重平均値は2万4852円となっています。
【参考】設計労務単価、全国全職種平均6%増 13年連続の引き上げ:2025年2月17日(月)配信
土木工事・業務の積算基準に完全週休2日補正など新設
国土交通省は2025年2月18日、4月から適用する土木工事・業務の積算基準改定を発表しました。
2025年度からは「完全週休2日(土日)」の実現などを目指し、そのための補正係数を新設。多様な働き方を支援する取り組みを実施するということです。
【参考】完全週休2日補正や熱中症対策を新設 土木工事・業務の積算基準改定:2025年2月28日(金)配信
新たな総合評価「技術提案評価SⅠ型」試行
国土交通省は、新たな総合評価落札方式として「技術提案評価SⅠ型」の試行を2025年度から始めます。
SⅠ型とは、受注者からの技術提案によって品質向上などが期待できる場合は仕様や工法の変更を認めるというもの。技術提案を採用する際の費用は入札価格に含めず、予定価格の5%を上限として契約変更します。
改正品確法にVFM(Value For Money:支払いに対して最も価値の高いサービスを供給すること)の考え方が盛り込まれたことを受けて導入されるということです。
【参考】「技術提案SⅠ型」2025年度試行 実施要領を各地整に通知へ:2025年3月10日(月)配信
経審で資本性借入金の扱いが自己資本に
国土交通省は、経営事項審査において資本性借入金を自己資本とみなして審査するよう、取り扱い方法を改正します。2025年7月から施行予定です。
【参考】資本性借入金を自己資本とみなし審査 経審で取り扱い改正:2025年4月8日(火)配信
まとめ
2025年は、2月に第7次エネルギー基本計画が策定されたほか、6月をめどに国土強靭化実施中期計画も策定される予定となっており、建設業にも大いに関わる国の方針が打ち出されます。
一方、昨年の働き方改革関連法施行による「2024年問題」に続き、いわゆる団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となり超高齢化社会に突入する「2025年問題」も指摘され、担い手不足が叫ばれて久しい建設業においても避けては通れない課題です。
建設業を取り巻く環境は大きく変化しています。最新の動向を注視し、適切に対応することがより一層求められるでしょう。
(建設データ編集部)