土木施工管理技士講座 第11回「第一次検定 土木法規」
「法律って専門的な言葉が多くて難しい…」
「読んでもさっぱり頭に入ってこない…」
この記事はこんな悩みがある方に向けて書いています。
どうもWebライターの佐藤拓真です。
土木施工管理技術検定対策における基礎力養成ということで、今回は「土木法規」について解説していきます。
【前回の記事】
「法律って難しそう…」って思う方がいるかもしれませんが、実はそれほど難しくはありません。

むしろ、土木施工管理技士の試験において、土木法規は得点のチャンスなんです。
なぜ、得点源だと言えるのか?
今回の記事ではその理由や出題されるポイントを絞って解説するので、ぜひ最後まで読んでください。
この記事を読んでいただければ、グッと合格に近づきますよ。
それでは参ります。
なお、本記事は1級を対象に解説していきます。
2級を受けるか1級を受けるか迷っている方は、いきなり1級を受けるメリットを解説した記事をぜひ読んでください。
実際に受検された488名のアンケート結果や体験談もあるので、土木施工管理技術検定を受検される方には参考になると思います。
元準大手ゼネコン勤務|土木の現場監督7年|ブロガー兼Webライター|SNS総フォロワー2.3万名|出版書籍「仕組み図解 土木工事が一番わかる」
土木法規を勉強するべき理由
まず、土木法規を勉強すべき理由についてお伝えします。
大きく以下の2つです。
- 出題内容や範囲が明確だから
- 逆に土木法規を知らないと○○だから
それぞれ詳しく解説します。
土木法規を勉強するべき理由① 出題内容や範囲が明確だから
土木法規は選択問題で、例年は12問出題され、その中から8問解答します。
出題される内容は以下の通りです。
【出題される内容】
- 労働基準法
- 労働安全衛生法
- 建設業法
- 道路関係法
- 河川法
- 騒音・振動規制法
そして、ここ5年は3つの法律(「労働基準法」「労働安全衛生法」「建設業法」)から5問が出題されています。
土木法規は解答数が8問ですので、そのうち5問ということは合格基準の6割超えです。
実際に出題された問題を見てもらえばわかる通り、対策も行いやすく、貴重な得点源であると言えます。
土木法規を勉強するべき理由② 知らないと○○だから
土木法規を勉強すべき2つ目の理由は、むしろその分野を知らないとはずかしいから。
この分野の知識は施工管理技士として当然身に付けておくべきものです。
確かに、試験に合格すれば施工管理技士の資格を得ることはできます。
しかし、法律分野が難しいからという理由で、その部分の学習を避けて合格を目指すのは適切でしょうか?実際の現場で、法律の知識なしで業務を遂行することは困難です。

現場を統括する立場である施工管理技士が土木法規を知らないというのは、プロフェッショナルとしての責任を果たせないことを意味します。
また、試験で出題される内容は単純な暗記で対応できる基本的なものがほとんどです。
皆さんが恐れているほど、難しい分野ではありません。
ですので、この記事で解説する内容をしっかりと最後まで読んで、確実に理解を深めていただきたいと思います。
労働基準法
労働基準法は、労働者の権利を守るための基本的な法律です。
これだけ聞くと、「難しそう」と思うかもしれませんが、実際に土木施工管理技士の試験で出題される問題はそれほど難しくなく、得点のチャンスです。
労働基準法の頻出テーマ
労働基準法からは、例年2問出題されています。
【頻出テーマと出題年度】
- 労働時間、休憩、休日:令和2年、令和3年、令和4年、令和5年、令和6年
- 賃金:令和2年、令和3年、令和4年、令和5年
- 有給休暇:令和2年、令和3年、令和6年
労働契約に関して、労働時間、休憩、休日、賃金、有給休暇といった内容が出題されています。
労働契約
労働時間や休憩、休日については、法律で決まっています。
- 労働時間:原則として、1日に8時間以内、かつ、1週間に40時間以内
- 休憩:6時間を超える労働の場合は45分以上、8時間を超える労働の場合は1時間以上
- 休日:毎週少なくとも1日、または、4週間を通じて4日以上
時間外労働と割増賃金
使用者が労働者に対し、労働時間を延長させる、または休日に労働させる場合においては、通常の労働時間または労働日の賃金の計算額に対して、以下の表の割増率で計算した割増賃金を支払う必要があります。
勤務時間 | 割増賃金 |
通常の時間外労働(1カ月ごとに60時間以内) | 2割5分以上 |
通常の時間外労働(1カ月ごとに60時間を超える)※60時間を超える部分 | 5割以上 |
深夜の時間外労働(1カ月ごとに60時間以内) | 5割以上 |
深夜の時間外労働(1カ月ごとに60時間を超える)※60時間を超える部分 | 7割5分以上 |
法定休日の労働 | 3割5分以上 |
法定休日の深夜の労働 | 6割以上 |
休憩時間
使用者は、1日の労働時間が6時間を超える時には、少なくとも45分の休憩時間を労働者に与える必要があります。
また、労働時間が8時間を超える場合には、1時間以上の休憩を与える必要があります。
この休憩時間は「原則として一斉」「労働者はこの時間を自由に過ごせる」といったことが決まっています。
労働時間 | 休憩時間 |
6時間以内 | なし |
6時間を超える8時間未満 | 45分以上 |
8時間を超える | 60分以上 |
労働契約における禁止事項
労働契約においては以下のようなことが禁止されています。
- 労働契約の不履行については、違約金や損害賠償額を予定する契約をしてはならない
- 労働することを条件とする前貸しの債権と賃金を相殺してはならない
- 期間の定めのある労働契約は、3年(原則)を超える期間で締結してはならない
- 労働基準法や就業規則に達しない労働契約は、その部分が無効
就業規則
常時10人以上の労働者を使用する使用者は就業規則を作成し、行政庁に届け出る必要があります。
なお、就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約においては、基準に達していない部分は無効となります。
労働基準法に関する過去問
実際の試験では、以下のような問題が出題されます。
【労働時間、休憩および休日に関する過去問】
☆問題
【出典】令和6年度1級土木施工管理技術検定 第一次検定 試験問題A
☆解答 [ 2 ]
労働基準法第36条に基づき、時間外労働の上限規制は以下の通りです。
【原則規定】
- 1カ月につき45時間
- 1年につき360時間
【労働者に支払う賃金に関する過去問】
☆問題
【出典】令和5年度1級土木施工管理技術検定 第一次検定 試験問題A
☆解答 [ 1 ]
労働契約の不履行について、違約金または損害賠償を定めることはできません。
労働安全衛生法
労働安全衛生法は、労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境を形成することを目的とした法律です。建設現場は危険を伴う作業が多いため、労働安全衛生法の知識は非常に重要です。

試験対策としては、条文だけでなく具体的な事例や対策を理解することが求められます。
労働安全衛生法の頻出テーマ
労働安全衛生法からは、例年2問出題されます。
【頻出テーマと出題年度】
- 安全管理体制:令和2年、令和3年、令和6年
- 作業主任者:令和4年、令和5年
- コンクリート造の工作物の解体等作業主任者:令和2年、令和3年、令和4年、令和5年、令和6年
作業主任者
作業主任者に関する問題も、労働安全衛生法において重要なテーマです。
建設現場における特定の危険な作業においては、作業主任者を選任し、その指揮のもとで作業を行う必要があります。
試験では特に「どのような作業に作業主任者が必要か」「作業主任者の職務内容」が問われます。
【作業主任者の選任を必要とする主な作業】
- 地山の掘削(掘削面の高さが2m以上の場合のみ)
- 足場の組立て・解体、変更(吊り足場、張出し足場または高さが5m以上の足場)
- 橋梁上部構造の架設(高さが5m以上または支間が30m以上の場合のみ)
- コンクリート造の工作物の解体・破壊(高さが5m以上の場合のみ)
- 土止め支保工の切梁・腹起こしの取付け・取外し
- 型枠支保工の組立て・解体
- ずい道等の覆工の組立て・解体
- コンクリート破砕器による破砕
- 酸素欠乏危険場所における作業
- 潜函工法・その他の圧気工法で行われる高圧室内作業
- アセチレン溶接装置・ガス集合溶接装置による金属の溶接・溶断・加熱
どのような作業に作業主任者が必要なのか、まずは正確に理解しておくことが重要です。

実際の工事現場でも、作業主任者が必要な作業は「作業主任者に関する掲示」が必要です。知らなかったでは済まされません。
コンクリート造の工作物の解体等の作業主任者
コンクリート造の工作物の解体等の作業主任者に関する問題は毎年出題され、必ず押さえておくべきテーマです。
高さが5m以上のコンクリート造の工作物の解体等の作業においては、作業主任者の選任が必要になり、事業者や作業主任者が行わなければいけないことが次のように定められています。
事業者が行うこと | 工作物の形状・亀裂・周囲の状況等を調査し、作業計画を定め、関係労働者に周知させる |
作業を行う区域内に、関係労働者以外の労働者の立ち入りを禁止する | |
強風・大雨・大雪等の悪天候のため、作業の実施に危険が予想されるときは、作業を中止する | |
器具・工具等を上げ下ろすときは、吊り綱・吊り袋等を労働者に使用させる | |
外壁・柱等の引倒し等の作業を行うときは、一定の合図を定め、関係労働者に周知させる | |
引倒し等の作業に従事する労働者以外の労働者が避難したことを確認した後に作業させる | |
技能講習を修了した者のうちから作業主任者を選任する | |
作業に従事する労働者に保護帽を着用させる | |
作業主任者が行うこと | 作業の方法および労働者の配置を決定し、作業を直接指揮する |
器具・工具・墜落制止用器具(安全帯)等および保護帽の機能を点検し、不良品を取り除く | |
要求性能墜落制止用器具(安全帯)等および保護帽の使用状況を監視する |
ポイントは、「事業者」「作業主任者」のどちらがやるべき内容なのかしっかりと分けて覚えることです。
過去の試験では事業者と作業主任者どちらが行うのかを問う問題が出題されています。
労働安全衛生法の過去問
実際の試験では、以下のような問題が出題されます。
【作業主任者に関する過去問】
☆問題
【出典】令和5年度1級土木施工管理技術検定 第一次検定 試験問題A
☆解答 [ 2 ]
(1)地山の掘削は高さが2m以上で作業主任者の選任が必要です。
(3)足場の組立て、解体は高さが5m以上で作業主任者の選任が必要です。
(4)コンクリート橋梁上部構造の架設は高さが5m以上で作業主任者の選任が必要です。
【コンクリート造の工作物の解体等の作業に関する過去問】
☆問題
【出典】令和6年度1級土木施工管理技術検定 第一次検定 試験問題A
☆解答 [ 1 ]
強風・大雨・大雪等の悪天候のため、作業の実施に危険が予想されるとき、作業を中止するのは事業者です。
建設業法
建設業法は、建設業の適正な運営と建設工事の質の向上を図ることを目的とした法律です。
建設業を営む上での許可要件、契約に関するルール、施工管理に関する規定など、幅広い内容が定められています。
建設業法の頻出テーマ
建設業法からは、例年1問出題されています。
【頻出テーマと出題年度】
- 元請の義務:令和4年、令和5年、令和6年
- 技術者制度:令和2年、令和3年
元請の義務
建設業者は、建設工事の請負契約を締結する際、工事の内容に応じて、各工事種別の材料費、労務費、その他の経費の内訳や、各工程ごとの作業内容とその準備に必要な日数等を明確にし、見積もりを作成するよう努める必要があります。
建設業法は下請負人の経済的地位の確立や体質改善を促進するため、元請負人に一定の義務を課しています。
①下請負人の意見の聴取
元請負人が、自ら請け負った建設工事を実施するために必要な工程の詳細、作業方法、その他自社で定めるべき事項を決定する際には、あらかじめ下請負人の意見を聴取しなければなりません。
下請負人の意見の聴取というのは、建設業法第24条で定められていることに加えて、工事の安全性や品質管理の観点においても不可欠です。

実際に私が現場監督として働いていたとき、詳細な施工計画を立案する際には、協力業者とよく打ち合わせを行い、計画書を作成していました。
元請負人は工程の詳細や作業方法を決定する際、下請負人と綿密な協議を行い、その意見を受け入れて反映させることが、法的にも、そして施工管理の効率の上でも必要なことなのです。
②下請代金の支払い
元請負人は、請負代金の出来形部分に対する支払いを受けた場合、その支払い対象となった工事を実施した下請負人に対して、実施された出来形部分に相当する下請代金を、支払いを受けた日から1カ月以内、かつできるだけ早い期間で支払わなければなりません。
また、元請負人は前払金の支払いを受けた場合、資材の購入、労働者の募集、その他建設工事の着手に必要な費用として下請負人に前払金を支払うよう、適切な配慮を行う必要があります。
③検査および引き渡し
元請負人は、下請負人から工事完了の通知を受けた場合、その通知日から20日以内、かつできる限り短い期間で、工事の完成を確認するための検査を実施しなければなりません。
また、検査により下請負人が施工した工事が完成していることを確認した後、下請負人から申し出があれば、特約がある場合を除いて、直ちに工事の目的物の引き渡しを受けなければなりません。
- 下請代金の支払いは、元請が支払いを受けてから1カ月以内
- 下請負人から完成した旨の通知を受けたときは、20日以内に検査をする
- 検査が終わり下請負人から申し出があれば、直ちに引渡しを受ける
元請の義務に関しても、覚えるべきポイントは数字です。特にこの3つはしっかりと覚えましょう。
技術者制度
技術者制度において、覚えるポイントは主任技術者と監理技術についてです。設置および専任・非専任の条件と金額を押さえておきましょう。
主任技術者・監理技術者の設置
建設業許可を受けている建設業者が建設工事を請け負った場合、請負金額や元請・下請の別に関わらず、工事現場に主任技術者を配置する必要があります。
さらに、発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者(元請業者)は、下請契約の請負代金合計が5,000万円以上(建築一式工事の場合は8,000万円以上)となる場合、工事現場に監理技術者を配置しなければなりません。
2025年2月1日の法改正により、配置要件の金額が引き上げられました。
技術者制度についても、今までと同様に覚えるべきポイントは数字です。
監理技術者の設置要件である請負代金の額と専任・非専任の条件については、よく問われているので覚えておきましょう。
【参考】
★主任技術者になるための条件…実務経験10年以上、2級土木施工管理技士
★監理技術者になるための条件…1級土木施工管理技士
※正確にはその他の条件もあり
主任技術者および監理技術者の専任
公共性の高い施設や多数の人が利用する施設などに関する重要な建設工事(国または地方公共団体が発注する建設工事など)で、請負代金が4,500万円以上(建築一式工事の場合は9,000万円以上)の場合、発注者から直接工事を請け負った建設業者は、工事現場ごとに専任の主任技術者または監理技術者を配置しなければなりません。
こちらも2025年2月1日の法改正により、専任の要件になる金額が引き上げられました。
また2024年12月13日の改正では、一定の条件のもとで技術者の専任要件が緩和され、兼務が可能になっています。
詳しくは、「【2025年建設業法改正】標準労務費や資材価格高騰による変更契約の対応が急務!徹底解説」をご覧ください。

「専任か非専任かは、請負金額」「監理技術者か主任技術者かは、下請負金額」で判断しましょう。
【主任技術者・監理技術者の専任要件】
請負金額4,500万円未満 | 請負金額4,500万円以上(※) |
非専任 | 専任 |
※建築一式工事の場合9,000万円以上
【監理技術者の設置要件】
下請負金額5,000万円未満 | 下請金額5,000万円以上(※) |
主任技術者 | 監理技術者 |
※建築一式工事の場合8,000万円以上
建設業法の過去問
実際の試験では、以下のような問題が出題されます。
【元請の義務に関する過去問】
☆問題
【出典】令和6年度1級土木施工管理技術検定 第一次検定 試験問題A
☆解答 [ 3 ]
検査により完成が確認されたとき、引き渡しの申し出があれば「直ちに」工事の目的物の引渡しを受けなければならないと定められています。
【技術者制度に関する過去問】
☆問題
【出典】令和2年度1級土木施工管理技術検定 第一次検定 試験問題A
☆解答 [ 2 ]
特定元方建設事業者は、その建設工事を施工するために締結した下請負契約の金額が政令で定める金額以上の場合、監理技術者を置かなければならない。
まとめ
以上、土木法規について過去問を交えて解説しました。
【土木法規の頻出テーマ】
- 土木法規は「労働基準法」「労働安全衛生法」「建設業法」から5問出題される
- 労働基準法は「労働時間、休憩、休日」「賃金」「有給休暇」が頻出
- 労働安全衛生法は「主任技術者の専任」「コンクリート造の工作物の解体等の作業」が頻出
- 建設業法は「元請の義務」「技術者制度」が頻出
苦手分野こそ今のうちに勉強して、来年度の合格につなげましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。

作者紹介 佐藤拓真さん

作者紹介 佐藤拓真さん