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【2025年建設業法改正】標準労務費や資材価格高騰による変更契約の対応が急務!徹底解説

[法改正]

【2025年建設業法改正】標準労務費や資材価格高騰による変更契約の対応が急務!徹底解説

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建設業は、私たちの生活や社会の基盤を支えるとても重要な役割を担っています。道路や建物などのインフラ整備だけでなく、災害時には地域を守る存在としても欠かせない存在です。このように社会にとって必要不可欠な業界ですが、近年では働く人の数が減少していることが大きな課題となっています。

これまでにも平成26年や令和元年に建設業法などの改正が行われ、「担い手3法」として建設業界の労働環境改善や品質向上に取り組んできました。しかし、それでもなお、厳しい労働条件や人材不足といった問題が解消されていないのが現状です。

そこで2025年には、これらの課題により強力に対応し、建設業が未来にわたってその役割を果たしていけるよう、新たな改正が行われる予定です。

この記事を書いた人

行政書士 宮城彩奈

行政書士 宮城彩奈

「許認可申請や経審」から「建設業法務」「補助金を活用した資金調達」まで、建設業者様の経営全般をサポート。
また、許可取得後についても「請負契約書のリーガルチェックや作成」から「許可や資格者の期限管理」「建設業法違反にならない技術者の配置」まで継続的に経営サポートをしている。
【プロフィール詳細】

2025年の建設業法改正の概要とは?

建設業は、社会資本の整備や災害時の「地域の守り手」として、私たちの生活と社会経済活動を支える重要な役割を担っています。しかし、厳しい就労条件や人材不足の影響により、業界が直面する課題は年々深刻化しています。このような状況を受け、2025年の建設業法改正では「持続可能な建設業」の実現を目指し、次の3つを柱とした取り組みが行われます。

1.処遇改善
建設業界で働く人々の処遇を改善するため、適正な賃金の確保や労働環境の向上が求められます。特に、技能者の賃金の原資となる労務費を適正に確保することが重要視されています。この一環として、中央建設業審議会が標準労務費の基準を作成し、公表する仕組みが導入されます。これにより、業界全体で適正な労務費が確保されることを目指しています。

2.資材価格高騰への対応
資材価格の急激な高騰が、現場技能者の賃金や労務費に影響を及ぼさないよう、請負契約に価格変更の条件を明記することが義務化されます。価格変動リスクへの適切な対応が可能になることで、受発注者間のトラブルを防ぎ、安定した事業運営を支援します。

3.働き方改革と生産性の向上
長時間労働の削減や週休2日の確保を目指し、過度に短い工期での契約が禁止されます。また、ICT技術の活用による業務の効率化が促進され、現場運営の負担軽減が期待されています。特に、監理技術者の専任規制の緩和は、施工管理の柔軟性を高める大きな一歩となるでしょう。

改正時期

今回の法改正は、2024年12月13日から段階的に施行されています。各施策の具体的な施行スケジュールについては、国土交通省の公式情報を参考にしながら準備を進めることが重要です。

2025年の建設業法改正の内容とは?

処遇改善と労務費の基準について

2025年の建設業法改正では、技能者の皆さんが適切な賃金を受け取れるよう、「労務費の基準」に関する規定が新たに設けられました。この基準は、建設業界全体での処遇改善を進め、持続可能な業界づくりを目指しています。

労務費の基準の導入による変化

今回の改正では、技能者に適正な労務費が確保されるよう、見積りの際に著しく低い労務費による提案や変更依頼が禁止されました。このルールは、技能者の労務費が不当に削られることを防ぐためのものです。

また、違反があった場合には、次のような措置が取られます。

  • 受注者(建設業者)に対しては、国土交通大臣などから指導や監督が行われます。
  • 発注者が違反した場合は、国土交通大臣などから勧告や公表措置が行われます。

このような仕組みにより、業界全体で適正な取引が進むことが期待されています。

今後の進展

「労務費の基準」については、令和6年9月以降に中央建設業審議会のワーキンググループで詳細が検討されています。これに伴い、新しい基準が策定され次第、国土交通省などからプレスリリースが出される予定ですので、最新情報を随時確認することをおすすめします。

処遇改善が目指すもの

この改正により、技能者が適正な賃金を受け取れるだけでなく、建設業界で働くことの魅力が高まります。労務費の適正化が進むことで、若い世代や新たな人材が業界に加わり、持続可能な発展が期待されています。

資材価格高騰による請負金額の変更方法明記にかかる契約書の見直し

2025年の建設業法改正に合わせて、会社のルールや契約内容を改めて確認しておくことが大切です。

新しい法律に合わせて、すでに結んでいる契約についても新しいルールに合わせるための覚書を追加したり、必要に応じて再契約したりすることで、法律違反を防ぐことができます。契約内容を確認するときには、特に資材価格の変動への対応がしっかり明記されているかをチェックしましょう。

今回の改正で、請負代金などの変更方法が契約書の法定記載事項となり、これに対応することが求められるからです。また、資材価格が上がる恐れがある場合、受注者は「おそれ情報」を発注者に通知する義務があります。

さらに、発注者には誠実に協議に応じる努力義務(公共工事の場合は義務)が課されており、受注者・発注者双方が納得できる条件を整えるための話し合いが促進されます。

「おそれ情報」について

おそれ情報とは、資材価格や労務費が急激に高騰する恐れがある場合に、そのリスクを発注者へ通知するための情報を指します。この制度により、リスクが顕在化する前に対応を進められる仕組みが整えられています。以下は具体的なポイントです。

1.おそれ情報の対象となる事象
おそれ情報の対象となる事象は、主に以下のような場合です。

  • 主要な資材の供給不足や価格の高騰
    (例:自然災害で特定の資材工場が被災し、供給が滞ることで価格が上昇する場合)
  • 特定の建設工事に必要な労務の不足や費用の上昇
    (例:特定の工場建設需要が急増し、専門技能者の獲得競争で労務費が高騰する場合)

これらは、天災や経済状況など、発注者と受注者のどちらにも責任がない状況で発生します。

2.おそれ情報の通知方法
おそれ情報を通知する際には、リスクの根拠となる情報(「根拠情報」)を併せて提供する必要があります。根拠情報としては、以下のような信頼性のある資料が例に挙げられます。

  • 資材業者の発表や公的な統計資料
  • メディアの記事や市場動向のレポート

通知は、見積書の交付時などに併せて行い、発注者が確認したことを記録に残すことが重要です。通知書やメールなど、記録を保存できる方法を採用することで、双方が後から内容を確認しやすくなります。

働き方改革と生産性向上

2025年の建設業法改正では、働き方改革と生産性向上が重要な柱となっています。この取り組みは、業界全体の労働環境を改善し、より効率的で持続可能な働き方を実現することを目指しています。

働き方改革の取り組み

これまでの法改正で一定の成果が見られたものの、建設業の働き方は他の業界と比べて依然として厳しい状況にあります。これを受け、長時間労働の是正や週休2日の確保を進めるため、以下のようなルールが導入されます。

  • 著しく短い工期による請負契約の締結禁止
    無理のある短期間での工期設定を防ぐため、受注者が過度なスケジュールで契約を結ぶことが禁止されます。これにより、働きすぎを防ぎ、労働環境の改善が期待されています。
  • 工期変更に関する協議の促進
    資材の入手困難などが発生する可能性がある場合、受注者は発注者にその情報を事前に通知する義務があります。また、実際に問題が発生した場合は、受注者が工期の変更を求めて協議を申し出ることができ、発注者は誠実に対応するよう努める必要があります。

生産性向上のための取り組み

近年、建設現場ではデジタル技術の活用が進んでいます。タブレット端末を利用した設計図や現場写真の共有、ウェアラブルカメラを活用した映像や音声のリアルタイム共有など、ICT技術の導入が施工管理の効率化に役立っています。

今回の改正では、ICTの活用を条件に、監理技術者の専任規制が合理化されることになりました。この規制緩和により、監理技術者が複数の現場を同時に管理しやすくなり、施工業務の柔軟性が向上することが期待されています。

2024年12月13日の建設業法改正では、監理技術者の専任義務に関する規制が緩和され、一定の条件下で複数の工事現場を兼務できるようになります。

監理技術者の専任義務の合理化とは?

これまで、建設業法施行令第27条に規定する重要な工事、かつ、工事1件の請負代金額が4,500万円以上(建築一式工事は9,000万円以上)の工事は主任技術者又は監理技術者(以下、監理技術者等)の専任配置する必要がありましたが、2024年12月13日の改正法施行により、以下の条件を満たす場合には、2つの現場まで兼務が可能となりました。

  • 工事の規模:請負代金が1億円未満(建築一式工事の場合は2億円未満)の工事。
  • 現場間の距離:1日で巡回可能で、移動時間がおおむね片道2時間以内であること。
  • 下請け業者の階層:各工事の下請け業者が3次までであること。
  • 連絡体制の確保:監理技術者との連絡を円滑に行うため、必要な措置を講じること。
  • ICTの活用:工事現場の状況を確認できる情報通信技術(ICT)を導入すること。
  • 計画書の作成:人員配置を示す計画書を作成し、適切に保存すること。

これらの条件を満たすことで、監理技術者が複数の現場を効率的に管理できるようになり、労働力不足の緩和や生産性の向上が期待されています。

さらに、営業所技術者(これまでの専任技術者)についても、一定の条件下で工事現場の監理技術者等の職務を兼務できる特例が設けられました。

行政書士
宮城彩奈

専任配置する必要がある工事の請負代金額は、2025年2月1日に、工事1件の請負代金額が4,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)から、4,500万円以上(建築一式工事は9,000万円以上)に改正しました。

まとめ

2025年の建設業法改正は、建設業界の未来を見据えた大切な取り組みです。働きやすい環境を整える「処遇改善」や、技能者の賃金を守るための「労務費の基準」の導入、資材価格の変動に対応する「おそれ情報」の通知制度など、業界全体を支える仕組みが盛り込まれています。

また、働き方改革を進めるための「工期変更の協議促進」や「監理技術者等の専任規制の合理化」は、現場で働く人たちの負担を軽くしながら、効率よく仕事を進める助けになるでしょう。ICT技術の活用も、これからの建設業界に欠かせないポイントです。

法改正への準備は、早めに始めることが大切です。契約内容の見直しや、従業員への新しいルールの周知、業務の効率化に向けた工夫など、今できることから一歩ずつ進めていきましょう。改正をしっかり活かすことで、建設業界がより働きやすく、魅力的な場所になることを目指していけます。

引用元:【2025年建設業法改正】標準労務費や資材価格高騰による変更契約の対応が急務!徹底解説

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