経営/マネジメント

鉄筋工事業経営者が語る!公共工事と民間工事の特徴や安全書類における違い

一般財団法人建設経済研究所・一般財団法人経済調査会経済調査研究所が発表した「建設経済モデルによる建設投資の見通し(2026年1月)」によると、2025年度の建設投資額は前年度比4.7%増、2026年度は同比5.7%増と予測されています。

その内訳を見ると政府分野投資、民間建設投資いずれも前年度比で増加予測となっており、公共工事・民間工事ともに投資額は堅調に推移する見込みです。

上記のように建設業は、国や地方自治体など公的機関が発注者となる公共工事と、個人や民間事業者などが発注者の民間工事に大別されますが、現場で働く建設業者にとってはそれぞれの違いをどのように感じているのでしょうか。

今回は、関西地方で鉄筋工事業を営む『なあ062』さんに、鉄筋工事業経営者の視点から公共工事と民間工事の違いなどについて語っていただきました。

【教えていただいたのは…】

なあ062さん
関西方面在住|30代夫婦で鉄筋工事業経営|2019年から技能実習生を受け入れ|本サイト連載コラム「建設会社会長!? 自称・鬼嫁?奮闘記」著者

弊社は公共工事および土木の現場が大半です!

弊社は鉄筋工事業なので、土木・建築どちらにも携わることがありますが、現在は土木工事を請け負うことが大半です。割合としては、

  • 土木(公共) 80%
  • 建築(公共) 10%
  • 建築(民間) 7%
  • 土木(民間) 3%

といった感じでしょうか。

いくつか要因はあるのですが、同じような内容の作業を経験したことがある従業員が社内にいると、やはりその工事に対する理解が進むので、そういったところから土木の割合が増えていきました。

また弊社の人数的にも、下請業者をあまり入れず社内の作業員だけで対応できることも多いため、その面でも仕事をいただける機会が増えているのかなと感じています。

公共工事と民間工事の現場における違い

一般的に公共工事は土木、民間工事は建築がメインかと思いますが、弊社としてさまざまな現場を経験していると、それぞれの特徴や違いを感じることもあります。

休日確保や退職金制度

たとえば休日。民間工事でも休みが増えてきてはいますが、公共工事の現場は近年、ほぼ週休2日制になっています。労働環境の面ではほかに、公共工事は建退共(建設業退職金共済制度)が充実している点もメリットだと思います。

【編集部注】
建退共(建設業退職金共済制度)とは

建退共とは、建設現場で働く方々の退職金を確保するために国が設けた退職金制度です。

同制度に加入する事業主が共済契約者、その事業主が雇用する労働者が被共済者となり、労働者が建設現場で働いた日数に応じて、事業主が掛金を納付します。労働者は在籍する会社を変えても掛金を通算でき、将来、建設業で働くことを辞める際に退職金として受け取ることができます。

公共工事では、建退共の掛金が予定価格の積算に含まれていることから、元請業者が下請業者の雇用する労働者分も掛金を負担するのが一般的です。一方、民間工事において、掛金の扱いは事業者ごとの判断に委ねられているため、元請業者が下請業者の掛金を負担することは少ないのが現状です。

安全書類の量や厳格さ

一方、民間工事では安全書類や付随書類の量が公共工事と比べて少なかったり、提出期間も長かったりするので、そうした事務的な手間が軽減される側面はあります。

公共工事は安全書類や入場事前審査の提出期限が厳しく、提出する書類の量も多いですが、国や自治体からすると、書類に不正等がないか、また受注者側がさまざまな項目についてきちんと誓約できるかなどを確認する必要があると思いますので、厳しくなるのも当然と感じています。

発注者によっては、提出した書類が証明書として認められるかどうかの基準が異なる場合もあります。

たとえば最近では、ある自治体発注の現場に入る際、技術者の配置に関して【主任技術者との恒常的な雇用関係を示す書類】の指定を受けました。

会社と労働者の雇用関係を証明する書類としては、健康保険証や技術者資格者証などいくつかありますが、そのうちの1つ『雇用保険被保険者資格取得等確認通知書』は「書類の有効期限が明記されていないため、悪用されるケースが多発した」とのことで、その自治体の工事では証明書類としてNGとされていました。

安全書類について思うこと

安全書類については、やはり現場で災害が起きた場合は対応に困ることもあるかと思いますので、民間工事でも公共工事と同レベルの書類の提出を求めていただいたほうが、弊社としてはありがたいと感じています。

厳しい現場とそうでない現場がどちらも存在すると、書類を作成する側も、それを確認する元請業者さんも混乱することがあると思いますし、そういう意味でも厳しいほうに合わせていくといいのではないでしょうか。

たとえば現状だと、健康保険証の新規発行が終了しましたが、代わりに【資格確認書】を提出書類としてOKにしている現場とNGな現場があり、これに関して「この書類を提出するのが正解」という基準がないため、統一していただけると助かるなぁと願っています。

また、弊社は適用除外承認を受け、建設国保と厚生年金に加入しています。この場合、【標準報酬決定通知書】に記載される金額は厚生年金のみとなり、健康保険については空欄になるんです。そのため、この書類だけでは社会保険の加入確認がしづらいという問題があります。

健康保険の資格確認として、建設国保組合から【組合員資格証】が発行されているので、従前の健康保険証に代わる【資格確認書】と合わせて2ページのPDFファイルを作成し、安全書類ソフトに登録することもあるのですが、システム上の仕様で1ページ目しか反映されないこともあって…

そうするように指示を受ければ従うしかないと思いつつ、何を求められているのかをもっと明確にしていただけるとありがたい、と感じることがあります。

どんな現場でも徹底した安全対策は欠かせません!

いずれにせよ、現場で事故や災害が起きないよう、従業員たちには常に安全面に意識して作業するよう伝えています。

鉄筋工事は、高所かつ足場しかない場所での作業になるため、少しの気の緩みでもケガの要因になることがあります。弊社は徹底して、

  • 高所では少しの移動でも安全帯を必ずかける
  • クレーンで作業する前は周囲に人がいないか必ず確認する
  • 重量のある材料や長尺物が多いため、扱うときは声かけしてから作業するよう徹底する
  • 特に外国人の従業員たちに対しては“伝わる言い方”を心がける
  • 炎天下での作業時は熱中症対策を徹底する

といったことを口酸っぱく言っているのですが、会社ではカバーしきれないこともあります。寝不足の子がいてもプライベートが関係してのことであればなかなか踏み込めないので、とりあえず気を付けるよう声かけすることしかできません。

会社としては、ファン付き作業服や冷感タオル、水分補給用飲料などを支給して、毎日確認しながらできる限りのサポートをしつつ、従業員たちを現場に送り出しています。

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著者:なあ062

著者:なあ062

関西方面在住。夫が社長を務める鉄筋工事業の会社を20代から一緒に経営。会社では事務・経理・顧問先との打ち合わせ等をこなし、料理や裁縫も得意。介護士の資格も持つ。「会社も家庭もほぼ権力を握ってます(笑)。口も達者な鬼嫁です」(本人談)

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