経営/マネジメント

大阪・関西万博が地元建設業者に与えた影響は?建設業経営者に聞きました!

「昨年末ごろから仕事が少なくなって、一時期は大変でした」

そう振り返るのは、関西地方で鉄筋工事業を営む『なあ062』さん。「大阪・関西万博」関連の工事が落ち着いてきた影響もあってか、関西の建設業界では2024年末ごろから2025年春ごろにかけて仕事量が少ない時期が続いたといいます。

閉幕まで残すところあとわずかとなった大阪・関西万博。開催自体に賛否が巻き起こり、何かとネガティブな話題やさまざまなトラブルが注目された一方、開幕後は多くの来場客が会場を訪れ、その盛況ぶりが各種メディアやSNSで取り上げられています。

そんな大阪・関西万博は、なあ062さんの会社にどのような影響をもたらしたのでしょうか。関西の地元建設業者にその“実態”を語っていただきました。

【教えていただいたのは…】

なあ062さん
関西方面在住|30代夫婦で鉄筋工事業経営|2019年から技能実習生を受け入れ|本サイト連載コラム「建設会社会長!? 自称・鬼嫁?奮闘記」著者

大阪・関西万博のアクセスルート整備や会場施設の建設に参加

大阪・関西万博関連として、弊社は会場アクセスルートの道路整備工事に携わったほか、会場内の施設整備にも応援で入りました。

道路整備のほうは、最初、ある工事の途中から1年ほど参加させてもらい、その後、続きの工事も約5年の工期で施工しました。支払い時期にズレが生じてしまったため、工事費を立て替えてからのスタートではありましたが、全体的に安定した工期で進みました。

万博開幕に向けて準備が本格化していく中、景気も徐々に良くなっていったような印象があります。

弊社ではこれまで新幹線や高速道路の工事などにも携わってきましたが、今回の大阪・関西万博関連も含め、こうした大型プロジェクトに参加することは、従業員のやりがいにもつながっていると感じています。

大型プロジェクトは従業員のやりがいと成長を実感する機会

大型プロジェクトになれば、工期の兼ね合いがあったり、進捗状況の報告業務が増えたり、しんどい時期も正直あります。ですが、従業員の子たちはそれ以上にやりがいを感じてくれていて、続きの工事や同種の案件があれば出張であっても進んで行ってくれます。

同種の案件だと作業内容が基本的に共通しているので、新人が仕事を覚えるのにも向いているんです。例えば高速道路の施工を経験した後、別の案件でまた高速道路の現場に入ると、前の現場で覚えたことが生かせたり、再認識できたりするため、「成長した姿が見られる」と社長(夫)が言っていました。

また、従業員の子たちも「出張先の現場で得られた知識や、技術が向上したところを社長、私、先輩たちに見てもらえるのが楽しみ」と話してくれています。

関西では高速道路の整備が進んできていますし、今年4月から神戸空港に国際線が就航したこともあって、これからよりインフラが整備されていくのかなと思っています。

弊社としては今後も、大型案件にはぜひ携わっていきたいと考えています。

関西建設業界に異変!? 2024年末ごろから仕事が激減!

じつは、大阪・関西万博の開幕が近づいてきた2024年の年末ごろから、関西地方全体では土木・建築ともに仕事が激減したんです。はっきりとした原因はわかりませんが、いろんな理由が重なり、そんな状態が年明けの春ごろまで続いていました。

特に一人親方さんだと、1カ月に5日くらいしか仕事に出られない日々が数カ月続いたり、どうにもめどが立たないときは専門外の職種のお手伝いに行ったりしている、といった話も耳にしました。

仕事があれば、同業者が1つの現場にあふれ返るほど集まってしまうので、人数が多くいる分、工期よりも早く終わってしまう、という現場もあったようです。

弊社は法人で、人数も10人以上で動ける状態だったため、現場の確保には比較的困らなかったほうかもしれません。それでも、例えば仕事の内容や進み具合などで「明日は10人中、8人しか現場に入れられない」と言われることもあって…。

そういう場合は既婚者の子を優先して選んだり、また年少者が入るときは指導役となる熟練の従業員にセットで動いてもらわなければいけなかったり、そうした人員選出の面でも苦労しました。

会社として従業員の生活を守らないといけないので、私たちも「鉄筋工事以外の仕事も探そうかな」と考えましたが、何とか回避して乗り切ることができ、いまはようやく回復しているような状態です。

建設業の良いところが注目されることは誇りに思います!

今回の大阪・関西万博では、建設業に関するポジティブな面もネガティブな面もさまざまな話題がニュースなどで取り上げられましたね。

例えばポジティブな話題だと、日本の伝統工法をベースにつくられた「大屋根リング」などの建設技術の高さ。ネガティブなほうは、会場内の施設整備の遅れなどです。

建設業がポジティブに注目されて取り上げられるのは、やはりいろんな人から評価されたり褒めてもらえたりすると人間は伸びるものだと思っているので、率直に誇りに思います!

一方、ネガティブな話題に関してですが、建設業は人手不足や世間的にも高齢化が進んでいること、また働き方改革の影響もあって、工事が思うように進まないときもありますよね。工程はあくまで予定でしかないですし、日常生活でも同じですが、何でも思うように進むほうがレアだと私は考えていて。

という感じで、私も社長も物事をネガティブに捉えることはあまりしないんです(笑)

ちなみに働き方改革でいうと、最近はやはり週休2日の現場が増えましたね。特に弊社は公共工事に関わることが多いので、土日はほぼお休みの状態です。

まだまだ暑い日が続きますが、皆さまくれぐれも無理のないよう、安全にお仕事してください。今回もありがとうございました。

著者:なあ062

著者:なあ062

関西方面在住。夫が社長を務める鉄筋工事業の会社を20代から一緒に経営。会社では事務・経理・顧問先との打ち合わせ等をこなし、料理や裁縫も得意。介護士の資格も持つ。「会社も家庭もほぼ権力を握ってます(笑)。口も達者な鬼嫁です」(本人談)

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