改正建設業法が2025年12月に全面施行!業界全体の転換点となる大改正、違反した場合のペナルティは?

【この記事の監修者は…】
宮城彩奈さん(行政書士)
あやなみ行政書士事務所代表|株式会社colore代表取締役|建設業者の経営全般をサポート|YouTubeチャンネル登録者1.7万人
改正建設業法が2025年12月12日から全面施行されました。2024年6月の国会で成立した後、同年9月・12月と段階的に施行されましたが、2025年12月施行をもってすべての規定が適用され、建設業界は大きな転換点を迎えています。
今回は、改正法における3本柱と、2025年12月施行分の規定をわかりやすく解説します。実務への影響や違反時のペナルティ、企業ごとの対応策、注目の「労務費に関する基準(標準労務費)」まで詳しく紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
建設業法改正の背景

今回の建設業法改正に至った背景には、建設業界が「長時間労働」「人手不足」「従事者の高齢化」といった深刻な課題に直面している現状があります。建設業は社会インフラを支える重要な存在であり、将来にわたって就業者を確保していくことは喫緊の課題です。
こうした状況を踏まえ、以下の2つの改正法で構成される「第三次担い手3法」が、2024年に成立しました。
- 公共工事品質確保法(品確法)等の改正
- 建設業法・公共工事入札契約適正化法(入契法)の改正
本記事では上記のうち、建設業法の改正に焦点を当てて解説していきます。
改正建設業法の3本柱
改正建設業法では、3つの柱に紐づく複数の規定が適用されました。
| 3本の柱 | 規定 | 施行日 |
| 1.労働者の処遇改善 | ・中央建設業審議会が「労務費に関する基準」を作成・勧告 | 2024年9月1日 |
| ・労働者の処遇を確保する努力義務 | 2024年12月13日 | |
| ・著しく低い労務費等の見積もりを禁止 ・原価割れ契約の禁止を受注者にも導入 |
2025年12月12日 | |
| 2.資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止 | ・資材高騰の「おそれ情報」を受注者から注文者へ通知する義務 ・資材高騰に伴い請負代金額を変更する際の「算定方法」を契約書記載事項に追加 ・資材高騰に伴い受注者から注文者へ契約変更協議の申し入れができることを明確化 ・変更協議に対して注文者が誠実に応じる努力義務 |
2024年12月13日 |
| 3.働き方改革と生産性向上 | ・情報通信技術を活用した生産性向上 | 2024年12月13日 |
| ・長時間労働の抑制 | 2025年12月12日 |
次の項目からは、それぞれの柱の内容と2025年12月施行分の規定を見ていきましょう。
1.労働者の処遇改善
1本目の柱である「労働者の処遇改善」では、賃金を引き上げるための規定が定められています。
賃金の原資となる労務費の算定方法は、これまで明確なガイドラインがありませんでした。そこで2024年9月の改正で、中央建設業審議会(中建審)が「労務費に関する基準」を作成し、その実施を勧告できる規定が追加されました。
【労務費に関する基準(標準労務費)とは】
労務費に関する基準(標準労務費)とは、建設業の技能労働者に適正な賃金が支払われるよう、その工事を行うために通常必要とされる労務費の“相場観”を示した基準額のこと。
《労務単価(公共工事設計労務単価)×歩掛(国交省直轄)》
上記により算出した「単位施工量あたり」(トンあたり、平米あたり等)の金額で表し、職種分野別および都道府県ごとに設定します。
この基準は2025年12月2日に勧告され、一部の職種で運用を開始しています。同年12月12日には、著しく低い労務費等の見積もりを禁止する規定が施行されましたが、その参考指標となるのがこの「労務費に関する基準」です。これにより、注文者と元請、元請と下請、下請同士のすべての契約で適正な労務費の水準が担保され、技能労働者の賃金として行き渡る仕組みが始まりました。
なお、2024年12月には、知識や技能の評価に応じて適正な賃金を支払えるような措置を講じるよう、建設業者に努力義務が課されています。
国土交通省は建設業者の取り組み状況を調査・公表するとともに、中央建設業審議会へ報告することで、今後も施策の見直しを継続していく計画です。PDCAサイクルを回すことにより、処遇改善の実効性を高めていく狙いがあります。
【2025年12月施行】著しく低い労務費等の見積もりを禁止
前述のとおり、2025年12月には見積もりのルールが大きく見直され、著しく低い材料費や労務費等の見積もりが禁じられました。背景にあるのが、資材高騰によって上昇したコストを請負代金額に反映できず、結果として労務費が削られてしまうという構造的な問題です。
この問題を解決するために、今回の改正で、受注者は材料費・労務費・国土交通省令で定める必要経費が記載された見積書を作るよう努めなければならないとし、労務費へのしわ寄せを防ぐ対策を強化しました。
本規定は公共工事・民間工事問わず、注文者と元請、元請と下請、下請同士のすべての見積もりで適用されます。
また、本規定に違反した場合は、注文者だけでなく、受注者である建設業者もペナルティがある点に注意が必要です。著しく低い労務費等による見積もりを提出した場合、国土交通大臣等から指導・監督を受けます。
建設業界では従来、材料費と労務費をまとめて「材工一式」で見積もる職種も多く、内訳を明示した見積書は商習慣として根付いていない面もありますが、国土交通省は「内訳を把握することは自社の経営上の観点でも重要である」ことも踏まえ、中長期的に内訳明示の見積書が一般的になる、新たな商習慣の確立を図りたいとしています。
【2025年12月施行】原価割れ契約の禁止を受注者にも導入
原価に満たない金額での請負契約を結ぶことが、受注者側にも禁止されました。このような契約を結んだ場合、受注者は国土交通大臣等から指導・監督処分を受けます。
改正前、原価割れ契約の禁止は注文者だけが対象でしたが、受注者にも適用範囲を広げることで、ルールをさらに強化したかたちです。
2.資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止
2本目の柱である「資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止」では、適正な価格転嫁を後押しする規定が定められています。
近年は資材価格の高騰が続いていますが、そのリスク負担が受注者に偏るケースが多くありました。こうした状況では価格転嫁が適切に行われず、労務費を圧迫してしまうことが懸念されます。
そこで、コスト上昇分を請負代金に転嫁しやすくするために、ルールを明確化しました。規定は契約前と契約後の2種類に分類できます。
| 契約前 | ・資材高騰の「おそれ情報」(後述)を受注者から注文者へ通知する義務 ・資材高騰に伴い請負代金額を変更する際の「算定方法」を契約書記載事項に追加 |
| 契約後 | ・資材高騰に伴い受注者から注文者へ契約変更協議の申し入れができることを明確化 ・変更協議に対して注文者が誠実に応じる努力義務 |
これにより、受注者が価格変更協議を相談しやすくなり、適正な価格転嫁が促されます。
3.働き方改革と生産性向上
3本目の柱である「働き方改革と生産性向上」では、長時間労働を改善するための規制が定められています。
建設業では他の産業よりも就業時間が長く、長時間労働が常態化している傾向にありました。しかし2024年4月から建設業にも「時間外労働の上限規制」が適用されたことを受けて、長時間労働を是正する規定が盛り込まれています。
たとえば2024年12月には、ICT活用等を前提として、現場技術者の専任義務や施工体制台帳の提出義務が緩和されました。さらに国が現場管理のICT活用指針を作成し、特定建設業者や公共工事受注者は効率的な現場管理を行う努力義務が課されています。
【2025年12月施行】長時間労働の抑制
長時間労働の一因となっていた工期ダンピングが、受注者に対しても禁じられました。工期ダンピングとは、通常必要な期間よりも著しく短い工期による契約を結ぶことです。
これまでは注文者による工期ダンピングのみが禁止されていましたが、今回受注者にも適用範囲を拡大しました。その結果、注文者から不当に短い工期を提示された場合でも、受注者側から工期の見直しを提案しやすくなります。
適正な工期かどうかの判断に役立つのが、中央建設業審議会が作成・勧告した「工期に関する基準」です。この基準は2020年7月に作成・勧告されましたが、その後、建設業への罰則付き時間外労働規制の適用開始を踏まえ、2024年3月に見直しが行われました。
改正建設業法による建設業への影響

今回の改正によって、建設業で働く人々の処遇改善が期待されます。
一方で、建設業者は契約金額や工期を提示する際、その算定根拠を明確に示すことが求められるようになりました。さらに、従来は注文者だけが対象だった禁止規定が受注者にも適用されることで、違反すれば建設業者が処分を受ける可能性もあります。
ここからは改正建設業法による建設業への影響を、価格・工期・生産性の3つの側面から見ていきましょう。
価格への影響
改正建設業法では、著しく低い労務費や原価割れ契約が禁止され、資材が高騰した際の契約変更協議が行いやすくなりました。これは労務費へのしわ寄せを防ぎ、働く人々に適正な賃金が行き渡るようにするための措置です。
その代わり、建設業者には見積もりの根拠が求められます。見積書を提出する際は、材料費や労務費等の内訳を記載する努力義務が課されたためです。労務費の算定にあたっては、中央建設業審議会が作成・勧告している「労務費の基準」を参照しながら、個々の条件を踏まえて補正する必要があります。
なお、技能者へ適正な賃金を支払うために労務費等を確保する事業者が、価格競争上で不利になることがないよう、関連施策として「建設技能者を大切にする企業の自主宣言」制度も創設されています。技能者を大切にして処遇改善に積極的に取り組むことを自主宣言した事業者は、同制度のシンボルマークを使用することができるほか、2026年7月からは経営事項審査の加点対象にもなる予定です。
工期への影響
工期ダンピングが受注者にも禁止され、無理な工期による長時間労働は抑制されます。
一方で、請負契約の締結にあたっては、明確な根拠に基づく工期見積もりが必要です。工程ごとの作業と準備に必要な日数を明らかにした上で、中央建設業審議会が作成・勧告した「工期の基準」を考慮しながら作成することが求められます。
生産性への影響
働き方改革と生産性向上の推進により、限られた人員でも業務に対応しやすくなることが期待できます。
また、一部の業務がICT活用を前提に簡略化されるのに加え、効率的な現場管理の努力義務が課されました。この影響で、書類のデジタル化や、遠隔管理システム・勤怠管理ツールといったICTツールの導入が広がっていくことが予想されます。
ペナルティと対応策

改正法に対応しない場合、受注者は国土交通大臣等から指導監督処分を受けます。具体的な処分内容については、以下のとおりです。
- 指導
- 勧告
- 勧告内容の公表
- 業務改善命令
- 営業停止処分
- 許可取消処分
悪質な違反をした場合は、営業停止や許可取消といった厳しい処分を受けることもあり、建設業者には大きな責任が伴います。
その他、行政処分ではありませんが、次のような経営上の不利益につながることも考えられるでしょう。
- 経審評点への影響
- 公表による信用低下
- 元請からの取引停止
- 株主・監査対応リスク(上場企業の場合)
こうしたペナルティや不利益を避けるためには、従来の業務のあり方を見直し、社内コンプライアンスを徹底していくことが不可欠です。たとえば契約・見積もりの場面では、以下のような対策を行い、金額や工期の根拠をはっきりと示す必要があります。
- 見積書のフォーマットに材料費や労務費の項目を入れる
- 契約書への価格変更条項の明記・修正を行う
その上で、金額や工期が適切な水準でない場合には、再交渉を行う姿勢が求められます。また、社内研修を実施し、全ての関係者に法改正の内容を周知することも重要な対応策です。
まとめ

今回の法改正は、建設業を持続可能な産業として成長させ、将来につないでいくために実施されたものです。
長年続いてきた業界の課題を解消し、担い手にとって最適な環境を整える、大きな転換点といえます。その影響は契約・見積もりのあり方や現場管理といった業務の根幹にまで及ぶため、建設業界の商習慣は大きく変化していくことになるでしょう。
よくある質問

労務費の基準(標準労務費)はどこで確認できますか?
中央建設業審議会が作成・勧告した労務費の基準(標準労務費)は、「労務費に関する基準ポータルサイト」にて確認できます。ただし、ポータルサイトで示している基準値は、あくまで標準的な作業内容・施工条件が前提となっている点に注意が必要です。実際の労務費計算にあたっては、前提の違いを踏まえ適切に補正することが求められます。
おそれ情報とはどういう情報のことですか?
おそれ情報とは、工期や請負代金に影響をおよぼす可能性があるリスクの情報を指します。たとえば資材価格の高騰や機材の供給不足・供給遅延は、おそれ情報の対象です。改正建設業法では、受注者は契約前に注文者へおそれ情報を通知する義務があります。
監修者:宮城彩奈(行政書士)
監修者:宮城彩奈(行政書士)







