現場ノウハウ

注目の「建設DX」「防災」関連技術をレポート《メンテナンス・レジリエンス TOKYO 2025》

2025年7月23日(水)~25日(金)の3日間、「メンテナンス・レジリエンス TOKYO 2025」が東京都江東区の東京ビッグサイトで開催されました。

このイベントは、“製造業”・“土木・建設業”のメンテナンスと設備の維持管理・保全に特化した専門展示会で、会場には3日間で合計3万2,392人(主催者発表)が来場しました。

弊編集部は昨年に引き続き、今年も現地で当日の様子や注目の出展ブースを取材してきました!(取材日:2025年7月24日)

メンテナンス・レジリエンス TOKYO 2025

「メンテナンス・レジリエンス」は、一般社団法人日本能率協会が主催する建設業・製造業向けの大型展示会で、複数の専門展示会を同時開催するイベントの総称です。

2025年は構成展示会の一部が再編・統合され、新たに「土木・建設DX/システム/ツール展」と「建設防災・資材展」の2つが第1回として開催されました。

そこで、弊編集部は今回、記念すべき第1回となったこの2つの展示会を取材。編集部が注目したブースを各展示会から4つずつ、計8つの企業・団体をピックアップしてご紹介します!

土木・建設DX/システム/ツール展

「土木・建設DX/システム/ツール展」は、昨年まで4つに分かれていた展示会を1つに統合。デジタル技術を用いた安全管理や生産性向上のためのさまざまなシステムやツールが集結しました。

株式会社ビーイング(津市)

最初にご紹介するのは、土木工事積算システム『Gaia』シリーズで知られる株式会社ビーイングのブースです。

クラウド型積算システム『Gaia Cloud』なども展示する中、「今回、特にメインで案内しているのは『INSHARE』というシステムです」と話すのは同社担当者。

INSHAREとは、建設現場におけるマネジメントやコミュニケーションを効率化するシステムで、工程表やスケジュールなど現場運営に必要な各種情報がクラウド上で共有できるほか、ファイル保存機能、チャット機能なども搭載されています。


展示会場ではパソコンの画面を使ってINSHAREの機能などを紹介していました

パソコンだけでなくスマートフォンやタブレット端末からもアクセスできるため、会社や事務所に戻らなくても、工事に関するさまざまな情報を確認することが可能になります。

ビーイングの担当者は「昔から“段取り八分(仕事二分)”と言いますが、INSHAREで工程管理や人員配置などを効率化し、現場代理人の方々の生産性向上に貢献できれば」と話していました。

SORABITO株式会社(東京都中央区)

建設業界向けのDXサービスを提供するSORABITO株式会社は、建設現場の安全点検を効率化するツール『GENBAx点検』をPR。

事故や災害などを未然に防ぐため、建設機械・設備・足場などの状態を日常的に確認する安全点検は、従来、紙の点検表を用いて行われてきました。これをペーパーレス化し、スマホできるようにしたのがGANBAx点検です。

各点検対象物に二次元コードを設置しておき、点検者はスマホでその二次元コードを読み取って点検結果を登録する仕組み。データはクラウド上で共有されるため、別の場所にあるパソコンなどでもリアルタイムに点検状況を確認することができます。


来場者にGENBAx点検の説明をするSORABITOのスタッフ(左)

SORABITOは、もともと建機レンタル会社のDX化を推進するシステムなどを主力サービスとして展開してきましたが、2024年にリリースしたGENBAx点検では建設現場全体へ対象を拡大。

同社の担当者は「展示会でのリアルなコミュニケーションを通じてこのサービスの認知拡大、リード獲得を図りたい」と話しました。

株式会社Forgers(東京都港区)

「7月にリリースしたばかりの新サービスを周知したい」と出展目的を話すのは、株式会社Forgersの今泉滉平社長。同社は3D・XR技術に特化したスタートアップ企業で、7月にリリースした新サービスとは『RITTAI SCAN』という3Dスキャンアプリです。

同アプリを搭載したiPad ProまたはiPhone Pro端末を“動画を撮影する”ように空間にかざすだけで、手軽に高精度な3Dスキャンデータが作れるというもの。位置情報ゲーム・ポケモンGOの開発で知られる米・Niantic社からスピンオフしたNiantic Spatial社との提携により開発しました。


RITTAI SCANや3Dデータの活用方法を紹介するパソコンとタブレット端末

RITTAI SCANで作成した3Dデータは、データ上で計測・測量も可能。工事現場における現地調査、現地状況の共有、さらには同社の既存サービスと連携し、配置シミュレーションや3Dマニュアルの作成などにも活用できるといいます。

今泉社長は「土木でも建築でも利用でき、またインフラや設備の保守・メンテナンスの効率化にもつながる」と新サービスの魅力を力強く語っていました。

清水建設株式会社(東京都中央区)

「土木・建設DX/システム/ツール展」には大手ゼネコンの清水建設株式会社のブースも。同社宇宙開発部と東京海洋大学の共同開発による独自技術を用いたGNSS動態観測システム『QuartetS(カルテットエス)』を紹介していました。

人工衛星を利用して位置測定を行うGNSSですが、従来は観測対象物の周囲に障害物があると測位精度が低下してしまうことが課題の1つでした。清水建設と東京海洋大学が開発した独自技術は、障害物がある環境下でも高精度に計測できる点が特長です。

盛土法面・切土法面、鉄塔基礎などの変位を計測し、崩落や傾きの兆候把握に用いられるほか、能登半島地震の災害復旧現場では、地すべりの監視など安全管理にも活用されたといいます。


会場に展示されていたGNSS受信機

同社担当者は「『ぜひ使ってみたい』という声もいただいた」と出展の手ごたえを語りました。

6月には建機レンタル業の株式会社レンタルのニッケン(東京都港区)と共同で、同技術を採用した観測システム『GeoLoc(ジオロック)』のレンタルサービスも開始しています。

建設防災・資材展

「建設防災・資材展」は、建設資材や防災・減災関連の製品などが集まる展示会です。

昨年までの2つの展示会が統合され、足場や資材から工法の紹介まで幅広い出展内容のブースが並び、多くの来場者が足を止めていました。

昭和機械商事株式会社(大阪市)

石が詰められた大きなかごが目を引くこちらは、昭和機械商事株式会社のブースです。同社担当者も「『インパクトがある』と声をかけられる」と話します。

これは『かご丸くん』という大型円筒金網で、石を詰めたものを並べてチェーンで緊縛し、土留工、山留工、谷止工、護岸工などに使用します。山間地斜面や河川護岸の災害復旧を目的に、京都大学と共同で開発しました。

円筒形のためクレーンで吊り上げても型崩れせず、石の中詰めもバックホウでできることから、「現場で人の手を使わず、機械で安全・簡単に作業ができる」(同社担当者)ことが特長。同社の技術顧問で共同開発者の木村亮・京都大学名誉教授は“プレキャストかご工”と表現しているそうです。

チェーン製品を基盤とする同社の強みを生かしたこの工法。中詰め材に割栗石を使用する従来品に加え、より小さい石材でも対応できるようかごの網目を細かくした『かご丸くん 砕石型』もあります。

株式会社新井組(兵庫県西宮市)

総合建設業の株式会社新井組は、建築系を中心に同社のさまざまな技術・工法やサービスを展示。担当者によると、中でも『テクセル床工法』と『狭小空間調査サービス』の2つが今回のメインだといいます。

テクセル床工法は体育館や屋内スポーツ施設などの床に用いられ、床下地コンクリートと表層仕上げ材の間に、「TECCELL(テクセル)」という特殊な樹脂製ハニカムコア材と弾力層を挟み込む直床形式の工法です。

音や振動を低減しながらも、ボールの反発は落とさず、膝への負担も軽減するといった特長があり、バスケットボール・Bリーグのチームの練習場にも採用されました。断熱性にも優れていることから、災害時の避難所となる学校体育館への普及を図っていきたいといいます。


新井組のブースで行われていた小型ドローンの実演

もう1つの狭小空間調査サービスは、小型ドローンなどを用いて、天井裏、下水道やカルバートの内部など、人が入れないような狭小空間の調査・点検を行うサービスです。同社の担当者は「総合請負だけではない、さまざまなサービスを展開している自社の強みを知ってもらいたい」と話していました。

アストン協会(岡山市)


展示会場には俳優・三宅エリナさんがアストンアンバサダーとして応援に

アストン協会は、株式会社アストン(岡山市)が製造・販売するコンクリート改質剤『CS-21』シリーズ製品の特約店・特約施工店で構成される協会です。

CS-21シリーズとは、けい酸塩系の液体材料で、コンクリート表面に塗布することで、コンクリート中のカルシウム成分などと反応物(CSH結晶)を生成し、微細なひび割れなどの空隙を充填。表層部を緻密化し、水などの侵入を長期にわたり抑制するため、コンクリート構造物の長寿命化を実現します。


実演も交えてCS-21シリーズをPR

土木・建築どちらでも使用でき、既設構造物においては補修や長寿命化対策、新設構造物では品質・耐久性の向上や予防保全対策に使われています。東北新幹線・北陸新幹線の新設PC橋梁における床版防水で活用されたほか、JR西日本の補修材としても認定されているそうです。

同協会の担当者は「橋梁の定期点検が義務化されているが、地方自治体などでは維持・補修が追い付かないこともあると聞く。この工法は橋梁の維持管理、延命化・長寿命化の需要にも対応できる」と呼びかけていました。

レジェンドパイプ工法協会(浜松市)

こちらはレジェンドパイプ工法協会のブースで行われていた、模型を使った液状化実験の様子。容器の中の砂を地盤に見立て、左右で水の量(地下水位)を変えています。ここに振動を与えると、地下水位が高い左の模型は表面に水が浮いてきている(液状化)のに対し、水位が低い右側は液状化が起こっていません。

「レジェンドパイプ工法は、地下水位を低下させることで地震による液状化現象を抑える工法です」と話すのは、同協会の鈴木章弘事務局長。集水能力のあるポリプロピレン製のパイプを推進工法で地中の深い位置に埋設。パイプが地下水を集水することで、地下水位を低下させる仕組みです。

従来の推進工法は、発進立坑からスタートし到達立坑で掘進機を回収しますが、この工法で使用する掘進機にはリターン機能があり、発進立坑まで引き戻すことができるため到達立坑が必要ないというのも特長の1つ。

液状化被害があった北海道胆振東部地震や熊本地震の被災地では、再び液状化しないようこの工法が復興の際に活用されたといい、鈴木事務局長は「液状化対策は官民一体で面的に実施する必要がある。被災経験のない地域でも、予防保全として関心を持ってほしい」と話しました。

おわりに

建設業界は、担い手不足や資材価格・人件費の高騰といった多くの課題に直面しており、現場の生産性向上、働き方改革、従事者の処遇改善などが一層求められています。

一方で、インフラ老朽化対策や防災・減災対策、災害復旧などの社会課題に取り組むうえで、建設業の果たす役割は欠かせません。

そうした背景から、今年の「メンテナンス・レジリエンス TOKYO」では、それぞれ第1回となった「土木・建設DX/システム/ツール展」と「建設防災・資材展」に焦点を当て、数ある出展者の中から8つの企業・団体をご紹介しました。

建設業界を、そして社会をより良くするさまざまな“技術”に今後も注目です。

(建設データ編集部)

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