インフラ維持管理等の最新技術が集結!「メンテナンス・レジリエンス TOKYO 2024」取材レポート
製造業・建設業における維持管理や保全技術の専門展示会イベント「メンテナンス・レジリエンス TOKYO 2024」が7月24日(水)~26日(金)の3日間、東京都江東区の東京ビッグサイトで開催されました。
複数の展示会を同時開催するこのイベント。弊編集部は最終日の7月26日に会場へお邪魔し、構成展示会のうち「第18回 インフラ検査・維持管理展」を取材してきました。この記事では、会場の様子や編集部が注目した展示内容についてレポートしたいと思います!
メンテナンス・レジリエンス TOKYO 2024 とは?
「メンテナンス・レジリエンス」は、製造業・建設業の生産性向上、持続可能な社会資本整備、レジリエンス向上を目指し、複数の専門展示会を同時開催する毎年恒例の大型イベント。
2024年は7月24日(水)~26日(金)の3日間で行われ、会場には計45,817人(主催者発表)が来場しました。
12の専門展示会と3つの特別企画で構成され、生産設備から社会インフラ、各種災害対策まで、「メンテナンス」「レジリエンス」に関する最新の製品・技術・サービスが集結。各出展企業・団体のブースのほか、講演会やセミナーなどもあり、多くの人が商談や情報交換をしていました。
インフラ検査・維持管理展
メンテナンス・レジリエンス TOKYO 2024を構成する展示会のうち、今回編集部が取材した「インフラ検査・維持管理展」は、インフラの検査および維持管理に特化した技術・サービスを発信するB to B 専門展示会です。
日本では道路や橋、上下水道など多くのインフラが高度成長期(1960年代)に整備され、50年以上が経過した現在、その老朽化対策が社会課題の1つとなっています。また建築物も同様に老朽化が進んでいるものが多く存在します。
近年、施設・設備の劣化に起因する事故もたびたび発生しており、土木構造物や建築物などを効率的かつ正確にメンテナンスする技術は、これからますます重要になるでしょう。
ということで、ここからはインフラ検査・維持管理展に出展されたブースの中から、編集部が注目した7つの展示をご紹介します!
編集部注目の企業ブース
ジオ・サーチ株式会社(東京都大田区)
インフラ調査会社のジオ・サーチ株式会社は、同社の「スケルカ」技術を中心に紹介。スケルカ技術は、マイクロ波を活用した独自センサーで地下や橋梁床版内など目に見えないところを可視化、3D解析できる技術で、このセンサーを搭載した探査車で道路上を走ることで、路面下のさまざまなデータを取得できるといいます。
インフラの劣化による事故を未然に防ぐため、路面下の空洞調査や舗装・橋梁床版内の劣化調査などに使われるほか、地下埋設管の状況把握にも活用。また、道路陥没事故や漏水事故が発生した際には、現地の緊急調査を依頼され出動することもあるそうです。
同社の担当者は「この技術が、そうした社会貢献に活用されていることも知ってほしい」と話していました。
会場ブースには手押し式の探査機「スケルカート」が展示されていました
ヨシモトエンジニアリング株式会社(東京都千代田区)
屋外用ポール構造物の開発、施工から点検、維持補修などを手がけるヨシモトエンジニアリング株式会社のブースでは、柱の「長寿命化ソリューション」を展示していました。
電柱、信号機、標識、照明、防球ネットの支柱など、屋外にはさまざまな柱状の構造物があります。これらも劣化・老朽化は進んでいきますが、一度に大量に更新していけるものではありません。「そこで、まず劣化度を調査して更新の優先順位を付け、後に回したものは更新までのつなぎとして補修・補強する。そんな技術をご提案していきたいと思っています」(同社担当者)
CFRTPシートのサンプルと柱に巻き付けた施工例
補修・補強工法として紹介されていた1つが「YCK工法」。柱の劣化部に熱可塑性炭素繊維「CFRTPシート」を巻き付けることで、腐食の進行を阻止し、約10年相当もの延命効果を発揮するといいます。
こちらはボルト・ナットのゆるみや錆を防ぐシリコンテープ「YEロックシール」を巻き付ける実演の様子。来場者からの注目度が高く、デモ用で用意したテープがどんどん減っていったそうです。
株式会社アイゾールテクニカ(京都市)
塗料メーカーの株式会社アイゾールテクニカは、主力商品であるコンクリート用防水材「アイゾールEX」や、コンクリート剥落防止工法「BMシート工法」などをPR。同社の担当者は「会社の知名度をもっと向上させたい」と出展のねらいを話してくれました。
アイゾールEXはコンクリートの劣化を抑制する高分子系浸透性防水材。有機溶剤を使用していない水性塗料で、人や環境に配慮した安全性の高さが特長の1つです。
このアイゾールEXを塗布した上に、特殊鉱物繊維「BMシート」を貼り付け、コンクリートの剥落を防止するのがBMシート工法。BMシートは玄武岩を特殊加工した鉱物由来の無機繊維で、紫外線劣化が起こらず、長期的に高い剥落防止効果が維持できるといいます。トンネルや橋梁の補修工事で実績のある工法です。
玄武岩を特殊加工してつくられたというBMシートのサンプル
トーヨーコーケン株式会社(東京都江東区)
ひと際、来場者の注目を集めていたのがトーヨーコーケン株式会社のブース。昇降アシスト装置の実演デモに多くの人が足を止めていました。
デモを行っていたのは、斜面の歩行をアシストする「法面ウォーカー」と、はしご用アシスト装置「昇降力」。
中でも昇降力は7月に一般販売を開始したばかりの新製品だそうです。作業者の昇り降りの荷重変化を検知して、自動的にホイスト(巻き上げ機)が昇降をアシスト。鉄塔の点検や施工など、繰り返しの昇り降りや工具の上げ下げが負担となる現場で活躍してくれます。
この新製品のPRにあたり「動画での紹介ではなく、実際に使っているところを見てもらったほうが魅力が伝わる」(同社担当者)との思いからデモを行うことにしたといいますが、実際に反響はとても大きかったそうで、担当者は「1000枚用意していたチラシがなくなってしまったので追加してきました」と話していました。
株式会社空撮技研(香川県観音寺市)
この写真で伝わるでしょうか…
じつはこれ、真ん中の軸だけで自立しているんです!
こちらは、ドローンによる空撮や関連製品の開発などを行う株式会社空撮技研の「たおれん棒」という製品です。
ドローンの技術を応用して開発された風力式自立棒で、上部に付いているプロペラで風をコントロールして自立する仕組みだといいます。10mを超える高さのものもあり、先端にカメラを取り付ければ高所の設備点検に活用できます。航空法上または安全上の理由でドローンが飛ばせない場所における代替策として考案、開発され、これまでに出来なかった高所作業を可能にしました。
同社のブースには、たおれん棒の実演に多くの来場者が集まっていました。同社担当者は「この展示会に出展するのは昨年に続き2回目ですが、『これを見に来た』と言っていただける方もいました。これを機に導入を広げていきたいです」と笑顔で話しました。
株式会社ジャスト(横浜市)
「他にない『構造物の総合病院』」というキャッチフレーズのブースを構えていたのは株式会社ジャスト。あらゆる建築・土木構造物の調査・点検などを手がける同社の多様な技術が展示されていました。
特に注目は計測機器メーカーの株式会社小野測器(横浜市)と共同で開発中という「携帯型異常検知システム」。外壁の打診調査などの際、検査対象を叩いた音を専用マイクで集音し、音の解析からタイルの浮きなどの異常を検出するシステムです。検査者による個人差をなくし、正確な判断をサポートすることを目的に開発が進められています。
会場に展示されていた異常検知システムのサンプル
ブースには小野測器の担当者も同席し、来場者に同システムについて解説していました。小野測器の担当者は「建設業界は人手不足や高齢化が課題。だからこそ、点検技術も定量化し、作業者の負担を軽減していくことが必要」と力強く語ってくれました。
株式会社計測技術サービス(東京都文京区)
最後にご紹介するのは株式会社計測技術サービスのブースです。
コンクリート構造物の非破壊検査機器などを開発・販売する同社。製品の紹介や実演デモなどが注目を集めましたが、同社が多くの人にPRしていたのが「インフラーキテクチュア」という概念。
インフラーキテクチュアとは、建築物や土木構造物を対象とした新しい検査方法の分野を指す造語です。建築・土木という枠組みではなく、それぞれの知見や技術を集約することで、検査業界の技術発展を推進したい、という考えから同社が提唱、土木(インフラストラクチャー)と建築(アーキテクチュア)を組み合わせて名付けました。
計測技術サービスの清良平社長は「このインフラーキテクチュアという言葉を浸透させたい。今回、多くの人にブースに足を運んでもらって、費用対効果は十分にあった」と手応えを語っていました。
自走式非破壊検査ロボット「SPIRADER」の実演には多くの人が集まっていました
おわりに
今回、同展示会を取材し、インフラ検査や維持管理におけるたくさんの最新技術を知ることができました。この記事で紹介したのは、その中のごくごく一部にすぎません。
私たち編集部はこれからも、より良い社会の実現のために日々進化を続ける建設業の姿を取材し、少しでも多くの読者に届けていきたいと思います。
最後までご覧いただき、ありがとうございました!
(建設データブログ編集部)