グルメ司法書士・梅先生のチョコっと舌鼓と司法相談アルアル【第6回】

司法書士コラム

グルメ司法書士・梅先生の
チョコっと舌鼓と司法相談アルアル





司法書士、梅本先生による連載第2弾。
東京都内のランチが美味しいお店を紹介しながら身近な司法書士への相談アルアルを会話形式でやさしく解説していただきます。

今日のランチの舞台は「アンコウ」専門の名店、 「神田 いせ源」
創業は天保元年(1830年)、京橋三丁目付近で初代立川庄蔵が始めたそうです。2代目立川源四郎が店を神田連雀町に移して、店名も「いせ源」に改名したとのこと。
いつも最後は夢心地の梅先生。土曜日のランチタイム。果たしてどんなお話になるのか。お楽しみに!




・梅先生
梅先生新宿区四谷で業歴約30年の司法書士
趣味は、神輿担ぎと草野球。どちらも終われば潰れるまでの酒盛り
お酒が大好きだけど、呑むと直ぐに寝てしまう、昭和生れの頑固オジサン

・ノリスケ君
梅先生の執筆を担当して3年目の編集者
自称グルメの大食漢。守備範囲は和洋中のオールマイティー




法律改正 相続登記が義務になる!しかも忘れると過料(後編)



~前編の復習~
① アンコウみたいに大口明けて笑ってる場合じゃない。だって過料ですから

▶前編はこちらから!



② 相続登記が義務化!ご葬儀が終わったら、登記の手配も準備して下さい




先に相続関係の登記に関係するポイントだけ列挙しておきますね。



1.令和6年4月1日(施行日)から相続登記が義務化
2.施行日以降に発生した相続だけでなく、施行日以前に発生した相続にも登記の義務が遡及的に適用(要注意!
3.相続による取得を知ってから3年以内に登記をする義務
4.正当な理由がなく登記を懈怠すると10万円以下の過料



でも、遺産分割協議が整わない事も多いだろうし、遺言書がない時には、そもそも相続不動産を知り得ない事もあるでしょ。これには何か救済的な制度は無いのですか?




ありますよ。



例えば、
相続人申告登記の制度があります。相続人がわからない場合や分割協議が整わない時の回避策です
・相続人が法務局に対して、登記名義人の法定相続人である事を申し出ます。そうすれば3年以内の登記申請義務を果たしたことになります
・その後、分割協議をして、それから3年以内に登記申請をすれば大丈夫です
・相続人申告は単独でできます。登記官がその者の氏名及び住所を職権で登記をします(持分は登記されません)。免許税も非課税です


②所有不動産記録証明制度ができます
かろうじて自分が相続人だとわかったとしても、日頃からの交流がない場合には、相続財産がわからないですよね。
今でも「名寄帳」で所有不動産を確認できますが、同一市町村内の不動産しか検索できないので、相続財産全部を知る事はできませんでした。
この所有不動産記録証明制度のおかげで、被相続人の日本全国の不動産を把握できるようになります。しかも非課税の不動産は名寄帳に記載されない事が多いのですが、今回は記載されるので、もれなく知れるから便利ですね。


③登記名義人の死亡等の事実の公示制度ができます
登記官が他の公的機関(例えば住基ネットなど)から死亡等の情報を取得して、職権で死亡の有無を登記に表示します。
そのために、不動産登記をする際には、名義人の生年月日などの所有者情報が法務局に提供される仕組みができます。


④相続土地国庫帰属制度ができます(令和5年4月27日施行予定)
簡単に言うと、相続を承認したのに、相続した土地の一部にだけ国に帰属させる事(実質的な所有権放棄)ができるようになります。
相続放棄は今でもできますが、今の相続放棄制度では全部の財産の相続放棄をせざるを得ないので、個別の土地の相続だけを放棄する事はできませんでした。
・今回の改正では、相続の後から、個別の土地について国に権利を帰属させる事で実質的な土地所有権を放棄する事ができるようになります
・ただし、この制度を利用するためには、(A)申請条件と(B)国の承認が必要な事と(C)10年分の管理費負担等の条件があります
条件のクリアも大変ですし、国の承認についてもかなり厳しいですから、使い勝手が良いかは様子を見ないと分からないですね。




(A)申請できない場合
<1> 建物の存する土地
<2> 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
<3> 通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
<4> 土壌汚染対策法第2条第1項に規定する特定有害物質(法務省令で定める基準を超えるものに限ります。)により汚染されている土地
<5> 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地


(B)国の不承認基準
<1> 崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限ります)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
<2> 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
<3> 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
<4> 隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの
<5> 1から4までに掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの


(C)10年分の負担金
詳細は未だ不明です。土地の面積や地目や環境等の諸実情を考慮して算出されることになっています。
参考までに今の国有地の標準的な管理費(10年分)
市街地の宅地200㎡/約80万円
粗放的な管理で足りる原野/約20万円





いろいろと新しい制度ができるのですね。




実は今でも、土地利用円滑法(略称)があって、長期間に相続登記がされていないと、法務局から「相続登記をして下さい」という趣旨の「通知書」が来ているんだよ。これは、法務局がその人の戸籍謄本等を取得して、法定相続人情報まで作成してから、相続人に通知書を送るのです。

どうやら、その法務局の近くに住んでいる相続人に、通知書が届くらしいのだけどね。これに従って相続登記をする時には、戸籍謄本の取得費用はかからないし、いまのところは過料も無いね。




相続登記の未了は、本当に社会問題なんですね。




そうだね。だから、ご葬儀が終わった時には、相続の登記が義務になったので、登記に協力してもらいたい話を、相続人に言っておかないといけないね。




でも、葬儀の日に相続の話を持ち出すのは、不謹慎だと怒られませんか?




ん~、僕の感覚だと、不謹慎だと怒られるような気がするな~。
それなら、相続登記が法律上の義務になった事が、マスコミ等を通じて国民に周知されるまでは、タイミングを考えて少し後から義務になったことを付け加えて相続登記の話をする事を考えないといけないだろうね。




ところで先生、そろそろ、メインのアンコウ鍋にしませんか?




よいね~。楽しみにしていたのだよ。




すいませ~ん、アンコウ鍋を2人前お願いします。その後は雑炊をお願いしますね。

来ました。アンコウ鍋です。野菜もたっぷりで出汁が美味しそうですね。




中居さんが鍋に火をつけてくれて、食べ頃を教えてくれます。野菜もたくさんの種類が入っています。
ウドが煮えて出汁が茶色になってきたら全体の食べ頃だそうです。アンコウの肝も身もゴロゴロ入っていますから、食べ応えがあります。




まずは水菜を食べてください。出汁がコクがあって美味しいですよね。




出汁が美味しいからってのみ過ぎちゃうと、この後の雑炊が作れなくならない?




大丈夫です。お出汁は追加してくれますから。




じゃあ、遠慮なく飲めるね。美味しい~。野菜も美味しいけど、アンコウがプリプリで、やはり一番美味しいね。




良かったです。




お鍋が美味しいから、もう1本お銚子をもらおうかな。




先生はお酒ですね。僕はお腹が空きましたから雑炊を頼みますね。




雑炊も中居さんが作ってくれます。お出汁を追加して美味しく作ってくれます。1人前をお願いしたのですが、いろいろと食べてきたので、2人で分ければ十分な量になると思います。若い人には足りないかもしれません。


雑炊には御新香を付けるとよいですよ。追加したお酒の肴にもなりますからね。



雑炊はあっと言う間に食べてしましましたね。美味しいから僕はもう少し食べたいくらいです。2人前にしておけばよかった。




ノリスケ君には足りなかったかな。では、デザートでも食べますか?





デザートを頂きます。




デザートを食べながら聞いてくれるかな。




はい。




③ 引越届は、市(区)役所だけでなく法務局にもお願いします




相続登記の義務化と一緒に、現在登記されている人(法人)の住所や名前が変った時には、その変更登記をする事が義務になったんだよ。




え?引越した時や結婚した時には、市(区)役所の市民課や戸籍課に変更の届け出をしますよね。その届け出で、法務局も自動的に変更されているのではないのですか?




残念ながら、まだその制度は無いのだよ。先に言ったように、所有者不明土地の原因の約32.4%は、住所等変更登記の未了によるのだからね。



先に住所変更等の登記に関係するポイントだけ列挙しておきますね。

1.施行日は、令和8年4月28日以内の政令で定める日(令和4年1月現在で政令は未制定)から、住所変更等の登記が義務化になります
2.施行日以降に発生した住所等変更だけでなく、施行日以前に発生した住所等にも登記の義務が遡及的に適用されます(要注意
3.変更から2年以内に登記をする義務があります
4.正当な理由がなく登記を懈怠すると、5万円以下の過料
5.住所変更だけではなく、結婚、離婚、養子縁組などの氏名変更、法人の本店移転や商号・名称変更も含まれます



これも厳しいですね。




要するに、今まで変更登記が必要だった場面が権利から義務になったという事だね。
町名だけが変わった場合、(例)埼玉県浦和市→埼玉県さいたま市浦和区 になったような場合は、元々、変更登記が看做されて不要なので義務もないわけだよ。

でも住居表示実施の場合、(例)2番地14→2丁目1番4号 に変わったような場合は、変更記が必要な場面なので登記義務が発生するのだと思うよ。

でも個人的には、行政主導の変更だし、変更の前後の資料は行政が持っているのだから、個人に通知はされるとはいえ、住居表示実施の場面までも国民に過料をもって義務を課すのはいかがなものかと思うけどね。今後の運用を待ちたいね。




住所等の変更登記には、何か救済措置はないのでしょうか?




あるよ。自然人の場合には、登記官が取得した情報に基づき(住基ネット等)登記名義人に住所等変更登記をする事の事前確認をしたうえで、変更の登記をする事ができるんだ。これは非課税になるんだよ。

法人の場合も、会社等法人番号を不動産登記に追加して、法人登記システムから不動産登記システムに変更の情報を通知して、登記官が変更の登記をする事になるんだ。これも非課税になるんだよ。






でも、過料はあるんですよね。




やっぱり、過料はイタイよね。




所有者不明土地の社会問題は分かりましたけど、やっぱり過料はイタイですよね。
本当に過料が課せられるのでしょうか?だって、会社登記の変更登記だって、2週間を過ぎたらいきなり過料の通知が来たなんて話は聞いたことがないです。2年ぐらい放置していたら、過料が来た話は聞きますけど。




まあ確かに、運用の問題として、2週間が過ぎたからといっていきなり過料の通知が来たと言う話は聞かないね。何かの登記を出したタイミングで通知が来ることがほとんどだね。
しかも、表示登記の義務懈怠で過料が来たという話も、いままでは聞いた事がないけどこれからはどうかな。




それじゃあ、大丈夫なのかな?




今回は、だぶん大丈夫ではないと思うよ。
なぜなら、今回の法律改正は近々に解決しなくてはならない所有者不明土地のという具体的な社会問題の解決策だし、登記懈怠を法務局が知るための手段や職権登記も用意されているからね。今回の義務は、厳しく運用されると思うけどね。




それは、気を付けないといけませんね。




おや?お酒がなくなってきましたね。では、この辺で今日はお開きにしましょうか?
あれ?ノリスケ君はどこに行ったのかな?







お客さん!お客さん!畳の上で気持ちよさそうに寝ているところをごめんなさいね。お連れ様はお帰りになりましたよ。

お勘定は、下足札を持って出口のところでお願いしますね。階段を降りる時には足元に気を付けて下さいね。




あらま、ノリスケ君は最後まで話を聞いてくれたのかな?まあ良いか。今日も美味しいお店を紹介してくれたから(笑)。ごちそうさまでした!





折角の神田界隈だから、周辺の昭和レトロの風景を見ながら帰ろう。
「ぼたん」鳥すき  明治30年創業 建物は昭和初期
備長炭と鉄鍋で頂きます。いせ源の横にあるので、次はぜひ行ってみたいですね。



「神田藪蕎麦」蕎麦 明治13年創業
2013年2月19日に火災で半焼したが、2014年10月20日に営業再開。
お店の雰囲気も伝統の味も再現して、ますます歴史を重ねていくのが楽しみ



「竹むら」 甘味処 昭和5年創業
東京都選定歴史的建造物に指定 名物は「揚げ饅頭」

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