建設トピックス

【2024年度・大手50社】建設工事受注高が4年連続増加!サービス業など民間需要が牽引

先日、国土交通省から大手建設業者50社を対象とした2024年度の建設工事受注動態統計調査の結果が発表されました。

2024年4月~2025年3月における建設工事全体の受注総額は18兆9,558億円で4年連続の増加となり、好調を維持しています。特に民間工事の旺盛な需要が目立ち、全体を牽引しました。

本記事では発表された調査結果をもとに、2024年度の建設工事受注高について解説します。発注者別・工事種類別といったさまざまな切り口で分析していますので、建設業界の受注動向を把握する際の参考にしてください。

2024年度建設工事受注総額は前年度比5.3%増加

2024年度の建設工事受注総額は18兆9,558億円で、2023年度と比べて5.3%増加しました。このうち国内建設工事は18兆3,169億円で、5.6%の増加です。

民間工事、公共工事、海外工事の内訳は、以下のとおりとなっています。

受注高 前年度比
民間工事 13兆6,457億円 8.9%↑
公共工事 4兆1,130億円 4.1%↓
海外工事 6,389億円 2.6%↓
総計 18兆9,558億円 5.3%↑

※上記内訳では「駐留軍・外国公館」「小口工事」の受注高を除いているため、総計と内訳の合計が一致しない点にご留意ください。

民間工事が増加した一方で、公共工事と海外工事は2023年度を下回る結果でした。総計の72.0%を占める民間工事の躍進が、公共工事と海外工事の縮小を補うかたちで、全体の受注増を牽引しました。

次に建築と土木の内訳も見てみましょう。

受注高 前年度比
建築 13兆826億円 7.8%↑
土木 5兆8,732億円 0.1%↑
総計 18兆9,558億円 5.3%↑

建築・土木ともに拡大傾向ですが、特に建築の伸びが総計に大きな影響を与えています。

民間工事は4年連続増と堅調な伸び

2024年度の民間工事の受注高は、13兆6,457億円でした。2023年度と比較して8.9%増加し、2021年度以降、4年連続で拡大しています。

発注者を製造業と非製造業に分けて示すと、以下のとおりです。

受注高 前年度比
製造業 3兆5,181億円 10.1%↑
非製造業 10兆1,276億円 8.4%↑
民間工事計 13兆6,457億円 8.9%↑

製造業は2023年度に一時落ち込んだものの、2024年度に再び回復しました。非製造業は2023年度から2年続けて上昇しています。

製造業・非製造業ともに伸びている状況から、民間企業などによる旺盛な建設需要が伺えます。特に製造業が10.1%増加と力強い伸びを見せている点は、注目すべきポイントです。成長の背景には、設備投資の加速や生産拡大の動きがあると考えられます。

民間工事の発注者別の動向

次は発注者別の動向を見ていきましょう。2023年度から2024年度にかけて受注高が増加した業種と減少した業種は以下のように分類できます。

増加 減少
  • 製造業
  • 農林漁業
  • 電気・ガス・熱供給・水道業
  • 情報通信業
  • 金融・保険業
  • サービス業
  • その他
  • 鉱業、建設業
  • 運輸業
  • 卸売業、小売業
  • 不動産業

また、受注高と寄与度の上位3業種は以下のとおりです。

▽発注者別受注高TOP3

順位 受注高 前年度比
1位 製造業 3兆5,181億円 10.1%↑
2位 不動産業 3兆2,719億円 12.1%↓
3位 サービス業 2兆7,481億円 53.4%↑

▽発注者別寄与度TOP3

順位 寄与度
1位 サービス業 5.31
2位 製造業 1.79
3位 電気・ガス・熱供給・水道業 1.69

製造業とサービス業が受注高・寄与度ともにTOP3にランクインしています。特にサービス業が前年度比プラス53.4%と驚異的な伸長を遂げ、5.31という突出した寄与度で全体に大きなインパクトを与えているのがポイントです。

民間工事の工事種類別の動向

建築と土木に分けた工事種類別の受注高と寄与度TOP3は、以下のとおりです。

▽【建築】工事種類別受注高TOP3

順位 受注高
1位 事務所・庁舎 2兆9,685億円
2位 工場・発電所 2兆8,238億円
3位 住宅 1兆9,462億円

▽【建築】工事種類別寄与度TOP3

順位 寄与度
1位 工場・発電所 2.42
2位 住宅 2.14
3位 建築その他 1.36

▽【土木】工事種類別受注高TOP3

順位 受注高
1位 土木その他 1兆544億円
2位 鉄道 4,833億円
3位 電線路 2,186億円

▽【土木】工事種類別寄与度TOP3

順位 寄与度
1位 土木その他 0.72
2位 土地造成 0.27
3位 - -

※3位以降は数値がマイナスであるため、2位まで記載しています。

建築のなかでは、受注高2位の工場・発電所と3位の住宅の寄与度が大きいです。土木のなかでは、土木その他が受注高・寄与度ともにトップにランクインしています。

公共工事は3年ぶりの減少

2024年度の公共工事の受注高は、4兆1,130億円でした。2023年度と比べると4.1%のマイナスで、3年ぶりに縮小しています。

国の機関と地方の機関に分けて示すと、以下のとおりです。

受注高 前年度比
国の機関 2兆8,629億円 1.6%↓
地方の機関 1兆2,501億円 9.2%↓
公共工事計 4兆1,130億円 4.1%↓

国の機関・地方の機関いずれも3年ぶりにマイナスに転じています。特に地方の機関はマイナス9.2%と大幅に減りました。原因として地方自治体による慎重な財政運営や公共投資の抑制などが考えられます。

一方で国の機関は、減少してはいるもののマイナス1.6%と比較的緩やかな動きです。

公共工事の発注者別の動向

発注者別の動向を見ると、2023年度から2024年度にかけて受注高が増加した発注者と減少した発注者は以下のように分類できます。

増加 減少
  • 政府関連企業(国)
  • 都道府県(地方)
  • 地方公営企業(地方)
  • 国(国)
  • 独立行政法人(国)
  • 市区町村(地方)
  • 地方その他(地方)

また、発注者別の受注高と寄与度TOP3は以下のとおりです。

▽発注者別受注高TOP3

順位 受注高 前年度比
1位 国 1兆5,157億円 2.6%↓
2位 政府関連企業 1兆903億円 3.8%↑
3位 市区町村 5,941億円 17.6%↓

▽発注者別寄与度TOP3

順位 寄与度
1位 政府関連企業 0.22
2位 - -
3位 - -

※2位以降は数値がマイナスであるため、1位のみ記載しています。

政府関連企業など、拡大傾向が見られた発注者もありましたが、その伸びは控えめでした。一方で市区町村が17.6%の減少となり、公共工事全体のマイナス転換に大きく影響しました。

公共工事の工事種類別の動向

建築と土木に分けた工事種類別の受注高と寄与度TOP3は、以下のとおりとなっています。

▽【建築】工事種類別受注高TOP3

順位 受注高
1位 建築その他 3,072億円
2位 教育・研究・文化施設 2,989億円
3位 事務所・庁舎 1,933億円

▽【建築】工事種類別寄与度TOP3

順位 寄与度
1位 建築その他 0.38
2位 住宅 0.24
3位 教育・研究・文化施設 0.22

▽【土木】工事種類別受注高TOP3

順位 受注高
1位 道路 1兆3,070億円
2位 土木その他 5,374億円
3位 上水道・下水道 3,152億円

▽【土木】工事種類別寄与度TOP3

順位 寄与度
1位 道路 0.31
2位 港湾・空港 0.30
3位 上水道・下水道 0.30

建築は建築その他が、土木は道路が、受注高・寄与度ともにトップです。

海外工事は4年ぶりの減少

2024年度の海外工事受注高は、6,389億円でした。2023年度と比べて2.6%のマイナスとなり、4年ぶりに縮小傾向に転じています。

建築と土木に分けて示したものが以下のとおりです。

受注高 前年度比
建築 1,950億円 22.6%↓
土木 4,440億円 9.8%↑
海外工事計 6,389億円 2.6%↓

土木は2023年度と比べて9.8%増加と好調である一方、建築は22.6%減少となっており、建築と土木で大きなギャップが見られました。結果的に建築の大幅減少が響き、海外工事全体としてはマイナスに転換しています。

次に建築と土木に分けて、工事種類別の受注高TOP3をまとめました。

▽【建築】工事種類別受注高TOP3

順位 受注高
1位 事務所・庁舎 537億円
2位 工場・発電所 418億円
3位 建築その他 392億円

▽【土木】工事種類別受注高TOP3

順位 受注高
1位 港湾・空港 1,969億円
2位 鉄道 756億円
3位 道路 575億円

建築では事務所・庁舎、工場・発電所が上位を占めており、企業のグローバルな拠点整備が進んでいることが示唆されます。

土木は港湾・空港が圧倒的首位で、次に鉄道、道路が並びます。世界の交通インフラ市場は今後さらなる拡大が見込まれており、需要をうまく取り込んでいけるかどうかが、今後の海外工事受注高を左右することになるでしょう。

建設工事受注高の推移

国内工事受注高は18兆3,169億円と2020年度から5年連続で増え続けており、18兆円を超えたのは1996年度以来のことで28年ぶりです。


出典:「令和6年度の建設工事受注動態統計調査(大手50社調査)結果」(国土交通省)

月ごとの推移を見ると、2024年度は4月・5月・7月・8月・10月・12月・1月・3月の8カ月で、過去4年間で最高額を記録しています。特に2024年度の7月と10月は、2021・2022・2023年度の各同月と比べて受注高が大きく伸びました。


出典:「令和7年3月の建設工事受注動態統計調査(大手50社調査)結果」(国土交通省)

民間工事受注高の推移

民間工事受注高も13兆6,457億円と2021年度から4年連続で増加を続けています。13兆円を超えたのは1992年度以来のことで、32年ぶりです。


出典:「令和6年度の建設工事受注動態統計調査(大手50社調査)結果」(国土交通省)を加工して作成

月ごとの推移に注目すると、2024年度は4月・7月・10月・1月・3月の5カ月において、過去4年間で最高額を達成しました。特に2024年度の7月・10月・3月の受注高は、2021・2022・2023年度の各同月と比較して、大幅な上昇を見せています。


出典:「令和7年3月の建設工事受注動態統計調査(大手50社調査)結果」(国土交通省)

公共工事受注高の推移

公共工事の受注高はバブル期をピークに減速し、リーマンショック後に持ち直したものの横ばいの動きが続いています。直近4年間の受注高の推移を見ると、2021年度は減少、2022~2023年度は増加していましたが、2024年度で再び減少に転じました。


出典:「令和6年度の建設工事受注動態統計調査(大手50社調査)結果」(国土交通省)を加工して作成

月ごとの推移を見ると、2024年度は4月・8月・10月の3カ月において、過去4年間で最大の受注高を達成しています。2024年度の4月の受注高は2021・2022・2023年度の各同月を上回りましたが、5月以降突出した動きは見られませんでした。


出典:「令和7年3月の建設工事受注動態統計調査(大手50社調査)結果」(国土交通省)

大規模工事の受注高

大規模工事とは、受注高10億円以上の国内工事を指します。2024年度の大規模工事の受注高は13兆7,274億円で、前年度比7.6%の増加でした。建設工事全体のなかで大規模工事が占める割合は、74.9%です。

大規模工事の受注高を民間・公共、建築・土木に分けると、以下のとおりになります。

建築 土木 合計
民間 9兆5,688億円 1兆572億円 10兆6,260億円
公共 9,320億円 2兆1,694億円 3兆1,014億円
合計 10兆5,008億円 3兆2,266億円 13兆7,274億円

大規模工事のなかで最も多くの割合を占めているのは、建築分野の民間工事(69.7%)です。

まとめ

2024年度の建設工事受注動態統計調査(大手50社調査)結果によると、建設工事受注高の総計は前年度比プラス5.3%と、4年連続で増加しました。

好調な需要を支えているのは主に民間工事で、前年度比8.9%という大幅な増加によって、公共工事と海外工事の減少をカバーしています。民間工事の発注者のなかではサービス業の伸びが大きく、製造業や電気・ガス・熱供給・水道業も全体の増加を牽引しました。

今後の動向を予測すると、近年の資材価格・人件費高騰が受注高に影響をおよぼす可能性があります。資材価格・人件費高騰による追加コストが発注者に受け入れられれば、受注高は今後も堅調に推移していくでしょう。一方で、発注者が予算を増やせない場合、プロジェクトの延期や規模縮小のリスクが懸念されます。

今後の動きを注視しつつ、本記事の内容を今後の事業戦略のヒントとしてご活用いただけますと幸いです。

(建設データ編集部)

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