現場ノウハウ

i-Constructionとは?i-Construction2.0との違い、取り組むメリットとデメリットも解説

【この記事を執筆したのは…】

飴田ちさとさん
一級土木施工管理技士|Webライター|SEO対策など建設業界向けマーケティング支援|建設会社で9年間勤務した後に起業|学術論文執筆経験あり

建設業における生産性向上を実現するための取り組みとして、2016年度から国土交通省が推進してきたi-Construction。2024年4月には、建設現場の省人化対策を加速させるために、i-Construction2.0を策定したことでも話題になりました。

建設業界の担い手不足が叫ばれる中、国土交通省をはじめとして業界全体で生産性向上や省人化に向けたさまざまな取り組みを実施しています。

ただ、i-Constructionを推進するうえで課題を感じている企業もあるでしょう。そもそも「i-Constructionってなに?」と思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

わたしも「i-Constructionに関して理解できていない」「何から始めるべきかわからない」という声を何度も聞いてきました。

そこで今回は、i-Constructionやi-Construction2.0について詳しく解説します。

i-Construction、さらにはi-Construction2.0に取り組むメリットとデメリットも紹介しますので、これから建設現場の生産性向上や省人化対策を進めたい方は、ぜひ本記事で理解を深めてみてください。

目次

i-Constructionとは

i-Constructionとは何かを解説します。

「概要」「策定の目的」「建設DXやICTとの違い」について、詳しく見ていきましょう。

i-Constructionの概要

i-Construction(アイ・コンストラクション)は、2016年度に国土交通省が策定した取り組みです。

「ICTの全面的な活用(ICT土工)」などの施策を建設現場へ導入することにより、建設現場の生産性向上を目指すという方針が示されています。

たとえば、i-Constructionの取り組みには以下のようなものがあります。

【i-Constructionの具体的な取り組み】

  • ICT技術を活用し遠隔で建設機械を操縦する
  • BIM/CIMで作成した3次元データを仮設・施工へ活用する
  • AR・VRを使用し現場説明会で施工イメージを共有する
  • ドローンを活用して測量する
  • ウェアラブルカメラとWeb会議システムを連携した遠隔臨場を実施する
  • 図面や計算書などをクラウド上に保存して共有する

上記は、デジタル技術の導入に関する取り組みの一例ですが、i-Constructionにはプレキャスト製品の導入や施工時期の平準化なども含まれます。

つまりi-Constructionは、建設現場における生産性向上につながる取り組みの総称です。

また、i-Constructionの推進により生産性を向上させ、建設現場を魅力あるものに改善するという目的も公表されています。

かつては「3K(きつい・汚い・危険)」のイメージが根付いていた建設業界。i-Constructionの推進により「新3K(給与が良い、休暇が取れる、希望が持てる)」のイメージ定着も期待できます。

建設業界のイメージアップができれば、担い手の確保や多様な人材の獲得につながる可能性も高まるでしょう。

【参考】国土交通省|i-Constructionの推進(令和4年3月)

i-Construction策定の目的

i-Construction策定の目的は、国土交通省「i-Constructionの推進(令和4年3月)」に以下のように記載されています。

中長期的な建設現場の労働者不足に対応するため、i-Constructionの推進により、令和7年度までに建設現場の生産性2割向上を目指すこととしている。

【引用】国土交通省|i-Constructionの推進(令和4年3月) 第1章 これまでの取組 2. i-Constructionの目的

このように、建設現場の生産性を2割向上させることを目的に、i-Constructionを推進しています。

建設DXやICTとの違い

i-Constructionと混同しやすいのが「建設DX」や「ICT」です。

それぞれの違いは、以下のとおりです。

i-Construction ICT(ICT土工など)の全面的な活用や建設現場への導入により、建設現場の生産性向上を目指す取り組み
建設DX 建設業界にデジタル技術を導入し、新たなビジネスモデルの構築や変革を図る取り組み
※DXは「デジタルトランスフォーメーション」の略
ICT Information and Communication Technologyの略で、情報技術や伝達技術

i-Constructionとは、ICT(情報技術や伝達技術のこと)などデジタル技術を建設現場で全面的に活用し、生産性向上を目指す取り組みの総称です。また、プレキャスト製品の導入や施工時期の平準化など、デジタル技術の導入以外の取り組みも含まれます。

建設DXとは、デジタル技術を建設業界に導入することで、これまでにはない新しいビジネスモデルをつくったり、根本から変化を起こしたりする取り組みのことです。

【参考】
総務省|第1部 特集 デジタルで支える暮らしと経済
総務省|住民参画システム利用の手引き 資料編 3.用語解説 ICT(あい・しー・てぃ)

新たに策定されたi-Construction2.0とは

i-Constructionの策定後、2024年4月に新たに策定されたのがi-Construction2.0です。

ここでは、i-Construction2.0とは何かを解説します。「概要」「策定の目的」について、詳しく見ていきましょう。

i-Construction2.0の概要

i-Construction2.0とは、これまで推進してきたi-Constructionの取り組みを加速させ、さらに建設現場の省人化対策を進める取り組みです。

2040年度までに、建設現場において少なくとも3割の省人化(生産性1.5倍向上)を実現することを目標とし、そのために建設現場のオートメーション化を目指して、以下の3本の柱を掲げています。

【i-Construction2.0の3本の柱】

1.施工のオートメーション化
  • 建設機械のデータ共有基盤の整備
  • 自動施工における安全ルールの策定
  • 遠隔施工の普及を拡大
  • AIを活用した施工の自動化
2.データ連携のオートメーション化
(デジタル化・ペーパーレス化)
  • BIM/CIMなどのデジタルデータの活用
  • 現場データの活用による書類削減
  • 施工管理の高度化
  • 検査の効率化
3.施工管理のオートメーション化
(リモート化・オフサイト化)
  • 施工管理・監督・検査のリモート化
  • 新技術の活用により現場作業を効率化
  • プレキャスト部材の活用

【参考】国土交通省|「i-Construction2.0」を策定しました ~建設現場のオートメーション化による生産性向上(省人化)~

i-Construction2.0策定の目的

i-Construction2.0策定の目的は、以下の3つです。

【i-Construction2.0策定の目的】

  • 建設現場の省人化対策
  • 人口減少下においてインフラ整備や維持管理を持続的に実施
  • 建設現場のオートメーション化

i-Construction2.0は、建設業界で活躍する高齢就業者の退職や将来の担い手不足による課題への対応、自然災害への対策、老朽化するインフラの維持管理・更新を計画的に実施するために、必要な取り組みであるといえます。

i-Constructionとi-Construction2.0の違い

i-Constructionとi-Construction2.0の違いを簡単におさらいしましょう。

国土交通省「i-Construction2.0~建設現場のオートメーション化~令和6年4月」によると、以下のように違いが掲載されています。

【i-Constructionとi-Construction2.0の違い】

i-Construction
  • 生産性向上施策
  • 産学官が連携して生産性を高める
  • ICT活用、プレキャスト、平準化をトップランナーとして実施
i-Construction2.0
  • 省人化対策
  • 人口減少下における持続的なインフラ整備・管理(国民にサービスを提供し続けるための取組)
  • 自動化(オートメーション化)にステージを上げる

【引用】国土交通省|i-Construction 2.0 ~建設現場のオートメーション化~令和6年4月 ●i-Construction2.0の目的や考え方

つまり、i-Constructionは「生産性向上」を実現させるための施策であるのに対し、i-Construction2.0は将来の人口減少を踏まえて、さらに「省人化」「自動化」を強化するための施策であるといえます。

i-Constructionに取り組むメリット7選

i-Constructionに取り組むメリットは、以下の7つです。

i-Construction2.0が目指す「建設現場のオートメーション化」を推進するために、ぜひ参考にしてみてください。

施工日数の短縮が実現できる

i-Construction2.0に取り組むことで、施工日数の短縮が実現できます。

施工日数の短縮は、現場技術者が直面する課題の1つではないでしょうか。どうすれば施工日数を短縮できるのか、わたし自身も試行錯誤しながら工程表を作成してきました。

国土交通省「i-Construction2.0~建設現場のオートメーション化~令和6年4月」では、i-Construction2.0効果把握(案)として、直轄ICT活用工事による時間短縮効果が公開されています。

それによると、ICTを活用した工事が実施されていない2015年度と比較して、ICTを活用した工事が実施された2022年度は生産性が約21%向上したといいます。

生産性向上によって現場作業の効率化や省力化の実現が期待できるため、施工日数を大幅に短縮できる可能性も高まります。

【参考】国土交通省|i-Construction2.0~建設現場のオートメーション化~令和6年4月 i-Construction2.0効果把握(案)

安全性の向上が期待できる

i-Construction2.0に取り組むことで、安全性の向上が期待できます。

ここで、建設業の労働災害状況を紹介します。厚生労働省「令和5年 労働災害発生状況(令和6年5月27日)」によると、2023年における建設業の死亡者数は223人でした(※2023年1月1日~12月31日までに発生した労働災害状況)。

全産業の中で、もっとも労働災害による死亡者数が多い建設業。

建設現場では「墜落・転落」「はさまれ・巻き込まれ」「崩壊・倒壊」など、さまざま労働災害発生リスクが考えられます。

i-Construction2.0の取り組みの1つが「施工のオートメーション化」です。

自動施工や遠隔施工技術を導入することで、作業員が現場で作業をせずに施工ができるようになるため、建設現場における労働災害発生リスクの低減につながります。

現場事務所や遠隔地のオフィスから建設現場の作業が実施できれば、現場従事者を事故や怪我から守れます。

【参考】厚生労働省|令和5年 労働災害発生状況 令和6年5月27日

ヒューマンエラーを防げる

i-Construction2.0に取り組むことで、ヒューマンエラーを防げるのも特長です。

i-Construction2.0が掲げる3本の柱の1つが「データ連携のオートメーション化」。

BIM/CIMを活用した4Dモデルの構築、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)などを活用したデジタルツインによって、イメージを可視化しながら施工計画を検討できれば、手戻りやミスを防止できます。

工事が始まった後では、建設現場でミスに気づき対応できたとしても、施工日数が延びたり人件費や材料費がかかったりします。

こうした技術を駆使すれば施工前にミスを把握して対応できるようになるので、i-Construction2.0に取り組むメリットは大きいといえるでしょう。

わたしも、2Dの図面や施工関係書類、口頭で伝えるだけではなかなか施工のイメージを共有できず、現場で何度もイラストを書いて説明したことが多々ありました。

関係者間で認識のずれを生まないためにも、BIM/CIM、VR、ARなどデジタルデータの活用は施工イメージの共有方法として最適ではないでしょうか。

データの共有がしやすくなる

i-Construction2.0に取り組むことで、データ共有がしやすくなります。

施工関係書類・図面・写真などを紙に印刷して保存すると、修正のたびに印刷し直さなければなりません。また最新図面の情報を関係者に共有するのにも時間がかかってしまうことがあります。

情報共有が遅れてしまうと、古い図面やデータをもとに現場作業を進めてしまう恐れも…

クラウド上でデータ共有ができれば、誰でもすぐに最新の正しい情報にアクセスできるでしょう。現場事務所に戻ってパソコンを開かなくても、タブレットやスマートフォンからデータを確認できるので、職人さんにもスムーズに情報を伝えられます。

ただし、すべてクラウド上でデータ共有をするのが正解とは限りません。

現場では「タブレットの文字が見えないから、何が書いてあるか教えて」「図面に書かれている数値を読みあげてくれる?」と、職人さんから聞かれることもあります。

データをクラウド上で共有するのか紙で共有するのか、状況に応じてどちらが妥当かを考えるのも大切です。

多様な働き方ができる

i-Construction2.0に取り組めば、多様な働き方ができるようになります。建設現場のオートメーション化により、屋外作業でも別の場所にいながら行うことが可能になるからです(リモート化、オフサイト化)。

建設現場から離れた場所でも仕事をすることができれば、時間や場所にとらわれない働き方ができるでしょう。

家庭の事情などで、自宅から遠く離れた建設現場で仕事をするのが難しい社員もいるかもしれません。一時的に自宅近くのオフィスで仕事をしたいという場合でも、リモート化やオフサイト化に対応していれば、社員が安心して働ける職場環境をつくれます。

「結婚したら施工管理ができるのか」「子どもがいても施工管理を続けられるか」

わたしと同じ、現場技術者として働く女性たちがそんな話をしていたこともあります。

ライフスタイルが変化しても施工管理の仕事を続けられるのが理想ですが、もし施工管理の仕事を続けるのが難しいと感じたときでも、建設現場に関わる仕事ができれば、やりがいやキャリア形成に不安を感じなくなるのではないでしょうか。

技術継承がしやすくなる

i-Construction2.0の取り組みによって、技術継承がしやすくなるのもメリットといえます。

たとえば、遠隔臨場による工事検査で活用されるウェアラブルカメラ。これを装着すれば、Web会議システムを通して遠隔地の社員にも現場状況を伝えられます。

建設現場といっても、車で移動するほど広い場合もあるでしょう。先輩や上司から話を聞いてもわからないこと、図面を見てもイメージできないことなど、建設現場にいなければ理解できないことも数多くあります。

ウェアラブルカメラを装着すれば、現場状況をリアルタイムで共有できるため、若手の育成にも役立ちます。

さらに、ウェアラブルカメラの映像や音声を保存すれば、社員研修などの教育コンテンツとしても活用できるでしょう。

人件費を削減できる

i-Construction2.0への取り組みは、人件費の削減にもつながります。

建設現場の作業を自動化、省力化、効率化できれば、少ない人材で同じ作業をこなすことが可能になるため、人件費を大幅に削減できるでしょう。

ただし、i-Construction2.0の3本の柱「施工のオートメーション化」「データ連携のオートメーション化(デジタル化・ペーパーレス化)」「施工管理のオートメーション化(リモート化・オフサイト化)」を実現するためには、いずれもイニシャルコストやランニングコストがかかります。

3次元計測機器などは高額なものも多く、i-Construction2.0に取り組む上での課題でもあります。

i-Constructionに取り組むデメリット5選

i-Constructionに取り組むデメリットは、以下の5つです。

デメリットも把握した上で、できることから実践していきましょう。

ツールの導入や運用にコストがかかる

i-Construction2.0に取り組む際、ツールの導入や運用にコストがかかります。ツールによっては高額なものもあるため、設備投資にかける費用を考慮し導入するかを決めることが重要です。

たとえば、ICT建設機械を購入するなら、数千万円かかるのが一般的です。

「i-Construction2.0に取り組みたい!」と思っても、コスト面ですぐに対応できないこともあるでしょう。

また、イニシャルコストだけでなくランニングコストがかかるものもあります。クラウドサービスなどは継続的に使い続けるため、ランニングコストまで考慮しておく必要があります。

1つの建設現場だけでなく企業全体で取り組む必要もあるため、現場担当者だけでツールの導入などを判断できないことも課題となるでしょう。

技術の習得など教育が必要になる

i-Construction2.0に取り組むなら、デジタル技術の習得などの教育が必要になる場合もあります。

ツールの使い方がわからないメンバーがいると、逆にデータの取得や共有に時間がかかってしまうこともあるため、作業所のメンバー全員がデジタル技術をスムーズに活用できるよう、技術研修や勉強会などで知識を習得することが求められます。

一部のメンバーだけがツールを使用できれば良いというわけではなく、メンバー全員が基本的な使い方をマスターできるように教育の場は必須です。

ただし、デジタル技術の理解度や習得度は人によって違います。初歩的なことがわからない場合もあれば、特定のツールや機能に関してのみ理解できていないという場合もあるでしょう。

状況に合った適切な教育を受けることが大切です。

国土交通省関東地方整備局の「関東DX・i-Construction人材育成センター」では、インフラ分野のDX推進を目的に人材育成を実施しています。

研修や講習会、セミナーなどが定期的に開催されているので、こちらを利用してみるのも良いでしょう。気になる方は、ぜひチェックしてみてください。

【参考】国土交通省関東地方整備局|関東DX・i-Construction 人材育成センター

通信環境の影響を受けやすい

i-Construction2.0は、建設現場のオートメーション化を推進するものです。デジタル技術を最大限に活用した取り組みであるため、通信環境の影響を受けやすくなります。

自動化施工・遠隔施工・ICT施工を実現させるためには、安定した通信環境が必須です。また、クラウド上に施工データを保存できたとしても、通信環境が不安定な場所ではデータ共有ができないということもあり得ます。

WebカメラとWeb会議システムを利用した遠隔臨場、ロボットを活用した自動点検も、安定した通信環境がなければ実施できません。

国土交通省「i-Construction 2.0~建設現場のオートメーション化~(令和6年4月)」では、高速ネットワークの整備についての記述があります。

大容量データを最大限に利用できるよう、河川道路管理用光ファイバを活用し、末端(出張所)までのネットワークを高速化。日本全国を100Gbpsの高速・大容量回線で接続する、というものです。

高速ネットワークが整備されれば大容量データをスムーズに取得できるため、従来は丸1日かかるといわれていた3次元モデルのデータ取得も、90秒(約1/1,000)まで短縮可能とのことです。

【参考】国土交通省|i-Construction2.0~建設現場のオートメーション化~ 令和6年4月

入念な情報セキュリティ対策が必須になる

i-Construction2.0に取り組む場合、入念な情報セキュリティ対策が必須です。

建設現場のオートメーション化を推進する上では、通信環境が必要となります。しかし、インターネットを介しているため、サイバー攻撃に遭うことも考えられます。

社内の機密情報や顧客情報が外部に漏洩し社内外にまで被害が拡大するなど、サイバー攻撃による被害のリスクもあることを押さえておきましょう。

顧客情報の漏洩が原因で、取引先からの信頼を失ってしまうという懸念もあります。外部への情報漏洩を防ぐためにも、入念な情報セキュリティ対策を行うことが重要です。

最新版のソフトウェア・OSの使用やアクセス制限の設定、ウイルス対策ソフトの導入も、情報セキュリティ対策として有効です。

一般社団法人日本建設業連合会の公式ホームページには「情報セキュリティに関するガイドライン・教育資料集」が掲載されています。

「建設現場における情報セキュリティガイドライン」をはじめ、元請会社と協力会社がそれぞれ実施すべき情報セキュリティ対策に関する資料もあります。

情報セキュリティ対策について詳しく知りたい方は、チェックしてみてください。

【参考】一般社団法人日本建設業連合会|情報セキュリティに関するガイドライン・教育資料集

デジタル人材を確保する必要がある

i-Construction2.0に取り組む際、デジタル人材を確保する必要があります。

i-Construction2.0に取り組んでいる作業所では、現場技術者がマネジメント業務をこなしながら、デジタル技術への対応も行っている場合があります。

生産性向上を目的として2016年度から取り組まれてきたi-Construction。

一方、i-Construction2.0に取り組むことで現場技術者の負担が大きくなってしまうと、生産性を向上させるはずが逆に現場作業の生産性を低下させるという可能性もあります。

デジタル技術に柔軟に対応するためにも、デジタル人材を確保するのが最適です。

とはいえ、デジタル人材を採用することは簡単なことではないでしょう。また、デジタル人材なら誰でも良いわけでなく、建設工事に関する基本的な知識を理解していることも求められます。

そこで、「建設ディレクター」にデジタル技術を支援してもらうのも1つの方法です。建設ディレクターとは、デジタル技術とコミュニケーションを使って、現場技術者とオフィスをつなぐ人材を指します。

以下記事では、建設ディレクターの業務内容を詳しく解説しています。建設ディレクターを導入するメリットや注意点も紹介しているので、本記事とあわせてチェックしてみてください。

i-Constructionの具体的な取り組み

i-Constructionの具体的な取り組みについては、国土交通省が表彰する2017~2021年度「i-Construction大賞」と2022年度以降の「インフラDX大賞」から確認できます。

今回は、2024度の「インフラDX大賞」の受賞者が実施した取り組みを一部抜粋して紹介します。

「i-Constructionに取り組みたいけど、何から取り組めば良いの?」

このような方は、ぜひ成功事例を参考にしてみてください。

村上土建開発工業株式会社

全面的にICT施工などを導入した村上土建開発工業株式会社(北海道音更町)の「十勝川改修工事の内 西士狩築堤河岸保護外工事」における取り組みは、現場作業の効率性と生産性を向上させたとして、工事・業務部門で優秀賞を受賞しています。

主な取り組みは、以下のとおりです。

【主な取り組み】

  • 全面的なICT施工
  • 施工管理ソフトの活用
  • 樋門構造物のCIM 活用
  • 遠隔臨場
  • LiDARセンサーを活用した出来形管理(配筋管理)
  • GNSSを活用した安全管理

【参考】国土交通省|令和6年度 インフラDX大賞 受賞取組 概要 (工事・業務部門(直轄・地方公共団体等))

株式会社市川工務店

株式会社市川工務店(岐阜市)は「令和4年度 一般県道松原芋島線川島大橋下部工事」で、独自に開発した測量システムを活用するなど施工管理業務や日常業務の省人化に取り組み、工事・業務部門で優秀賞を受賞しました。

主な取り組みは、以下のとおりです。

【主な取り組み】

  • 独自に開発した測量システムとタブレット端末上の3D設計モデルにより、各測点の躯体の設計値とのずれをリアルタイムに把握
  • 自動追尾型測量の実施
  • CADを使用せずに短時間で測量後のデータ処理できる変位計測システムを開発

【参考】国土交通省|令和6年度 インフラDX大賞 受賞取組 概要 (工事・業務部門(直轄・地方公共団体等))

株式会社吉光組

株式会社吉光組(石川県小松市)の取り組みは、i-Construction・インフラDX推進コンソーシアム会員の取組部門で優秀賞を受賞しています。

河川災害復旧工事における建設3Dプリンターの活用が受賞対象となりました。型枠組立作業を効率化したこと、脱型作業をなくしたことで、14日間の工程短縮を実現しています。

主な取り組みは、以下のとおりです。

【主な取り組み】

  • 建設用3Dプリンターを活用したモルタル製残存型枠を採用
  • モルタル製の残存型枠を採用し環境負荷を低減
  • 北陸地方整備局の直轄河川工事では初の3Dプリンターを活用した施工

【参考】国土交通省|令和6年度 インフラDX大賞 受賞取組 概要 (i-Construction・インフラDX推進コンソーシアム会員の取組部門)

i-Constructionやi-Construction2.0を理解し、建設現場の生産性向上から省人化までを実現させましょう!

今回は、i-Constructionやi-Construction2.0について解説しました。

i-Constructionに取り組むメリットとデメリットも紹介したので、何から始めたら良いのか、できることは何かを考えるきっかけになれば幸いです。

「i-Constructionを推進しましょう!」

このような言葉を聞いたり、展示会・イベントなどで多くの情報を得たりすることもあるでしょう。i-Constructionの推進について、わたしもさまざまな場面で耳にしてきました。

i-Constructionの取り組みは、未来の建設現場に欠かせないもの。

ただ、設備投資や人材確保などの課題がある状態で、いきなり取り組みを進められないのも現実です。

本記事をきっかけに、i-Constructionについて作業所のメンバーや会社内で話題にすることから始めてみてはいかがでしょうか。

著者:飴田ちさと

著者:飴田ちさと

一級土木施工管理技士。建設会社にて9年間勤務。大好きな上司と二人三脚で日本全国の土木工事に携わる。
「令和6年能登半島地震」をきっかけに起業。現在は、個人で建設業界向けのSEO対策などマーケティング支援を行う。X(旧Twitter)では「建設業の3K脱却姉さん」として情報を発信中。
好きなものは、プロレス観戦と焼酎。

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