「都市公園とは?」知っていそうで意外と知らない公園の話|一級建築士による建設アラカルト

建設トピックス

【Written by 独学一級建築士 nandskさん】

みなさんは「公園」についてご存じですか?

滑り台やブランコがある近所の公園、河川敷のグラウンドがある公園、数百円の入場料が必要な大きな公園。どれも「公園」という名前ですが、じつは公園には種類があり、一言で公園といっても奥が深いものなんです。

今回はそんな身近で、でもじつはよく知らない「公園」についてのお話です。

都市公園とは

「公園」と呼ばれるもので最も代表的なのが「都市公園」です。都市公園と聞くとあまりなじみがないかもしれませんが、全国で11万カ所くらいあるといわれており、普段目にする「○○公園」というのはだいたい都市公園です。

逆に、都市公園以外の公園としては、皇居外苑や新宿御苑などの「国民公園」、富士箱根伊豆国立公園などのような「地域制公園」があります。それぞれ、国民公園は環境庁設置法(国民公園制定時、現・環境省)、地域制公園は自然公園法に基づくもので、都市公園は都市公園法に基づいて設置されます。

詳しくはこちらの国土交通省関東地方整備局の解説がわかりやすいかもしれません。

これらのほかにも、大規模開発の際に整備する「提供公園」、大規模建築物をつくる際に設置を求められる「公開空地」などもありますね。

都市公園の種類

都市公園にもたくさんの種類があります。大枠だけでも住区基幹公園、都市基幹公園、大規模公園、国営公園、緩衝緑地等と分類されており、そこからさらに細分化されます。

例えば、住区基幹公園のうち街区公園は、主として街区内に居住する者の利用に供することを目的とし、1カ所あたりの面積は0.25haが標準です。この街区公園の誘致距離は250mといわれています。つまり、その場所から250m以内の人が遊びにくる公園ということですね。

規模が大きくなり近隣公園になると、面積は2haが目安で、誘致距離は500m。さらに地区公園、総合公園と規模が大きくなり、総合公園は面積10~50haが目安、誘致距離は一の市町村全域となります。総合公園の中でも大きいものは市町村の区域を超える範囲が対象になっています。

広さだけでなく、公園の設えによる分類もあり、例えば動物園や植物園などの動植物公園(特殊公園)、屋外レクリエーションと墓地を含んだ公園である墓園(特殊公園)、大気汚染や騒音などの公害防止のために設置される緩衝緑地、商業・業務系の地域において施設利用者が休息するための休養施設として設置される広場公園などなど、様々な種類があります。

都市公園の役割

都市公園の役割は、そこで遊んだりリラックスしたりといったイメージしやすいものだけではありません。ほかにも様々な役割があるんです。

まず、“みどりの確保”は公園の大きな役割の1つです。希少な動植物が生息している公園も多くあり、生物の保全に役立っているほか、ヒートアイランド現象の緩和などにも一役買っています。

最近では防災機能を合わせた公園も増えており、福島市のあづま総合運動公園は東日本大震災の時に公園体育館が避難場所となりました。また、災害時の支援活動の拠点として利用されることもあり、新潟県小千谷市の白山運動公園は新潟県中越地震の際、消防隊の活動拠点になっています。公園内に防災備蓄倉庫やマンホールトイレが設置されていたり、延焼遮断帯として機能したり、防災機能は公園の大きな役割です。

意外と忘れがちなのが、景観や文化の保全・保護に関わる役割。例えば、札幌市の大通公園は同市のシンボルになっていて、市民にとってなくてはならない場所です。公園内に文化遺産などがある場合も多く、熊本市では熊本城の周辺一帯を熊本城公園という都市公園として整備しています。どちらも公園という公的施設が街の景観や文化を守っていると言えるでしょう。

また公園は、お祭りやイベントの会場として活用されることで、無形文化の保護などにも貢献しています。みなさんの近所の盆踊りなども、公園で開かれているケースが多いのではないでしょうか。

都市公園のルール

都市公園は「都市公園法」により厳格にルールが決められています。例えば、都市公園法第2条によると、都市公園内に設置できるものは「公園施設」か「占用物件」のみとなっています。

「公園施設」に当たるものは、芝生、花壇、噴水、池、ベンチ、ぶらんこ、シーソー、野球場、テニスコート、植物園、図書館、野外劇場、売店、駐車場、便所、時計台、門、管理事務所、水道、展望台など。法令でかなり細かく限定列挙されていて、そこに書かれていないものを公園に設置することはできません。また法令に書かれたものであっても、設置に当たっては“都市公園の効用を全うするために必要であること”という条件があり、無条件で設置することはできないのです。

例えば、売店は公園施設として認められているので設置することは可能ですが、“公園の効用を全うするために必要であること”が条件ですから、つまりその公園を利用するのに必要ないものを販売することはできません。逆に言えば、公園を利用するために必要なもの(飲食物、レジャー用品など)であれば販売することが認められており、実際に販売品を限定したコンビニを公園内に開店させたのが横浜市の山下公園です(2025年1月現在は閉店)。

一方の「占用物件」については、公園施設とは異なり、公園に関係ないものでも事情を考慮して設置が認められていて、例えば公園でイベントを開催する際のテント、近隣にスペースがないためやむを得ず設置する郵便ポストなどの公共的施設といったものがこれに該当します。

変わりゆく公園とその事例

ここまで従来の「公園」についてお話ししてきましたが、近年、新しい制度ができたことにより、公園のあり方はものすごい速さで変わってきています。

都市において貴重なみどりやオープンスペースを創出する公園は、今後さらに有効活用していくことが求められる一方、法律による規制が厳しく、やりたいことがなかなかできないという点が課題の1つでした。また、維持管理を行政が行っているため、財政の圧迫につながるという問題点も抱えています。

こうした諸課題を解決し、公園という空間を有効活用するための新制度がいくつか創設され、それらの活用事例もどんどん増えてきているのです。

公園に高層ビルを建てる神宮外苑地区

以前、こちらの記事でも紹介した神宮外苑地区。ここは、都市公園(都市計画公園)に指定されており、通常であればホテルなどの建物を建築することはできません。

しかし、神宮外苑ではオフィスやホテルを含む高層ビルなどを建築する再開発計画が進められています。

東京都では2013年に「公園まちづくり制度」というものが創設され、この制度を利用することで、都との協議により民間事業者が公園を含めたまちづくりを行うことができるようになりました。これにより、神宮外苑においても一定の緑地や公園機能を確保したうえで、都市計画公園区域から一部を削除し、その部分に高層ビルを建てることが可能になったのです。

ビルの上に公園がある渋谷宮下公園

渋谷区にある宮下公園は2004年にできた「立体都市公園制度」を活用している事例です。

1966年に東京初の屋上公園として整備された宮下公園は、老朽化による耐震性能の低下など様々な課題が生じていました。区の財政も厳しい中で、公園の再整備に民間活力を活用する案が浮上。三井不動産が商業施設や宿泊施設を整備し、その屋上を宮下公園にするという案が採用され、実現したのが今の宮下公園(MIYASHITA PARK)なのです。

まとめ

「公園」という言葉は誰にでもなじみがあると思いますが、じつは非常に奥が深いもので、最近はいろいろな公園も出てきています。みなさんの近所にある公園、よく行く公園はどういった公園なのか、考えてみるのも面白いかもしれません。

著者:独学一級建築士 nandsk

独学により一級建築士に合格。住宅やアパートの設計・工事監理、特殊建築物の維持管理、公共施設の工事設計・監督の経験あり。二級、一級建築士試験受験者へのアドバイスも行っている。『建築の楽しさを多くの人に知ってもらいたい』と話す。

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