グリーンなライフスタイルの街づくりへ
~グリーンインフラ特集・インタビュー~
グリーンなライフスタイルの街づくりへ
一般社団法人グリーンインフラ総研 代表理事 木田幸男氏
グリーンインフラについて、一般社団法人を創設し普及に尽力している一般社団法人グリーンインフラ総研の代表理事木田幸男さんに話を聞いてきました。
コロナ渦の状況が続いており、緑化東京事業所にお伺いし、木田様とオンラインでインタビューとなりました。
―― 一般社団法人グリーンインフラ総研の紹介をお願いします。
木田 「大地の力を、都市の力に」母体である東邦レオ株式会社の緑化事業部では「将来的な街づくりにグリーンインフラの概念が必要不可欠な時代がくる」として2002年から研究を開始。学術研究の追求を目的に、一般社団法人として2018年3月30日に設立しました。母体は株式会社東邦レオホールディングス、東邦レオ株式会社。
―― 一般社団法人グリーンインフラ総研の取組や考え方などを教えてください。
木田 これまでは、樹木の生育と安全に歩行できる歩道空間を両立する根系誘導基盤や、都市水害の対策となる雨水貯留浸透基盤など、植栽基盤を活用した技術提供やそれに付随する調査活動が強みでした。ただ、グリーンインフラの大きな特徴である多機能性を重視し、現在は持続的でレジリエントな街づくりを、グリーンインフラの概念を通じて実現するための支援活動にも尽力しています。また、グリーンインフラに関する総合ノウハウの構築、提供を通じて、魅力ある街づくり事業にも具体的に取り組んでゆきたいと考えています。
―― これまで携わってきたグリーンインフラ事業で印象深い仕事を教えてください。
木田 横浜市グランモール公園です。国内ではまだ実績の少ない技術を横浜市様に採用いただけたことは非常に大きな一歩でした。それだけでも印象深いのですが、美しい景観とともにグリーンインフラの多機能性を発揮してくれたことから多くの賞の受賞にもつながったことが嬉しかったですね。グリーンインフラの考え方や技術の発展につながる代表的な仕事となりました。
同法人のJ・ミックス工法が採用された横浜市グランモール公園再整備工事。市内で発生したコンクリートガラに腐植加工を施して植栽基盤材に再生し材料費をコストダウン化、加えて施工後も気温測定・降雨量・水位の変動状況をモニタリングした。結果、気温測定ではケヤキの葉からの蒸散作用と基盤材からの水のしみあがりによる打ち水効果で、無施工部に比べて地表面温度で5℃以上の差が生じた。また、1日に110mmの集中豪雨が発生した時でも冠水被害が発生しなかったなど、グリーンインフラのもつ多機能性が実証された。
―― グリーンインフラに関して、提言や課題、今後改善すべき点、または展望があれば教えてください。
木田 緑の役割は、美しい・癒されるといった感覚的な捉え方が一般的でした。そこから一歩進めて、グリーンそのものが明確な機能をもっていて、最終的にそれが価値として評価できることが重要です。
評価手法は色々構築されつつありますが、数値化だけでは本当の価値は見えません。課題がどのように解決されたのか、美しさや快適性をどう実現しているのか、そして利用者が自発的に意識したり行動したりできているかなど、人々の生活への寄与や文化的な活動にまで発展しているかどうかを評価することも私たちは視野に入れています。それが地域のブランディングや不動産価値向上にまでつながると考えています。
【取材後記】
グリーンインフラについて木田さんに様々お話しをきかせていただきました。
海外では30年ほど前から取り組みが開始されており、日本は後れを取っている現状。国土交通省が先頭に立ち、産学の知恵と技術を結集することでグリーンインフラの実装、整備の加速化が図られれば持続可能で災害に強い国土づくりへ大きく前進できると感じました。
利益を求めない。強い信念を貫く。「持続的でレジリエントな街づくり」を目指し、グリーンインフラの概念を通じて実現する支援活動に尽力している一般社団法人グリーンインフラ総研を今後も応援していきます。