土木施工管理技士講座 第8回「令和6年度第二次検定(2級)の解説」
どうも、Webライターの佐藤拓真です。
10月27日(日)に実施された令和6年度第二次検定(2級土木施工管理技士)ですが、試験内容の見直しにより経験記述の問題は以前と比べて変更点がありました。
令和7年度以降の経験記述の問題が今年度と同じとは限りませんが、合格を目指す上で試験内容の把握は必須です。
ということで、今回は令和6年度における2級土木施工管理技術検定について、経験記述を中心に試験の問題を振り返り、対策を解説します。
令和7年度以降に試験を受ける可能性がある方は、本記事を最後まで読んで、試験に対する理解を深めてください。
ちなみに、1級土木施工管理技術検定における第二次検定の変更点については、第7回の記事で詳しく解説しています。
元準大手ゼネコン勤務|土木の現場監督7年|ブロガー兼Webライター|SNS総フォロワー2.3万名|出版書籍「仕組み図解 土木工事が一番わかる」
令和6年度における第二次検定(2級)の問題
まずは、 令和6年度における2級土木施工管理技術検定における第二次検定の問題を見てみましょう。
経験記述の変更点としては、大きく2点です。
- 設問が1問から2問になった
- 解答する文字数が変わった
となります。
基本的には、1級と同様の傾向で問題が変わりました。
経験記述の変更点① 設問が増えた
経験記述の問題文は以下のとおりです。
1級の問題同様に、設問が2つになりました。
▼令和6年度2級土木施工管理技術検定(第二次検定)の問題
【出典】令和6年度2級土木施工管理技術検定 第二次検定試験問題(種別:土木)
2級の場合は、経験した工事における「品質管理」についての記述が1つ。
そして、「工程管理」に関する記述が1つ。
詳しくは後ほど解説しますが、1級同様、試験前に複数のテーマで解答を準備しておく必要がありました。
なお、設問2について令和6年度の問題では、「工事着手前」「工事中」のいずれを対象にしても可、とされていました。
経験記述の変更点② 解答する文字数が減った
解答文字数に関しても1級同様に、1問に対して記載できる量が減りました。
令和5年度までの問題および解答用紙は
(1)具体的な現場状況と技術的な課題
(2)課題を解決するための検討項目と理由
(3)検討の結果、実施した対応処置とその評価
となっていましたが、令和6年度は
【設問1】
(1)具体的な現場状況と特に留意した品質管理上の技術的課題
(2)(1)で記述した技術的課題を解決するために検討した項目とその対応処置
【設問2】
(1)施工条件や現場周辺の状況の観点から、工程管理上、留意した事項(工事着手前、工事中のいずれでも可)
(2)(1)で記述した留意事項に対して講じた対策とその理由
となりました。
1級同様、設問数が増えたことにより、1つのテーマについて記載する文字数が減っています。
しかしながら、短い文章量で事実を詳細に伝える必要があるため、難易度が下がったわけではありません。
令和7年度以降に2級を受検予定の方が行うべき対策
昨年度からの変更点を踏まえ、次は来年度以降に受検を予定している方に向け、試験対策について解説します。
結論から言いますと、行うべき対策のポイントは2つ。
- 複数のテーマ(安全、品質、工程など)で作文を用意する
- 技術上の課題を「工事着手前」「工事中」の2つに分ける
それぞれ詳しく解説します。
今後受検予定の方が行うべき対策① 複数のテーマで作文を用意する
令和6年度の1級の第二次検定について解説した前回の記事でも書きましたが、経験記述に対する準備として、複数のテーマで作文を用意しておきましょう。
理由は、令和6年度の問題で複数のテーマ(品質管理、安全管理など)が問われる形式に変更されたから。
令和5年度以前、2級土木の試験問題は複数のテーマから1つを選んで記述する形でした。
▼令和5年度2級土木施工管理技術検定(第二次検定)の問題
【出典】令和5年度2級土木施工管理技術検定 第二次検定試験問題(種別:土木)
しかし、令和6年度は2つのテーマについて問われる設問に変わりました。
今後もこの設問が継続される可能性があるため、複数のテーマで作文を用意しておきましょう。
今後受検予定の方が行うべき対策② 技術上の課題を「工事着手前」「工事中」の2つに分ける
こちらも前回の記事で書きましたが、現場ごとに留意した技術的な課題を「当初からわかっていたもの」と「現場の条件が変わったことにより生じたもの」の2つに分けて整理しましょう。
理由としては、令和7年度以降の問題の傾向がどうなるかわからないから。
経験記述の解答文を考える上で、テーマの次に重要な項目が、留意した事項が生じた“時期”です。
いくら工事中に生じた留意事項を準備していても、記載できる対象が工事着手前のものに限定されていては、採点対象になりません。
令和6年度の問題では、設問2の項目が「工事着手前」「工事中」のどちらでも記述可能でした。
▼令和6年度2級土木施工管理技術検定(第二次検定)の問題
【出典】令和6年度2級土木施工管理技術検定 第二次検定試験問題(種別:土木)
ですが、令和7年度以降も全く同じとは限りません。
令和6年度の1級の試験で出た問題と同じように、「工事着手前」または「工事中」へ限定される可能性もあります。
▼令和6年度1級土木施工管理技術検定(第二次検定)の問題
【出典】令和6年度1級土木施工管理技術検定 第二次検定試験問題
そのため、事前に作文を考える際には、現場ごとの留意事項を「工事着手前」または「工事中」のどちらなのか意識して書き出してみてください。
それほど手間がかかる作業ではないので、ぜひやってほしいです。
さらには、2級に合格した後、1級を受検予定の方であれば、用意した作文を1級の試験でもそのまま使えるので、しっかりと準備しましょう。
令和7年度以降の経験記述対策【例文付き】
ここまでの解説を踏まえて、令和6年度2級の経験記述における解答例を考えてみましょう。
土工事を例に、設問2「工程管理」の解答について例文を交えて詳しく解説するので、令和7年度以降に受検予定の方はぜひ参考にしてください。
■令和6年度 必須問題 【問題1】
【出典】令和6年度2級土木施工管理技術検定 第二次検定試験問題(種別:土木)
経験記述の作成例① 留意した事項
まずは(1)の「工程管理」における留意事項です。
例①:梅雨時期での施工となるため、雨による作業の遅延が懸念されることから、雨水の処理、トラフィカビリティーの確保について工程管理上、留意した。
例②:市街地の工事で、地元との協議の結果、9時から17時までの作業となり作業時間に制限があったため、工程管理上、各作業の効率化と時間管理に留意した。
といった内容を記載できていればOKです。
設問が「工程管理上、留意した事項」であるため、「~~に工程管理上、留意した。」と記載することがベストです。
経験記述の作成例② 留意事項についての対策
次に(2)。留意事項に対して講じた対策です。
対策は、以下の3つで考えてみましょう。
- 施工量の増加
- 作業内容の効率化
- 創意工夫
【施工量の増加】
作業員の増員、使用機械の数量を増やすまたは規格を上げる
【作業内容の効率化】
現場打ちからプレキャストへの変更、ストックヤードの確保、敷鉄板の敷設
【創意工夫】
地組・丘組の実施、大型型枠の使用、特殊工法の使用
といった内容が工程管理における一般的な対策になります。
実際に現場でやってきたことを、この3つの観点から考えてみましょう。
対策を書く際の注意点としては「具体的に記述する」ということです。
なぜなら、具体的に記述した方が信ぴょう性を感じることができるから。
例えば、数字を入れることで具体的になり信ぴょう性が増します。
①作業員を増やした
②過去の類似工事の歩掛りを参考に作業員の人数を増やした
③過去の類似工事の歩掛りでは10m/1人・日であったことから、作業員の人数を3人1パーティーから6人2パーティーへ変更した
どの内容に信ぴょう性を感じますか?
ほとんどの方は③に一番、信ぴょう性を感じるのではないでしょうか?
このように、数字を入れて具体的に記載することで、信ぴょう性のある内容になります。
文字数の関係から記述が難しい場合もあるかもしれませんが、数字を入れることでグッと具体的になるので、記述する際には意識してください。
そのほか「難しい」と話題になった問題
最後に、経験記述以外の問題で、SNSでもいくつか投稿されていた土工事の品質管理に関する必須問題について触れておきます。
受検者の間で難しいと話題になっていたのは、土工事の品質管理において重要な「盛土の締固め管理」に関する内容でした。
■令和6年度 必須問題 【問題3】
(「令和6年度2級土木施工管理技術検定 第二次検定試験問題(種別:土木)」より)
☆問題
土工の品質・施工管理等に活用する土の締固め度を測定するための下記の①、②の試験方法又は特徴について、それぞれ1つずつ解答欄に記述しなさい。
①砂置換法
②ラジオアイソトープ法
☆解答例
①砂置換法
最大粒径53mm以下の土に適用する試験方法。測定器具は比較的安価で、孔壁が乱れないよう、慎重に作成する必要があり、孔壁が自立できない自立性の低い地盤には不適。
②ラジオアイソトープ法
放射線を利用した間接的な測定方法。密度・含水比ともに短時間に測定することができる。測定器具は高価で取り扱いに注意を要するが、測定者の習熟度に与える影響が少ない測定方法。
土工事の経験がないと、なかなか管理手法についてのイメージが沸かないので覚えづらい分野ではあると思います。
そこで、砂置換法に関する詳しい解説について、[現場密度試験の砂置換法ってどんな試験?突砂法やRI法との違いも解説]の記事で、図解付きで解説しています。
図を見ることでイメージしやすいと思うので、砂置換法について理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてください。
まとめ
今回は、先日10月27日(日)に行われた、令和6年度における2級土木施工管理技術検定の第二次検定試験問題について解説しました。
- 1つの問に対して記述できる文字数が、令和5年度以前と比べ減っているので注意する
- 複数のテーマ(安全、品質、工程など)で作文を用意しておく
- 技術上の課題を「工事着手前」「工事中」の2つに分ける
来年度の試験まで約1年ありますが、早めの準備が大切です。
受検を予定している方はしっかりと準備しておきましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
作者紹介 佐藤拓真さん
作者紹介 佐藤拓真さん