土木施工管理技士講座 第2回「施工管理法の応用能力」

ナレッジ/ノウハウ

こんにちは、土木施工管理技士のWEBライター佐藤拓真です。

土木施工管理技士講座第2回ということで、今回は、施工管理法の応用能力問題を解説します。

施工管理法(応用能力)は、令和3年度の制度変更に伴い、新たに追加された分野です。

なぜ、施工管理法(応用能力)の問題ができたのかというと、令和3年度から土木施工管理技術検定が変わり、 監理技術者補佐ができたから。
1級土木施工管理技術検定において、第一次検定の合格者は「監理技術者補佐」となることができます。

施工管理法(応用能力)は 「受検者が監理技術者補佐として土木工事一式工事の施工管理を行うために必要となる応用的な能力」 を有しているかどうかの判断をするために、 追加されました。

第一次検定において時間をかけて勉強する必要があるのが、この施工管理法応用能力問題です。

なぜかというと、第一次検定においては、この施工管理法の応用問題で「正答率が6割以下」の場合は、 他の点数がいくら高くても不合格になってしまうから。

そのため、非常に重要な問題になります。

実際のところ、実施されてからまだ3年しかたっていないため、過去問が充実しているとはいえませんが、内容自体は全く新しいものというわけではありません。

しっかりと対策をして得点につなげていきましょう。

【著者紹介】
元準大手ゼネコン勤務|土木の現場監督7年|ブロガー兼WEBライター|SNS総フォロワー2.3万名|出版書籍「仕組み図解 土木工事が一番わかる」

出題される内容と傾向

まず、出題される内容と傾向について解説します。
分野別に出題されるテーマは以下の表のとおりです。

年度 令和5年度 令和4年度 令和3年度
施工計画
工程管理
安全管理
品質管理

3年連続で同じ出題テーマと出題数となっています。
さらに詳しい内容を表にしてまとめました。

年度 令和5年度 令和4年度 令和3年度
施工計画 ・調達計画
・安全確保及び環境保全の施工計画
・施工管理体制
・工事原価管理
・仮設工事計画
・施工体制台帳
・掘削底面の破壊状況
・建設機械の選定
・施工計画の作成
・施工体制台帳
・原価管理
・建設機械の選定
工程管理 ・工程管理全般
・各工程表の特徴
・工程管理曲線
・工程管理全般
・各種工程表の特徴
・品質・工程・原価の関係
・工程管理全般
・各種工程表の特徴
・バーチャート工程表
安全管理 ・車両系建設機械
・移動式クレーン
・埋設物の損傷防止
・酸素欠乏のおそれのある工事
・車両系建設機械
・移動式クレーン
・埋設物の損傷防止
・酸素欠乏のおそれのある工事
・建設機械の災害防止
・移動式クレーン
・埋設物・架空線の防護
・労働者の健康管理
品質管理 ・品質管理全般
・TS、GNSSを用いた盛土の品質管理
・鉄筋の組立
・プレキャスト部材の接合
・品質管理全般
・情報化施工による盛土の締固め管理
・鉄筋コンクリート構造物
・コンクリート施工全般
・品質管理全般
・盛土の締固め
・機械式接手
・プレキャストコンクリート構造物の接合

となっています。

この表を見てわかるとおり、 明確な傾向があります。

この3年間で全く同じ問題が出たわけではありませんが、対策をすれば6割以上の得点をとることは難しくありません。

ということで、次の章から「施工計画」「安全管理」「工程管理」「品質管理」について、過去問を交えて詳しく解説します。

施工計画

まずは、施工計画です。

佐藤

正直、一番バラエティに富んでいるのが、施工計画になります。

「施工計画(調達計画・仮設工事計画・施工計画)」「施工体制や、施工体制台帳の作成」が頻出問題です。

この2つを中心に解説していきます。

調達・仮設・施工計画

施工管理の1問目は「調達計画」「仮設工事計画」「施工計画」と毎年変わっています。

なので、施工計画に関して体系的に理解を深めるために、まず施工計画の全体像を簡単に解説しますね。

施工計画の策定は、発注者の要求する品質を確保するとともに、安全を最優先とした計画である必要があります。

その他の注意点は以下のとおりです。

POINT
  • 新技術や新工法を取り入れる工夫・改善を心がける
  • 1つだけの計画ではなく、代替案も考慮して比較検討し、最良の計画を採用する
  • 発注者から指示された工程だけでなく、 さらに経済的な工程を探し出すことが大切

施工計画の策定にあたっては、以下の4つ

  • 調達計画
  • 資材計画
  • 下請発注計画
  • 仮設工事計画

それぞれの計画するうえで重要なポイントと試験に出題された内容を解説します。

調達計画
調達計画は施工方法を決定して機械の予定表、資機材の予定表、労務の予定表を策定します。
その際に、現場の状況や契約条件、受注者の適正な利潤の追求につながるかどうかを考慮します。

  • 資機材の搬入は、 特注品の注文や長い納期を要する資機材について特に注意
  • 機械の計画は、 機械の効率的な稼働のために平均化して所有台数を計画すること

仮設工事の計画
仮設計画の策定にあたっては、仮設構造物の運搬、設置、運用、メンテナンスや撤去などの多角的な観点から総合的に判断が必要です。

  • 仮設工事の材料は、一般的な市販品の使用、規格の統一、主要な部材は他工事から転用する
  • 仮設構造物の設計における安全率は、本体構造物に比べて割り引く(安全率が小さくてOK)
  • 仮設工事は少ない作業員で作業をできるようにユニット化などの省力化を図る
  • 仮設部材で中古品を使用する場合は、必要に応じて材料強度を割り引く

施工管理体制・施工体制台帳

次が施工管理体制・施工体制台帳です。

佐藤

公共工事においては下請負金額に関わらず、施工体制台帳の作成が必要です。

施工体制台帳は現場に備え置き、発注者から請求があったときには、閲覧に供しなければなりません。

施工体制台帳の記載内容は、建設工事の名称、内容及び工期、健康保険の加入状況等、当該建設工事の下請負人の称号又は名称及び住所などになります。

施工管理体制

  • 元請負者は、すべての関係請負人の役割分担を明確にする
  • 下請負人がさらに下請負者と契約する場合は、再下請負契約書を元請業者に提出する
  • 元請負者は関係請負人の施工分担関係を表示した施工体系図を作成する

工程管理

次に解説するのが工程管理です。

工程管理は例年3問出題されています。

工程管理で2点をとることが目標で、「工程管理全般」「工程表の特徴」は例年出題される問題なので、必ず押さえましょう。

まずは、 工程管理の全体像について解説します。

工程管理は、工事の施工段階を評価する基準を時間に置いたもの。

工程管理の目的は、労働力、機械、設備、資材といった生産要素を最も効果的に活用することです。
工程管理は、施工計画において品質、原価、安全といった工程管理の目的とする要件を総合的に調整し、策定された基本の工程計画をもとに実施されます。

工程計画とは
手順と日程の計画、 工程表の作成を行うこと

施工計画で決定した施工順序、施工方法等に基づき、工事実施では工事の指示、施工管理を行います。

また、工程管理は以下の2つに大別されます

  • 統制機能
    施工計画の立案・計画を施工面で実施する機能
  • 改善機能
    施工途中で計画と実績を評価し、欠陥や不具合などがあれば処置を行う機能
佐藤

聞き慣れない言葉が多いかもしれませんが、暗記するしかないので、まずは言葉を覚えましょう。

工程管理全般

先ほどの前提知識を交えて、実際に出題された問題を中心に覚えるポイントをまとめました。

POINT
  • 工程の設定においては、施工のやり方、施工の順序によって工期、 費用が大きく変動するため、施工手順・使用機械の検討を行い、最適な施工方法を選定する
  • 工程計画は設定した施工方法に基づき、作業可能日数及び作業能率を推定し、工事数量から各工事の所要時間を見積もる
  • 作業可能日数は、休日と作業不可能日数を差し引いて求められる
    (作業不可能日数は、現場の地形、地質、気象等の自然条件や工事の技術特性から推定)
  • 各作業の時間見積もりができたら、タイムスケジュール上に割り付け、全体の工期を超過した場合に投入する人数・機械の変更や工法の修正などの試行錯誤を繰り返して工期に収める
  • 工程管理の進度管理は、計画と実施を比較し、進捗の報告を行う
  • 工程管理における改善として、施工の途中で計画を再評価し、フィードバックを行い、是正措置として、作業の改善、工程の促進、再計画を行う
  • 施工中は工事の施工順序と進捗速度を表す工程表を用いて、常に工事の進捗状況を把握し、工程計画と実施のずれを早期に把握する

各種工程表の特徴

次に工程表の種類について解説します。

佐藤

工程表の種類とその特徴は例年必ず出題されますので必ず押さえましょう。

各工程表の特徴と、その工程表から読み取れることが何かをしっかりと把握しましょう。

  • 斜線式工程表は、一方の軸に工事期間、もう一つの軸に工事量などをとり、工程を斜線で示す。トンネル工事など路線に沿った工事では工事内容を示すのに向いている
  • グラフ式工程表は、横軸に工期、縦軸に各作業の出来高比率を表示するので、予定と実績の作業の進捗状況がわかる
  • バーチャート式工程表は、横軸に時間をとり各工種が時間経過に従って表現されるので、作業間の関連と所要日数がわかりやすい
  • ネットワーク式工程表は、各作業の順序が明確で、1つの作業の遅れや変化がどのように影響してくるかを正確にとらえることができる

各種工程表の特徴は、以下の表のとおり。

横線式工程表は、ガントチャート工程表とバーチャート式工程表の2つ。
全体の所要日数が分からないというガントチャート式工程表の欠点を改良したものが、バーチャート式工程表です。

座標式工程表は、 斜線式工程表とグラフ式工程表に分類されます。
斜線式工程表は、工事の進行方向が1つで路線に沿った工事で用いられ、グラフ式工程表は作業の計画と実施の状況を比較するのに向いています。

ネットワーク式工程表の最大の特徴は、クリティカルパスがわかるということ。
クリティカルパスという工期に影響する作業というのは、ネットワーク式工程表でしか把握できません。
作成には熟練を要し、日数もかかりますが、ネットワーク式工程表でしかわからない情報を得ることができます。

以上が、 工程表の特徴です。

佐藤

特に難しい部分はなくチャンス問題だと思うので、しっかりと覚えましょう。

安全管理

次に解説するのが安全管理です。

佐藤

こちらも毎年4問出題されていますが、3年間で出題される分野がほとんど同じです。

主に出題される問題としては、「建設機械」「移動式クレーンの安全対策」「埋設物・架空線の対策」になります。

特に出題されている分野を抜粋して解説しますね。

建設機械

建設機械の災害防止ということで、毎年出題されています。

佐藤

工事現場において建設機械は広く一般的に使用するので、覚えて損することはありません。 しっかりと覚えましょう。

車両系建設機械

  • 事前に機械の種類及び能力、運行経路、作業の方法を示した作業計画を定める
  • 路肩、傾斜地などで機械が転倒又は転落する危険性があるときは、誘導者を配置して誘導する必要がある
  • 誘導者を置くときは、一定の合図を定め、誘導者に合図を行わせなければならない
  • 労働者に危険が生じる箇所には立ち入り禁止措置を講じる
  • 離席時には、原動機を止め、かつ走行ブレーキをかける等の逸走を防止する必要がある
  • 事業者はその日の作業を開始する前にブレーキやクラッチの機能について点検を行わなければならない
  • 修理又はアタッチメントの取り外しをする場合は、作業指揮者を定める
  • 車両系建設機械を用いて作業をおこなうときは、乗車席以外に人を乗せてはならない

移動式クレーン

移動式クレーンの注意事項は以下のとおりです。

  • 玉掛け者及び運転者がクレーンの定格荷重を常時知ることができるような措置を講じる
  • 移動式のクレーンの運転者は、合図を行う者を指名して、その者に合図を行わせなければならない
  • クレーン上部の旋回体と接触の可能性がある箇所に加えて、吊り荷の下に労働者を立ち入らせない
  • 強風時には作業を中止する

定格荷重
クレーンの状況に応じた負荷させることができる最大の荷重から、フック等の吊り具の重量を引いた重量が定格荷重です。ジブの長さや傾斜角によって、定格荷重は変化します。

埋設物・架空線の防護

施工者は、埋設物が予定されている場所で工事を行う際には、事前に調査を行い埋設物の位置、種類を確認します。

佐藤

この2つは現場で事故を起こすと第3者への影響が大きいです。なので、大事なことをしっかりと覚えましょう。

  • 発注者又は施工者は、 埋設物管理者の台帳に基づき、試掘等を行い、 その埋設物の種類、位置、規格、構造等を原則として目視で確認しなければならない。
  • 施工に先立ち埋設物の管理者および関連機関と協議し、 防護方法、 立会いの有無、 緊急時の連絡体制を決定する
  • 明かり掘削作業により露出したガス導管の吊り防護等の作業には、 作業指揮者を指名し、作業を行わなければならない
  • 露出した埋設物には、 物件の名称、 保安上の必要事項、 管理者の連絡先などを記載した表示板などを取り付ける等、 工事関係者等に伝達しなければならない

品質管理

最後に品質管理です。

こちらも毎年4問出題されていますが、3年間で同じ分野が出題されているわけではなく、幅広く出題されています。

主に出題されているのは、「品質管理全般」「情報化施工」なので、その分野を詳しく解説します。

品質管理全般

まずは、品質管理の基礎的な部分を解説します。

品質管理の目的は、契約約款、 設計図書に示された規格を十分に満足するような構造物等を最も経済的に施工すること。

品質管理は以下の流れに沿って行われます。

【品質管理の手順】
品質特性の決定→品質標準の決定→作業標準に従い作業を実施→データをとる

佐藤

用語がたくさん出てきたので解説します。

品質特性
品質管理における具体的な対象項目のこと

品質標準
施工の際に実施する品質の目標値。品質のバラつき度合いを考慮して余裕を持った品質を目標とする

作業標準の決定
品質基準を実現するため各段階での作業において、試験方法等に関する基準を決めるもの

品質管理は、施工計画の段階で管理特性を検討し、それを各施工段階でチェックするという考え方で管理を行います。

POINT
  • 品質特性では、設計値を十分満足するような品質を実現するためには、ばらつきの度合いを考慮して、余裕を持った品質を目標としなければならない
  • 品質特性は、構造物の品質に重要な影響を及ぼすものであること、測定しやすい特性であること等に留意する

次に、 情報化施工について解説します。

TS、GNSSを用いた情報化施工

情報化施工に関するTS、GNSSを用いた盛土の締固め管理に関する問題は3年連続で出題されています。

実際に出題された内容と注意点をまとめました。

  • 施工に使用する材料は、事前の土質試験で品質を確認し、試験施工により巻き出し厚や締固め回数を決定したものと同じ材料であることを確認する
  • 巻き出し厚は、規定値以下であることを確認する
  • モニタに表示される回数分布図は、施工範囲の全面で、既定の締固め回数だけ締固めたことを示す色になるまで締め固める
  • TS・GNSSを用いた締固め機械の走行記録を用いて盛土の品質管理をする方法は工法規定方式である
  • TS・GNSSを用いた盛土の締固めのシステム適用については、地形条件や電波障害の有無等を調査し、適用可否を確認する

以上、施工管理法の応用能力問題について、施工計画全般、工程管理、安全管理、品質管理に問題を絞って、要点を解説しました。

施工管理法の応用能力は、絶対に落とせない分野です。暗記するだけじゃなく関連項目を覚えることで理解が深まるので、 ドンドン勉強して知識を増やしていきましょう。

作者紹介 佐藤拓真さん

作者紹介 佐藤拓真さん

準大手ゼネコンで土木の現場監督として7年勤務。建設業界関連で合計11年働いています。自身のブログ 『つちとき』 では、若手の土木技術者に向けて工事現場で実際に学んだ知識を公開中。X(旧Twitter) でも情報発信しており、フォロワーは合計2.3万人。プライベートでは娘が2人いる30代の父親です。著書『しくみ図解 土木工事が一番わかる」

◆佐藤拓真さんのブログ 土木工学と建設業のブログ『つちとき』
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