地盤の良し悪しを見極める方法と地盤調査|一級建築士による建設アラカルト
【Written by 独学一級建築士 nandskさん】
建物を建てるうえで最も重要と言っても過言でないのが地盤です。上屋(建物)は様々な工夫をすればたいていのことは何とかなりますが、土地(地盤)についてはやれることは限られています。だからこそ土地探しが重要になってきますし、地盤の良し悪しを見極める地盤調査がとても重要になってくるんです。
地盤の良し悪しを見極める方法
地盤の良し悪しを見極める方法は大きく分けて2つあります。
1つは、ボーリング調査などに代表される地盤調査を行う方法。もう1つが、自然災害などで最近話題にもなっていますが、その土地の履歴や地名などから判断する方法です。
地名から地盤を調べる
その土地の地名から地盤の良し悪しを予測する方法というのは意外と重要、かつ簡単です。例えば、池や沼と言った水を連想させる漢字が使われている地域は、かつては湿地帯であったところが多く、地盤が悪いことも多いです。
谷や深などの漢字もその地域が谷地などであった名残の場合が多いです。例えば、東京の渋谷では渋谷駅を出ると道玄坂や宮益坂、スペイン坂など坂が多く、どれも登坂です。ゲリラ豪雨で渋谷駅が浸水しニュースになったことからもわかるように、まさに谷地で水が集まるエリアなんです。
その他にも、梅という字は埋め立て地の「埋」という字を変換したもので、大阪の梅田は低湿地帯を埋め立ててできたエリアです。
土地履歴を調べる
山や低地を開発して作られた新興住宅街に多い○○丘や○○台と言った地名も、かつては人が住むエリアでなかった地域に多い地名です。こういった地域を含め地名が変わることは多々あるので、土地の履歴まで遡って調べると、より地盤の良し悪しがわかります。
例えば、東京都では「建物における液状化対策ポータルサイト」で昔の地図を見ることができます。こういったサイトで土地履歴を調べるのも重要でしょう。
同様に、災害履歴もネットなどで公表されている場合が多いので、今までの水害の被害などを調べてみると良いかもしれません。
地盤調査が大事
地名や過去の記録というのはとても大事で、私たち建築士も設計する際には調べることが多いですが、これはあくまでも大きな視点での話になってしまいます。建物を建てるその土地の良し悪しというのはやはり地盤調査を行わないとわからないんです。
ましてや、実際の構造計算では地耐力(地盤がもつ長期許容応力)、つまり地盤沈下などしないか、と言った情報が必要なので、これは地盤調査をしないと調べようがありません。
地盤調査の方法
地盤調査の方法は、様々なものがあり、土地の状況や建てたい建物の規模によって専門家が判断して実施します。有名なのはボーリング調査(標準貫入試験)やスクリューウェイト貫入試験(旧スウェーデン式サウンディング試験、通称SS)などです。一定の圧力を掛けながら土地にドリルを挿していく方法で、その地盤の固さや水位、土の種類などを調べることができます。
その他にも、建物の重さ相当の荷重をかけて地盤の沈下を見る平板載荷試験や液状化の危険度を調べる液状化判定、土を採取して強度や粒子の密度を調べる土質試験などがあり、複数組み合わせて行うこともあります。
地盤調査結果はネットで閲覧できる
実は、この地盤調査ですが、場所によってはネットや市役所などで閲覧ができるんです。
国土交通省や都道府県のHPでは、行政が行った地盤調査結果を開示しており、参考にすることができます。そのため、小学校などの公共施設のすぐそばで建築する場合には、その小学校の地盤調査結果のデータがあれば参考にすることができます。
小規模な建物を建てるために、いちいち地盤調査をしていたら費用も時間もかかってしまうので、こういった公表データを参考に設計することも多々あります。
地盤調査結果はピンポイント
公表されている地盤調査結果を参考にする場合には注意点があり、地盤調査の結果はピンポイントだということです。50mほど離れた土地の地盤調査結果がまったく違うものになるケースなどもあり、地盤調査はあくまでもその場、ピンポイントでの調査結果ということです。
実際に、ある程度の規模の建物を建てる場合には、建物の四隅と真ん中の計5か所の地盤調査をやることが一般的ですし、それでも隣のポイント同士で結果がけっこう違うものなんです。
地下水などは水脈の位置によってかなり変わりますし、水道が時代によっても変わるのは容易に想像できますよね。当然、直近で雨が降っていれば水を含んでいますし、しばらく晴天が続いていれば乾燥しており、季節によっても結果は変わるくらいなんです。
まとめ
今回は建物を建てる地盤について、良し悪しを調べる方法をまとめてみました。我々建築士は、地盤調査の結果を見て建物の配置や基礎を検討しますし、今では結果が悪ければ地盤改良などを行う方法もあります。まずは、土地の状況を正確に判断するためにも、地盤調査をやってみましょう。
【独学一級建築士 nandskさん】
独学により一級建築士に合格。住宅やアパートの設計・工事監理、特殊建築物の維持管理、公共施設の工事設計・監督の経験あり。二級、一級建築士試験受験者へのアドバイスも行っている。『建築の楽しさを多くの人に知ってもらいたい』と話す。