【2024年最新】アスベストの事前調査が義務化された?改正大気汚染防止法をまるっと解説
制度改正 【2024年最新】アスベストの事前調査が義務化された?改正大気汚染防止法をまるっと解説
さとしアスベストの法律が改正したって聞いたのだけど。
アスベストを規制している大気汚染防止法は、工場および事業場における事業活動や建築物等の解体等に伴うばい煙、揮発性有機化合物・粉じん等を規制し、大気汚染から国民の健康を保護、生活環境を保全する目的があり、石綿(以下、アスベストという)も特定粉じんに指定しています。
令和3年4月1日から令和5年10月1日にかけて、段階的に改正大気汚染防止法が施行したので改正内容を解説します。
目次
アスベストとは
20世紀になると、日本はアスベストの産業利用が急速に拡大し、建築業界では防火材や断熱材として、船舶や自動車産業でも広く使われるようになりました。
1970年代に入ると、アスベストが健康に有害であることが世界的に認識され始め、日本でもその影響が注目されるようになり、アスベストに曝露された労働者が健康被害を訴える事例が増えました。
日本でも1980年代以降、アスベストの使用に関する規制が強化されました。
特に、製品へのアスベストの混入が厳しく規制され、製造業や建設業界での使用が制限されました。
アスベストに曝露された労働者や住民の健康被害が問題となっています。
日本でも肺がんや間皮腫などのアスベスト関連疾患が報告され、これらの被害者への支援や補償の問題が社会的な課題となっています。
現在では、日本でも2008年(平成20年)にはアスベストの使用は禁止されています。
規制が強化された背景とは
アスベストは、30~40年の潜伏期間があり、その微細な繊維が気づかないうちに体内に吸引されることで健康被害を引き起こすことが知られており、主な健康被害には以下のようなものがあります。
- 肺がん:アスベスト曝露者は、肺がんの発症リスクが増加します。特に、アスベストの高い濃度に長期間曝露された場合に、肺がんの発症リスクが高まるとされています。
- 間皮腫(メソセリンギオーマ):アスベスト曝露者は、間皮腫と呼ばれる稀ながら非常に悪性のがんであるメソセリンギオーマを発症するリスクが高まります。間皮腫は、肺や胸膜などの内部臓器を覆う膜である間皮に発生するがんです。
- 非特異的な肺の線維化:長期間のアスベスト曝露は、肺の線維化(繊維が肺組織に沈着し、炎症反応が起こることで肺組織が瘢痕化すること)を引き起こす可能性があります。これにより、呼吸機能が低下し、呼吸困難などの症状が現れる場合があります。
- 他のがんのリスク:アスベスト曝露は、肺がんや間皮腫以外のがん(例:腎臓がん、消化器がん)の発症リスクも増加させる可能性があります。
これらの健康被害は、アスベストの曝露量や期間、個人の健康状態などによって異なります。特に、アスベストに曝露された職業労働者やその家族、工業地域に住む人々が高いリスクにさらされています。
アスベストが含有された建築物の解体や改装を行えば、アスベストが空気中に飛散すると現場労働者や周辺の住民の健康を害し、大気汚染を引き起こす可能性があります。
2024年になり、1970年代前後の建築物の老朽化から解体や改修の依頼が増加すると見込まれるため、アスベストの規制を強化に踏み切りました。
改正大気汚染防止法の内容とは
令和3年4月1日施行
- 全てのアスベスト含有建材が規制対象なったため、アスベスト含有成形板等(レベル3建材)も規制対象
- 調査方法を法定化
- 調査に関する記録の作成・3年間の保存義務化
- 隔離等をせずに吹付けアスベスト等の除去作業を行った場合の直接罰の創設
- 下請負人を作業基準遵守義務の対象に追加
- 作業結果の発注者への報告を義務化
- 作業記録の作成・3年間の保存の義務化
レベル3建材については、相対的に飛散性が低いこと、除去等作業の件数が膨大となり、都道府県の事務負担を増やさないために届出の対象とはなりませんが、作業基準等の規制対象となります。
令和4年4月1日施行
一定規模以上の建築物については、アスベスト含有建材の有無に関わらず、調査結果の都道府県等への報告
令和5年10月1日施行
事前調査は一定の資格を有する者による書面調査、現地調査
事前調査ができる者の資格とは
2023年(令和5年)10月1日より、アスベストの事前調査は、厚生労働省が定めた建築物石綿含有建材調査者による事前調査が義務付けされました。
建築物石綿含有建材調査者となるには、建築物石綿含有建材調査者の講習を受講し修了する必要があります。
建築物石綿含有調査者の種類とは
- 一般建築物石綿含有建材調査者
一般建築物石綿含有建材調査者にかかる講習を修了した者で全ての建築物の調査を行う資格- 一戸建て等石綿含有建材調査者
一戸建て住宅および共同住宅の内部に限った調査(共有部分は除く)を行う資格- 特定建築物石綿含有建材調査者
一般建築物石綿含有建材調査者の講習内容に加えて、実地研修や、口述試験を追加したもので、全ての建築物の調査を行う資格
建築物石綿含有調査者の受講資格とは
- 石綿作業主任者技能講習修了者
- 大学において、建築に関する課程を修めて卒業した後、建築に関して2年以上の実務経験を有する者
- 短期大学において、建築に関する課程を修めて卒業した後、建築に関して3年以上の実務経験を有する者
- 短期大または高等専門学校において、建築に関する課程を修めて卒業した後、建築に関して4年以上の実務の経験を有する者※(3)に該当する者を除く
- 高等学校または中等教育学校において、建築に関する課程を修めて卒業した後、建築に関して、7年以上の実務経験を有する者
- 建築に関して11年以上の実務経験を有する者
- 特定化学物質等作業主任者技能講習を修了した者で、建築物石綿含有建材調査に関して5年以上の実務経験を有する者
- 建築行政に関して2年以上の実務の経験を有する者
- 環境行政(石綿の飛散の防止に関するものに限る。)に関して2年以上の実務経験を有する者
- 第一種作業環境測定士または第二種作業環境測定士であって、建築物石綿含有建材調査に関して5年以上の実務経験を有する者
- 労働基準監督官として2年以上その職務に従事した経験を有する者
- 労働安全衛生法第93条第1項の産業安全専門官もしくは労働衛生専門官または同項の産業安全専門官もしくは労働衛生専門官であった者
建築物石綿含有建材調査者講習は厚生労働省より、登録講習機関一覧が出ているため参考にしてください。
直接罰の内容は
改正後は作業基準の違反者に対し、3か月以下の懲役または30万円以下の罰金(直接罰)が課され、対象者は元請事業者のみならず下請事業者も直接罰の対象となります。
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