「あと施工アンカー」とは?

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「あと施工アンカー」とは?

【コラム 1級建築士による建設アラカルト】【独学1級建築士 nandskさん】



建築工事におけるリフォームや改修の割合が増えるにしたがって、「あと施工アンカー」を使う機会が増えてきています。今回はそんな「あと施工アンカー」について、紹介していきます。



明治45年、「膨張締釘」の名称で特許出願されていました

通常、アンカーボルトなどの建物の部材と部材をつなぐ金物は、コンクリート打設時に埋めこんで施工します。ですが、すでに建っている建物の場合は今から金物を設置することができず、壁や梁を新たに増やす場合に、既存躯体とどう接合させるのか課題が残ります。

そんな時に活躍するのが「あと施工アンカー」です。
既存のコンクリートに穴を開けて、接着剤と一緒にアンカーを入れて固定することで金物を設置できるというものです。つまり、「あと施工アンカー」とは字のごとく、あとから施工できるアンカーということなんです。

「あと施工アンカー」の歴史は意外と古く、なんと明治45年に「膨張締釘」という名称で特許出願されたものが起源です。それだけ改修工事での需要は昔からあったという事ですね。

今では種類も多く、アンカーを打ち込み後に内部で先端が膨張して固定される打ち込み法式の金属系アンカーやねじ式の締め付け式金属系アンカー、接着剤のカプセルを穴に入れてからアンカーを入れて接着剤で固定する接着系アンカーなど多岐に渡ります。


「あと施工アンカー」 設計や施工上の注意点とは?

「あと施工アンカー」はその特性上、ほぼ改修工事でしか使われることは無く、設計上や施工上の注意点もあります。

まず、構造的に「あと施工アンカー」が使用できるところは限られているという点です。
「あと施工アンカー」は建築基準法の指定建築材料には含まれておらず、建築物の主要構造部には使用することができません。ただし、耐震改修などの場合は、既存建築物への使用は不可欠であり、耐震改修促進法や各種指針などで使用が認められています。改修工事で好きに使えるというものでは無いので注意が必要です。

それから、施工時には細心の注意が必要です。
既存躯体に穴を開けることになるため、既存への影響や、アンカーがしっかりと定着することを確認する必要があります。実際に既存コンクリートのジャンカなどが原因であと施工アンカーが狙った場所に設置できないと言ったケースもあります。
施工後はしっかりと引っ張り試験を行ったり、施工時には埋め込み長さの確保や接着剤が溢れていることを確認したりすることが重要です。


改修工事の需要増に伴い、使用する機会が増えてきた「あと施工アンカー」ですが、正しい使用方法で安全に使っていきましょう。



今回のコラムは【独学1級建築士 nandskさん】

独学により1級建築士に合格。住宅やアパートの設計・工事監理、特殊建築物の維持管理、公共施設の工事設計・監督の経験あり。2級、1級建築士試験受験者へのアドバイスも行っている。『建築の楽しさを多くの人に知ってもらいたい』と話す

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