防水工事の効果を最大化するために設計者・施工者・メーカーそれぞれが考えたいこと

【Written by 独学一級建築士 nandskさん】
近年、防水工事を取り巻く環境は大きく変わってきていると感じます。
その理由は大きく2つあり、1つは外的要因、すなわち自然環境の変化です。以前はほとんどなかったゲリラ豪雨など災害級の大雨や超大型台風が頻発するようになり、防水対策がますます重要視されているほか、真夏の高温なども防水性能に影響を与えています。
もう1つの理由は顧客ニーズの高まり。こちらは、従来は「雨をしのげればよい」という程度だった防水へのニーズが、断熱効果を求めたり、15年保証など改修スパンを延ばしたり、様々な要望が増えています。
こうした変化に対応するために、今回は防水工事に携わる人が“それぞれの立場でやれること”を考えていきましょう。
【設計者】将来の改修工事を見越した当初設計が重要
まずは、設計者です。建物の形状を決め、防水・排水計画を立て、防水材の選定も行います。
デザイン性に富んだ建物もいいですが、複雑な形状は防水工事を難しくし、施工性や防水品質の低下を招きかねません。また、雨仕舞(雨水の処理方法)をしっかり考慮しないと部分的な劣化につながり、防水寿命を低下させてしまいます。
それから、将来必ずやってくる防水改修工事を見越して、当初設計をすることも重要です。ドレン(排水口)を設けるなど排水計画に余裕を持っておく、また「重ね防水(既存の防水層の上から新しい防水層を施工する工法)」を前提とした納まりに設計しておくといいでしょう。
【施工者】丁寧な施工で防水材の性能を最大限に発揮
次は施工者についてですが、元請・下請ともに防水工事の重要性を理解し、丁寧な施工をするのが第一です。
例えば、「防水層のベースとなる下地を丁寧に整える」「雨天時はもちろん、雨天後の施工は十分に注意して行う」「メーカーの指定した工法をしっかり守る」など、どれも当たり前のことですがとても大切です。
温度・湿度の管理をしっかりと行い、下地が浸水しないように仮防水も丁寧に施工することで、防水材の性能を最大限に発揮することができます。施工時はこうした点を徹底して行いましょう。
【メーカー】正しい施工方法を伝える研修会に期待
最後に、防水材のメーカーです。
日本では施工性や費用などに応じた様々な防水材が開発されており、防水工事の質は世界でもトップレベルです。しかし、前述したように正しい施工方法でないと性能を最大限に発揮することができません。
施工方法を伝えるメーカー研修などはぜひ今後もどんどん開催していただきたいですね。また、顧客ニーズに応えられる長期保証にも期待したいところです。
まとめ
猛暑やゲリラ豪雨の頻発化、断熱性能向上や長期保証のニーズなど、防水工事を取り巻く様々な環境の変化に対応していくためには、防水工事に携わる関係各者の努力が必要です。
「雨を防げる」という最低限の条件を満たすことはもちろん、加えて、それ以上の性能・効果を発揮する防水工事を今後も期待したいですね。
著者:独学一級建築士 nandsk
独学により一級建築士に合格。住宅やアパートの設計・工事監理、特殊建築物の維持管理、公共施設の工事設計・監督の経験あり。二級、一級建築士試験受験者へのアドバイスも行っている。『建築の楽しさを多くの人に知ってもらいたい』と話す。
