鉄骨工場のグレードの違いとは?
鉄骨工場のグレードの違いとは?
【コラム 1級建築士による建設アラカルト】【独学1級建築士 nandskさん】
鉄骨工事をしていると、鉄骨工場のグレードについて記載されている図面や資料を見る機会が多いですよね。工事施工者の立場からすると、どのグレードの工場に発注するか選ぶ必要がありますし、仕様書で規定されていれば規定のグレードの工場に鉄骨を発注しないといけません。今回はそんな鉄骨工場のグレードの違いについて解説します。
まず、鉄骨工場のグレードとは、Jグレード、Rグレード、Mグレード、Hグレード、Sグレードの5つのグレードがあります。
Jが一番低く、Sが一番高いグレードです。これらのグレードは国土交通大臣が認定を行っており、管理者の配置、社内基準の内容、製造設備や実績などを元にグレードが決められます。
グレードによる特徴を知っておきましょう
例えば、Sグレードの工場はBOX柱を製造する設備が必須となっており、大型部材が必要となる超高層建築物の鉄骨を制作するのに適した工場です。
逆に、Sグレードであっても、工場の設備によっては小規模な鉄骨製作が難しかったり、費用対効果が悪いこともあるので、グレードが高いイコール良いとも限らないんですね。グレードにより特徴があることを覚えておきましょう。
鉄骨工場のグレードによる適用範囲の違いにも注意を
次に鉄骨工場のグレードによる適用範囲の違いを見ていきましょう。まず、建築物の規模による適用範囲の違いです。
グレードM、H、Sは制限はありませんが、グレードRの場合は5階以下、かつ延床面積3000㎡以下、高さ20m以下という制限があります。グレードJになるとさらに厳しく、3階以下、かつ延床面積500㎡以下、高さ13m以下、軒高10m以下という制限があります。
鋼材の種類や板厚についても制限があり、グレードJは400Nの16mm以下、グレードRは400N、490Nの25mm以下、グレードMは400N、490Nの40mm以下。グレードHは400N、490N、520Nの60mm以下でグレードSは制限無しです。
他にも、開先の加工方法に関する制限もあります。このように鉄骨工場のグレードの違いにより使用できる建物の規模や鋼材の種類に違いがあるので、注意しましょう。
最後に、全国にある各グレードの鉄骨工場の数をお知らせします。
数年前のデータですので、概ねの数になりますが、グレードJは71、グレードRは726、グレードMは964、グレードHは344、グレードSは19となっています。グレードJやSは工場の数が少なく、私自身、これらの鉄骨工場での製作に立ち会ったことはありません。
もし、これらの鉄骨工場での製作を検討しているのであれば、日程調整や現場への搬入経路などは早めに調べた方がいいかもしれません。
グレード | J | R | M | H | S |
適用範囲 | 3階以下 | 5階以下 | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
500㎡以内 | 3000㎡以内 | ||||
高さ13m 軒高10m以下 |
高さ20m以下 | ||||
鋼材の種類 | 400N | 400N、490N | 400N、490N | 400N、490N、520N | |
最大板厚 | 16mm | 25mm | 40mm | 60mm | |
工場数 | 71 | 726 | 964 | 344 | 19 |
今回のコラムは【独学1級建築士 nandskさん】
独学により1級建築士に合格。住宅やアパートの設計・工事監理、特殊建築物の維持管理、公共施設の工事設計・監督の経験あり。2級、1級建築士試験受験者へのアドバイスも行っている。『建築の楽しさを多くの人に知ってもらいたい』と話す