建築基準法とその解釈① 建築物とは

コラム

建築基準法とその解釈① 建築物とは

【コラム 1級建築士による建設アラカルト】【独学1級建築士 nandskさん】



今回は今までで一番実務的なコラムかもしれません。

建物を建てる時に最も重要になる建築基準法(以下法)。
とても複雑で、一部からは欠陥法令とも言われているんですが、大災害や耐震偽装などの問題が出るたびに改正を繰り返し、太陽光パネルなどの新技術の発展に合わせて修正を繰り返してきているので、さらに複雑さが増しています。一級建築士の私自身も隅々まで説明できるようなものではありませんし、多くの建築士は実務で自分が使う部分くらいしかまともに理解していないでしょう。

そんな法令ですから、解釈についても実は分かれている部分があり、法令検査をする部署や下手したら人によってOKになったりNGになったりするから設計者は余計に振り回されることになります。
かくいう私も以前は行政として建築指導に携わり審査をしていましたが、法の解釈は非常に難しく、国も明確に説明していない部分があり、現場の判断に任せている節があるため、辛い立場でした。
前置きが長くなりましたが、そんな法令の解釈について何回かの連載で説明していきます。



まずは、建築基準法が取り扱う大前提の「建築物」について。
法2条によれば建築物とは、土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの、と書かれています。土地に定着していること、屋根+柱または屋根+壁があることが条件となっています。
なるほど、私たちが建築物として想像する建物は、だいたい建築物ではありそうです。では、そのボーダーはどうでしょうか。

例えば、学校の運動会などで出すテント。
組み立て式の白い幕屋根のテントですが、屋根+柱はありますね。土地に定着しているかどうかは疑問が残りますが、そもそも定着とは?
疑問を解消するために各団体が解説本なんかも出しているのでそれを参考にするといいと思いますが、解釈はやはり分かれるところです。私自身の経験から言うと、テントの設営が誰でも簡単にできるものかどうか、設営期間が数日かどうか、が判断の分かれ目かと思っています。

似たような事例で海の家はどうでしょうか?
当然、海の家の構造にもよるので、例えば屋根が無い囲いだけのものや椅子とテーブルをビーチに並べただけでは建築物には該当しないでしょう。
そうでは無いものについては、たとえひと夏のものであっても建築物として判断している事例が多いようです。湘南などのビーチを多数抱える神奈川県などがガイドライン等を出していたりします。

他にも、最近流行りのトレーラーハウスやケータリングカー、コンテナを利用した店舗や停泊した船を利用したレストランなど、建築物なのかどうかの判断に迷うものは多数あります。
法律と言っても万能ではないので、その都度判断していくことになるので設計者は大変ですが、考えてみるのも面白いかもしれませんね。

次回は、また別の条文について解釈が分かれる点を解説していきます。



今回のコラムは【独学1級建築士 nandskさん】

独学により1級建築士に合格。住宅やアパートの設計・工事監理、特殊建築物の維持管理、公共施設の工事設計・監督の経験あり。2級、1級建築士試験受験者へのアドバイスも行っている。『建築の楽しさを多くの人に知ってもらいたい』と話す

関連するBLOG

TOP