現場ノウハウ

第1回:新卒最初の壁!戸惑う業界用語 ~「掛矢」って何?【若手社員向け建設業界の豆知識】

新卒や転職によって初めて建設業界に飛び込んできた人たちが戸惑うもののひとつ、これが『業界用語』です。

自分が建設業界に入った当時を思い出してみる、というよりも忘れようにも忘れられない思い出の品が存在します。それは、ある道具でした。上司にその呼称を言われたのですが、それが何なのかどうしてもわからなかったのです。

知らないこと、わからないことは「その場で解決する」ことが大事

恥ずかしながら告白します。

建設会社に入社してから2カ月目でした。現場の中を探し回った記憶があります。

上司に「○○を取ってきてくれ」と言われ、「はい、わかりました!」と元気よく返事はしたものの…

直後に「ヤバい、わからない。なんだっけ?どれだっけ?」
結果、どうにもわからず教えてもらうことになったのですが、その道具とは?

そうそう、あれ、あれですよ!あなたも現場でよく使いませんか?

「掛矢(かけや)」です。

ご存じだと思います。これ、構造物の位置や高さなどを決める「丁張り掛け」には欠かせない大型の木槌ですね。
この掛矢、業界外の人に聞いてみると3人に2人くらいは知らないようです。

話を戻しますが、このときは後々、この掛矢という道具と長い付き合いになるなど思ってもいませんでした。
“大きめの木槌(あるいは小槌)”と言ってくれって感じですね。“木製のハンマー”のほうがわかりやすいかもです。
初めから聞けばよかったのにという思い出ですが、以来、掛矢は未だ身近にある道具として存在しています。

この件で学んだことは、

知らないことを恥じてはいけない。
知らないことを知った風にしてはいけない。
知らないことを放置してはいけない。
わからないことはわかるようにする。
わからないのにわかった風にふるまってはいけない。
わからないことを放置してはいけない。

知らないこと、わからないことは「その場で解決する」ことです。

それ以降も業界用語は次から次へと出てきました。
一輪車はネコって呼ぶし、犬走りってなに? ネコちゃん?ワンちゃん?
なんだかユニークな業界だな、なんて感じたりしました。

ほかにもさまざまな用語が存在するこの業界ですが、そうした業界用語が多いほど、あらゆるライフラインを担っている、建設業の市場の大きさにあらためて気づくのです。
同時に、以前からあまりいいイメージを持たれない空気のある建設業界ですが、個人的には“ものづくりニッポン”の最たる仕事であると自信を持って言えます。

一般の方にイメージを聞いてみると、やはりうわべの印象でマイナスに思われていることがほとんど。専門性や技術性の高さは認知されていません。

ただ、少しでも興味のある人は結構、熱心に話を聞いてくれて『あぁ、そうなのか』『知らなかった』『えぇ!すごい仕事だな』とか、反応してくれます。

自分で描くイメージは“良いイメージ”にして描きがちですが、ほかから受動的に感じるイメージには良いものも悪いものもあります。
仮に“良くないイメージ”に受け取ってしまうと、それがすべてを覆ってしまい、そのイメージだけが判断基準になってしまうのです。

私が定義する建設業界の3Kは『考える・感じる・気づく』

3Kなんて言葉もありますが、それもイメージが先行しているといえます。
『きつい・汚い・危険』の意味ですが、あえて自分が建設業界の3Kを定義するとしたら『考える・感じる・気づく』です。

それは、建設現場ではこの繰り返しだから。

現状、建設現場ではIT化などさまざまな取り組みがなされていて、イメージも以前とは違うはず。
とはいえ、一番に願うのは、この「“ものづくり”の世界観を感じたい!」という人が飛び込んできてくれることです。

デジタル化が進み、先の未来はAIが仕事をするとか、いろいろいわれています。
機械や工具も楽で利便性のいいものがたくさん出てきていますが、最終的にそれらを扱うのは人の手です。

人の手でできないものは機械などに任せるとしても、人の手じゃないとできないものは残りますし、アナログは古いという一言で片づけられるものではないと考えます。

三十数年前に「掛矢」という道具がわからず、右往左往した自分を思い起こしてみたとき、まだ見ぬ未来であった現在も、その「掛矢」は欠かせない道具として存在している。そのことが意味するところではないかと実感しています。

業界用語として土木用語も建築用語も多数ありますが、共通するものもあれば、それぞれ独自のものもあります。
長くこの業界にいても知らない用語が存在します。知ろうとしなければいつまでも知らないままです。調べてみると、意外に楽しいものです。

思うのは、知らないということは寂しい。そして知ったかぶりをするとむなしい。

新卒や転職で建設業界に入ったばかりの方が知らない、わからないのは当たり前です。だからこそ、周りは丁寧に伝える必要があります。
知ってもらえればコミュニケーションもとれますし、自分の再認識にもなります。

“ものづくり”建設業界は、技術が重要なのは言うまでもありません。また、今回お話ししたように、技術に加えて用語や言葉も必要です。

これらを次世代に伝えていくのも、我々の責務ではないかと考えます。

作者紹介 りゅう坊さん

作者紹介 りゅう坊さん

関西在住。1級土木施工管理技士。中堅ゼネコンで土木工事現場監督35年の経歴を持つ。
現在も請負で施工管理業務のほか土木建設工事のお悩み相談、管理書類の作成補助を行うなど、趣味のDIYと合わせて人生を謳歌中。自身のブログ『りゅう坊の楽楽ブログ』では、サラリーマン時代の経験をもとに人生、人間関係について考察中。また、ウッドデッキのつくり方やネットビジネスの始め方などの無形商品(コンテンツ)の作成・販売にも対応している。

◆りゅう坊さんのブログ:DIYとWorkを簡単に! りゅう坊の楽楽ブログ

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