建築士が街を歩く③

コラム

建築士が街を歩く③

【コラム 1級建築士による建設アラカルト】【独学1級建築士 nandskさん】



建築家がまちを歩く際にどういったことを考えているのか。第三回の今回は都市部の街歩きについてお話します。
都心の高層ビル群やおしゃれなスポットなどは普通に歩いていても楽しいものですよね。そこにはどんな建築的視点があるのでしょうか。



都市部の街歩き、高層ビルを建てるために利用する制度とは?

まずはひときわ目を引く高層ビルに注目してみましょう。建物の高さは様々な法的規制で定められています。絶対高さ制限や道路斜線制限、日影規制、容積率などが有名ですが、どんなに条件のよい場所であってもせいぜい50mくらいの建物を建てるのが限度です。
では、それよりも高い建物はどうやって建てているのでしょうか?

実は、こういった法規制を緩和できる制度があるんです。
総合設計制度や高度利用地区といった制度で、建物の周囲に空地を確保し、公共性の高い取り組みを行うことで通常よりも高い建物が建てられます。高い建物を建てても需要が無ければ意味が無いので、タワーマンションの需要などが高い都心部でこういった制度が利用されています。

例えば、六本木ヒルズなどはビルの足元に空地となる公園があり、公共的な取り組みとして地下鉄出入口を併設していたり災害時に周辺小建物へ電力を供給できるようになっています。そして、ビルの入り口にはしっかりとそういった制度を利用して建っていることを証明する看板が設置されているんです。
公共的な取り組みも地域によって様々でちょっと郊外であれば、駅前のタワーマンションに行政の出張所などが入る例が多かったりします。高いビルがあったらこういった点に着目してみると面白いかもしれません。


古くからある街並み、風情を感じる一方で安全性視点からは。。。

再開発に代表される高層ビルの次は古くからある街並みに目を向けてみるのも面白いです。
建築基準法が整備される以前やまだまだ法規制が緩かった時代に建てられた雑多な建物たち。隣のビルとの距離も近く、ギュウギュウに密集した建物は、これはこれで都心部ならではの光景。木条住宅密集地域と呼ばれる住宅街やハーモニカ横丁などと呼ばれる飲み屋街などは細い路地が迷路のように入り組んでおり、歩くだけでもワクワクすることでしょう。
しかし視点を変えれば危険な地域でもあり、行政は解消に向けて取り組んでいる地域でもあります。

古い建物で耐震性は低く、火災時には細い路地が消火や避難活動を妨げます。個人的には雑多な雰囲気が好きでもありますが、安全性からきれいに再開発されてしまうのはしょうがないのかもしれません。


都心部の街歩きは、今回紹介した以外にも鉄道とまちの関係やかつての運河とまちの関係、人の入れ替わりも激しいことから地域の人々の営みとまちの関係など注目すると面白い点が多いです。ショッピングやグルメを楽しむついでに、まち事態にも目を向けてみると興味深い発見があるかもしれませんよ。



今回のコラムは【独学1級建築士 nandskさん】

独学により1級建築士に合格。住宅やアパートの設計・工事監理、特殊建築物の維持管理、公共施設の工事設計・監督の経験あり。2級、1級建築士試験受験者へのアドバイスも行っている。『建築の楽しさを多くの人に知ってもらいたい』と話す

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