グルメ司法書士・梅先生のチョコっと舌鼓と司法相談アルアル【第1回】

司法書士コラム

グルメ司法書士・梅先生の
チョコっと舌鼓と司法相談アルアル





司法書士、梅本先生による連載第2弾。
東京都内のランチが美味しいお店を紹介しながら身近な司法書士への相談アルアルを会話形式でやさしく解説していただきます。

今日のランチの舞台は、「室町砂場 赤坂店」
明治2年創業、「天ざる」発祥の店と言われ、蕎麦好きにはたまらない名店中の名店。
いつも最後は夢心地の梅先生。土曜日のランチタイム。果たしてどんなお話になるのか。お楽しみに!




・梅先生
梅先生新宿区四谷で業歴約30年の司法書士
趣味は、神輿担ぎと草野球。どちらも終われば潰れるまでの酒盛り
お酒が大好きだけど、呑むと直ぐに寝てしまう、昭和生れの頑固オジサン

・ノリスケ君
梅先生の執筆を担当して3年目の編集者
自称グルメの大食漢。守備範囲は和洋中のオールマイティー




住宅ローン完済時に注意が必要!抹消登記は自分でする(前編)



ピンポーン!


先生、お久しぶりです。元気にしていましたか?




やあ、久しぶりだね。元気にしていたよ。ところで、今日はどうしたんだい?




実は、僕の友人がめでたく住宅ローンを完済したんですよ。住宅購入時は僕も新居に招待されて、引越蕎麦をごちそうになったんですよ。




へえー、昔は引越蕎麦の風習があったからね。




それでね、先生!今日は「住宅ローンを完済した時に注意が必要な登記のこと」を教えて欲しいなと思って来たんですよ。




なるほど。ちょうど、お昼ご飯の時間だから、蕎麦でも手繰りながら話をしようか?




待ってました!赤坂に美味しいお店があるんです。お供いたします!





今日のメニュー
住宅ローン完済時に注意が必要!抹消登記は自分でする」(前編)



今日の舞台 ~室町砂場 赤坂店~

① 住宅ローンを完済したら、必ず抹消登記をしましょう
  ・完済時に「抵当権抹消登記」を忘れないこと

② 抹消登記をする人は債務者ではなく、所有者です

③ 抹消登記の前に所有者の相続、住所移転、氏名変更登記が必要です(※ 後編で解説)



今日の舞台 ~室町砂場 赤坂店~


室町砂場 赤坂店(地下鉄千代田線 赤坂駅 6番出口 徒歩2分)

お店に到着しました。予約を受けない店なので、混んでいる時間帯は、どんなに寒い冬でも外で行列待ちするそうですよ。都市伝説かもしれませんが、鳩山元総理大臣夫妻も並んで待っていたとの話もあるくらいですから。



行列の上に小さな看板がみえます。行列の最後尾に並んでおきましょう。最前列まで来て、次は自分が呼ばれると思うとワクワクします。中には小上がりと机がありますが、どちらが良いか聞かれるけど、皆さん、「どちらでも」と返事する方が多いようです。早く食べたいからかな!



確かに少し並んで待ったけど、なんとか入れたね。何を食べようか。




土曜日の休日ですから、まずはお酒。菊政宗のぬる燗を頼みましょう!
酒菜(あて)のメインは、卵焼と焼鳥(タレ)にしましょう。少し時間がかかるんで、先に頼んでおくのがコツです。モズクと蕎麦がきも頼みましょう。これは早いから、メインまでの繋ぎになります。





お酒と一緒にアサリの付出しがありました。これだけで1本呑めます。
モズクでお口の中をさっぱり。 卵焼はそばつゆが出汁なのかな?口の中に卵の旨味が広がります。フワフワで、この甘味、出汁がお蕎麦を誘う感じ、好きだな~。



蕎麦がきは、モチモチ!次の蕎麦までの最高の繋ぎですね。



焼鳥にはタレと塩があります。今回はタレで頂きます!鶏肉自体が美味しいのにビックリ。焼いたネギが香ばしい。



これは美味しい組み合わせだね。ぬる燗の酒がベストチョイスだね。



蕎麦はもう少し呑んでから頼みましょう!僕の好きな特別な頼み方があるんですよ!その間に、住宅ローンの完済と抵当権について少し話をしてくれませんか。




そうだった(笑)。その話のために来たのだったね。




①住宅ローンを完済したら、必ず抹消登記をしましょう





住宅を買う時に、金融機関からお金を借り入れたよね。この借入金の事を一般に住宅ローンと呼ぶんだけど、借入の条件として担保権が設定されるんだ。それが、購入した住宅に設定する抵当権だね。




返済計画通りに返済が完了すれば、抵当権は消滅します。

もしも住宅ローンが返せなかった時には、債権者の金融機関は抵当権に基づいて裁判所に競売申立てをして、競売手続の中で住宅を売却して、売却代金から債権者が貸金の返済を受けるというシステムになります。



なるほど。完済ができればそのまま生活を継続できるけど、もしも返済ができなくなったら、大切な住宅を手放さなくちゃならないのですね。ちょっと怖い話ですね。




もちろん怖い話さ。だから、借入の時には年収・仕事・様々なことを考慮して「返済ができるはず」と予測の元で貸してもらうんだ。無事に完済できる事が大前提になっているのだけど、最近は会社の倒産とか予想外の不安要素はがあるから、借り過ぎには注意が必要だよね。




僕も、もうすぐ住宅ローンを返済できそうなんですけど、登記をどうしたら良いのか全く分からないので、登記の話をもう少しお願いできますか?




OK。お酒がなくなったみたいだから、ぬる燗をもう1本頼んでもらえるかな。




喜んで!すいませ~ん、お姐さん、お酒を同じ物1本、お願いします!




完済時に「抵当権抹消登記」を忘れないこと





住宅ローンの完済をした時には、必ず「抵当権抹消登記」をしてね。




抵当権抹消登記というのは、住宅ローンを借りた時に登記簿に記載されている抵当権を、登記簿から消す手続きの事です。

通常は借入の手続きをした金融機関の窓口で完済時に説明してくれるのですが、場合によっては、自宅に抹消登記に必要な書類だけが送られてくることもあります。

その時には、「自分で」又は「司法書士に相談」して、必ず抵当権の抹消手続きをしてくださいね。金融機関が先に抹消してくれている事はありませんからね。



登記簿というのがよくわからないのですけど、、




そうだよね。ご自分の家の登記簿謄本を見る機会はあまりないよね。おそらく、住宅の購入時に権利証と一緒に渡されているはずなんだけど、権利証だって袋から出した事もないという人がたくさんいるくらいだから、ましてや登記簿謄本なんて見ないよね。



では、抵当権の抹消登記を話す前提として、不動産の登記簿の全体のイメージを説明しましょう。

登記簿を見ると、【表題部】と【権利部】の2つに分かれています。
【表題部】:ページの最初に記載されている部分。この不動産の「所在地・構造・大きさ等」が記載。
【権利部】:表題部の次の欄に記載されている。「誰の・どんな権利」が記載。

権利部は、さらに(甲区)と(乙区)に分かれています。
(甲区):「誰の所有物なのか」が記載。
(乙区):抵当権のように所有権を制限する「担保権等」が記載。

ノリスケ君が住宅を買った時は、その建物の登記簿の【甲区】にノリスケ君が所有者ですと登記されて住宅ローンを借りたので、【乙区】にノリスケ君がお金を借りて抵当権が付いていますよ、と登記されています。




住宅を買った時のローンの事が、抵当権で登記されているのですね?確かに金融機関から抵当権の話は説明されたような気がするけど、返済の事ばかりに気が取られていて、抵当権の事は忘れていました。




そうなんだよね。住宅ロ-ンの場合は何年も前の事だから、最初に抵当権の説明を受けていたとしても、今まで覚えている事は難しいよね。




そういえば、僕も「まだ先の話ですけど、完済した時の抵当権の抹消はどうしますか?」と金融機関から聞かれました。「抵当権って何だっけ?」と聞き返したおかげで、初めて抹消登記が必要だと知ったのです。




気がついて良かったね。




権利としての抵当権自体は完済によって自動的に消滅するのだけど(付従性)、登記としての抵当権は自動的には抹消されないのです。

十数年前に完済したのに抵当権が消えていないとか、書類はもらったけどそのまま放置している間に紛失したとかいうの相談者の方がたくさんいらっしゃいます。



抵当権は金融機関が抹消しておいてくれないのですか?




共同申請と言って、抵当権者と設定者の両方が協力して抹消するシステムなんだ。だから、金融機関が勝手に抹消して「抹消しておきましたよ」という事はないんだ。




なるほど。住宅ローンは完済した後も、抹消登記という次の仕事があるんですね。




②抹消登記をする人は債務者ではなく、所有者です





ところで、借入金の返済をする当事者は「債務者」ですよね。抵当権の設定費用も、債務者が払っていますよね。それならば、抵当権の抹消登記の当時者も債務者で良いのですよね?




それが違うんだよ。抵当権の抹消登記は「共同申請」と言って、「抵当権を消して欲しい人」と「抵当権を消される人」の2当事者の合意で行うんだ。




「抵当権を消して欲しい人」は債務者だと思いがちですが、正確には債務者ではなく「所有者等」なのです。

ついでに言えば「抵当権を消される人」は、債権者ではなくて「抵当権者」です。


どう違うのですか?




例えば、息子がお金を借りるために、お父さんの土地を担保にしたとしよう。返済をするのは債務者の息子だけど、抵当権を抹消して欲しい人は、土地の所有者のお父さんだよね。だから、抵当権の抹消当事者は息子ではなくてお父さんになるんだ。




なるほど、確かに。




逆に住宅ローンで多いパターンですが、金融機関からお金を借りたのでその金融機関に返済をしていたけれど、抵当権者は保険会社という事もあります。

その場合は、抹消の相手方当時者は金融機関ではなくて抵当権者の保険会社になるのです。 知らない会社が自分の抵当権者になっている事もあるということです。



借入の最初に説明を受けているはずだから、知らない事はないはずなんだけど、その仕組みは難しいから覚えてはいなくても不思議ではないね。






前編はここまで!

後編では、抹消登記の前に必要な「所有者の相続・住所移転・氏名変更登記」について解説します。 美味しいお蕎麦の紹介もあるかも?


▶後編「③抹消登記の前に所有者の相続、住所移転、氏名変更登記が必要です。」お楽しみに!

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