変わる建築士試験と勉強法

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変わる建築士試験と勉強法

【コラム 1級建築士による建設アラカルト】【独学1級建築士 nandskさん】



建築に携わる仕事をしているとどうしても付きまとうのが資格についてだ。
特に、建築士の資格は「足の裏の米粒」とも言われ、取っても食えないけど取らないと気持ち悪い、とさえ言われるほど持っているのが当たり前となっており、多くの人が取ってしまおうと毎年試験に挑戦している。

そんな建築士試験だが、近年は変わりつつある。受験生の減少により受験費用が入ってこなくなっており、試験の運営に問題が出ていたのであろう、受験生を増やす取り組みを行っている。

もっとも大きい変化は受験資格だろう。一級建築士試験は、以前は実務経験が2年間無いと受験できなかったのが、実務経験無しでも受験できるようになった(合格後に実務経験2年間を経て免許は交付される)。一級建築士試験は難易度の高い試験として有名であるが、受験資格に実務経験が必要な点に苦労する人が多い。
社会人になり、2年間の実務経験を経て3年目。仕事にも慣れ、プライベートも充実してくるころにやっと受験資格が得られるので、そこから勉強するのがとても大変なのだ。しかし、実務経験のないうちに受験できるようになったことで、学生時代に勉強して試験に合格することが可能になり、働きながら深夜まで勉強する必要がなくなるのは大きい。

それから現代社会に合わせて2021年度からは受験票をオンライン発行にしたりもしている。今後、製図試験についても手書きの製図ではなく、CADによる試験も検討しているようで、こちらもいずれは変わっていくのであろう。

もちろん、試験の内容についても変わってきている。これは社会的な問題に合わせて変わる部分が大きいように思う。どういうことかと言うと、姉歯事件と言われる耐震診断偽装事件の後や東洋ゴムによる免震ゴム偽装問題などの社会的に大きなトピックとなった事件の後にはそういった事件を防止できるように、対応する問題が増えたりしている。

このように、時代に合わせて変わっていく建築士試験。当然、勉強法も対応していかないと合格は遠のいてしまう。
実務経験無しでも受験できるように変わったことで現役の大学院生などの学生も受験できるようになったので、合格点は上がっていくことが予想される。働きながら勉強する社会人にとってはより一層勉強時間を捻出する必要がありそうだが、難しい場合は早めに勉強を開始するといいだろう。

特に法規に関しては一夜漬け的に進めるのが難しいので、年末からちょっとずつ勉強するのがおすすめだ。製図試験については記述の追加など、やはり試験内容に変化があるが、試験元は実務で建築に携わる人を合格させたいはずだ。予備校や参考書で得られた知識だけでなく、自分で考え、工夫した点を製図に落とし込めば合格が見えてくるだろう。

何十年も挑戦し続ける受験生がいる程の難しい試験である建築士試験。取っても食えないとは言われているが、やはり肩書としてあるのと無いのでは大きく違うだろう。しっかりと勉強して、ぜひ挑戦してもらいたい。



今回のコラムは【独学1級建築士 nandskさん】

独学により1級建築士に合格。住宅やアパートの設計・工事監理、特殊建築物の維持管理、公共施設の工事設計・監督の経験あり。2級、1級建築士試験受験者へのアドバイスも行っている。『建築の楽しさを多くの人に知ってもらいたい』と話す

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