住宅設計における設計士の役割を考えてみる
住宅設計における設計士の役割を考えてみる
【コラム 1級建築士による建設アラカルト】【独学1級建築士 nandskさん】
建築士として設計に携わっていると定期的に考えることがある。自宅の設計だ。
今回は、建築士が自宅の設計をする場合、どういったことを考えるのかを題材にして、住宅設計を行う時に設計士とどうやって付き合えばいいのか、設計士の役割といったものを考えてみたい。
まず、設計士の役割であるが、建築士法などに書かれている法的な役割はもちろんあるとして、一般的には施主の要望を設計図に落とし込んでいくことが住宅設計ではメインとなるだろう。
例えば、施主が「車が好きなので車と一緒に暮らせる家にしたい」と言えば、複数台の車を止められるスペースや雨やホコリから車を守るガレージ、しっかりと車のメンテナンスや改造を行える作業スペースの確保などを図面に落とし込んでいく。
私の場合はアウトドアが好きなので汚れた道具などを一時的に置くことができる土間の空間があると便利だろう。もちろん、土汚れなどを落とせる流し付きだ。
さらに、クローゼットも分けたい。普段使いのスーツなどとは別にアウトドア用の衣類を収納して置ける場所があると便利だ。冬のキャンプで使うダウンジャケットなどは頻繁に洗濯もできず、細かい汚れはどうしても残ってしまう。そんなダウンジャケットをワイシャツと一緒には並べたくない。
それからキッチンや洗面台の高さを高くしたい。我が家は家族みんな身長が高く、既製品のキッチンや洗面台だと若干低いのだ。おかげで洗面台で顔を洗う時は腰が痛くなってしまう。
我が家の話ばかりになってしまったが、こういったところまで気が利いた設計は実際にはなかなかできない。大手ハウスメーカーでは規格品から色や型を選ぶくらいの自由度しかないし、完全自由の設計事務所に依頼したとしても、忙しくてどこまで要望を伝えられるか…
ましてや、施主は建築の素人であることが多く、どこまで要望を聞いてもらえるのか、どうすればもっと快適な家になるのか、わからないだろう。先ほどの我が家の例で言えば、家族の身長に合わせてキッチンや洗面台の高さを変えるなんて、素人はまず考えない。逆に、施主との打ち合わせでこういったところに着目して、提案できるのができる設計士と言えるだろう。
できる設計士は打ち合わせでは仕事の話だけでなく、家族の話や趣味の話、将来の人生設計など、雑談のような話の中から、その人の人生に合った家を設計できるはずだ。
今回のコラムは【独学1級建築士 nandskさん】
独学により1級建築士に合格。住宅やアパートの設計・工事監理、特殊建築物の維持管理、公共施設の工事設計・監督の経験あり。2級、1級建築士試験受験者へのアドバイスも行っている。『建築の楽しさを多くの人に知ってもらいたい』と話す