建築と日本の法律
建築と日本の法律
【コラム 1級建築士による建設アラカルト】【独学1級建築士 nandskさん】
衣食住の住であり、身近なものである建築物。しかし、そんな建築物を取り巻く法律については意外と知られていないですよね。法律と聞くとなんだか難しそうですが、そんな建築にまつわる法律や制度について少しご紹介します。
建築関係の法律と言うと代表的なものは建築基準法でしょう。名前くらいは聞いたことがあるかと思います。
この法律の第一条には「建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする。」と書かれています。建物のことだけでなく敷地や設備についても書いてあるんです。
この建築基準法にはどんなことが書かれているのでしょうか。
敷地の話で言えば、建蔽率や容積率が決められています。例えば建蔽率50%の土地であれば、土地の半分の面積までしか建物を建てられません。容積率も同じようにその土地に建てられる最大の床の面積を定めるものです。
それから高さ制限。お隣さんの家に建物の影をあまり落とさないようにその土地に建てられる建物の高さが決められています。駅前などで同じくらいの高さのビルが並んでいるのは、どのビルも高さ制限のギリギリまで建てているからです。逆に、住宅街に高層マンションが建たないのも、この規制のおかげです。
構造や設備の分野も見て行きましょう。
様々なことが決められていますが、例えば階段。ものすごく急な階段にならないように、踏面(段の奥行)や蹴上(段の高さ)が決められています。
設備で言えばエレベーターのことや室内で一酸化炭素中毒にならないように換気設備を設置することなどが決められています。トイレやキッチンに換気扇があるのも、排水を下水に流すのも、火災報知器を設置するのも全部建築基準法で決められているからです。
このように建築基準法は私たちの生活に非常に密接した法律なんです。
建築基準法以外にも建物に関する法律はたくさんあります。
例えば都市計画法。各地域に用途地域を定め、先ほどの建蔽率や容積率、建てられる建物の用途などを決めています。都市計画法で商業地域に指定すれば大型デパートなどを建てられますし、第一種低層住居専用地域にすれば商業施設や工業施設は建てられず、高さも10m程度までしか建てられないようになります。
代表的なものはこの二つの法律ですが、他にも車椅子用のスロープに関する基準などを定めているバリアフリー法や建物の品質を確保するための品確法、火災時の消防隊の出入り口設置などを決めている消防法など、建築物に関する法律は非常に多岐にわたります。
法律と聞くとちょっと敬遠してしまいがちですが、生活に身近なことが書かれており、わかりやすい解説本などもあるので、少し勉強してみると面白いかもしれません。
今回のコラムは【独学1級建築士 nandskさん】
独学により1級建築士に合格。住宅やアパートの設計・工事監理、特殊建築物の維持管理、公共施設の工事設計・監督の経験あり。2級、1級建築士試験受験者へのアドバイスも行っている。『建築の楽しさを多くの人に知ってもらいたい』と話す