「事業承継」をカル~イ感じで勉強してみた NO.7

司法書士コラム

事業承継と廃業



梅本先生

事業承継は、多方面にわたる情報が混在していて難しいです。
家族信託を使えば、事業承継の段階で、あまり難しいことを考えなくても大丈夫みたいです。今回は、次のように考えてみました。





有限会社安土桃山のコン田ちゃん社長が、事業承継をしました。 あまり深く検討もせずに事業承継をしたので、少し心配になっています。

その上、事業承継か廃業かという話を聞いて心配は大きくなりました。

設立された中小企業のその後の10年間の存続率のデータを見ると、

1年後で40%(半分以上が消滅している)、5年後は15%(6社に1社しか残っていない)、そして10年後は5%(もはや存続している事が奇跡的のような数字)と言われています。


本日は、コン田ちゃん社長が心配している事業承継と廃業の関係について考えています。4人の話を聞いてみて下さい。



コン田ちゃんの心配ごとを聞いてみた



サル富

コン田ちゃん、なんか難しい顔をしているけど、どうしたの?また明智の光ちゃんを中国地方に派遣して勢力拡大を考えているのかな?



コン田

違うよ~。昔は若かったので光ちゃんに無理な仕事もお願いしたけど、今の明智の光ちゃんは僕の会社の重役さんだよ。そんな無理な仕事は頼まないよ。それに、また本能寺で怒られても困るしね。怖かったんだから~。

それはさておき、実は、僕が有限会社安土桃山の創始者で、社長をやっていることは知っているよね?



サル富

もちろんだよ。僕は今でこそ、有限会社太閤堂の社長をしているけど、若い時代には有限会社安土桃山で修業をして、それから独立したんだからね。



コン田

そうだったね、今は、タヌ川ちゃんも役員になって頑張ってくれているよ。それに、甲斐の武田地方にも支店が出せて、会社がとても順調なんだ。

それで、僕も高齢者の仲間入りをしてきたから、今のうちが良いと思って、息子の信忠に家督相続をさせて社長の椅子を譲ったんだよ。



イタチ

元気なうちに、若い信忠君に家督を譲ったのは、良い考えだったね。



コン田

そう思うでしょ?そうしたら、この前、週刊誌を見ていたら、息子に会社を譲ることを家督相続とは言わないで、「事業承継」というと書いてあったんだよ。



サル富

え?事業承継というの?だって、昔から家督を譲るというじゃない?



タヌ川

サル富ちゃん、家督相続の制度は、今の法律には存在しないんだよ。



サル富

え?そうだったのか。知らなかった(笑)



イタチ

それで、信忠君には、何と言って譲ったの?



コン田

頼むよ!…だけ。



イタチ

それだけなの?何かアドバイスとか、株を先に譲るとか、新社長を応援するための仕組みを作るとかの工夫はしていないの?



コン田

うん、頼むよ!と言っただけなの。だって、親子だからわかるでしょ?



タヌ川

親子だとはいえ、それでは信忠君も心細いね。



コン田

そうなんだよ。なんか心配そうな顔をしているんだよ。



そうでしょうね。何もしていないということは、コン田ちゃんが亡くなった後は相続が発生し、他にも相続人の兄弟がいるので、信忠君に必ず経営権が移転するとは限らないですからね。


事業承継とセットに考える自主廃業



コン田

その上、この前のNHKスペシャルの「大廃業時代」という番組を見ていたら、会社の「事業承継」が「廃業」と一緒に語られていたんだ。しかも、むしろ「廃業」がテーマだったから、僕もすごく心配になってね。

もちろん、この番組はすごく勉強になったんだよ。でも今回は、あまり深く考えないで信忠に事業承継してしまったから大丈夫だったのかな?と思うと胃が痛くてね。



サル富

それで、コン田ちゃんが難しい顔をしていたんだね。確かに信忠君は勤勉で賢明な人だけど、まだ若いし、社長業は初めてだから、本人も戸惑っているかもしれないね。



コン田

だから、あわてて事業承継を勉強してみたのさ。



サル富

さすが、コン田ちゃん!偉いね。



コン田

そうしたら、これが、勉強する事が膨大で、何が何やらサッパリわからないのさ。



イタチ

僕も仙台で、株式会社独眼竜の社長をやっているんだけど、もう69歳になるから、事業承継の話は他人事ではない切実な話だよね。



会社を続けて行くことは、従業員さんの生活を守ることになりますし、会社の社会的存在価値を考えれば、事業承継は社会的利益にも貢献することになるといえますからね。


イタチ

だから、少しだけ事業承継の本を読んだけど、株式譲渡とか、種類株式とか、M&Aとか、家族信託とか、なんだか認知症も関係しているみたいで、話が難しくて整理ができないんだよ。



コン田

難しい専門的な事は後で勉強するとして、とりあえず、サワリだけをかる~く撫でるだけみたいに話をしてくれる人が、どこかにいないかな~。



サル富

勉強もしていて、経験もある人だよね~。あっ!いるよ!



イタチ

あ~、そうだね。!いるいる。タヌ川ちゃんだよね。だって、タヌ川ちゃんが創立した株式会社江戸っ子は、社長が15代目まで続いたんだからね。



タヌ川

見つかっちゃったか!(笑)そうだね。タヌ川家の株式会社江戸っ子は、確かに15代社長の慶喜まで事業を承継させてもらえたよ。



サル富

その秘訣は何なの?



その秘訣は、タヌ川ちゃんは認知症対策をしてあったからです。

ところで、みんなは認知症のことを知っているのでしょうか。


コン田

認知症は最近、話題になっているよね。どうやら、高齢者になるとかなりの高い確率でかかるみたいだね。

でも、認知症にかかる前にどうしたら良いのかは知らないんだ。



タヌ川

僕は、「認知症」と「事業承継」には関係があると考えているんだ。だから、事業承継の話の前提として、認知症対策の話をしたいな。



あまり話を広げてしまうと分からなくなるので、 コン田ちゃんみたいに、社長さんが1人で100%の株を持っている場合を想定して事業承継の話をしていきます。


事業承継を自動車に例えてみた



タヌ川

さっき、コン田ちゃんが事業承継と廃業の話をしていたよね。



コン田

そうそう。テレビ番組のことだよね。廃業をテーマに番組が進んでいたのだけど、事業承継を考える時に、廃業がどのように関係するのか分からないのだけど。



タヌ川

じゃあ、みんなに、高齢者で激しいめまいがしたと、思ってもらおうかな。



サル富

あれ?僕は本当に時々めまいがするけど大丈夫かな(笑)



タヌ川

みんな自動車は運転するよね?そこで、無理やりだけど、事業承継を自動車の運転に例えてみるよ。次の図を見てね。





タヌ川

例えば、サル富ちゃんが、運転中に激しいめまいに襲われた時に、運転を続けますか?という問題なんだ。

もしも、運転免許証を持っている子供が助手席に乗っていた場合、運転を代わってもらうかな?仮に子供が免許とりたてだったとしたらどうかな?



サル富

そうだなあ~。めまいがしている僕が運転を続けるよりは、誰かに運転を代わってもらった方が安全だと思うね。しかも今、子どもが助手席にいるのなら、すぐにでも運転を代わってもらえるからね。



仮に子供が免許のとりたてだとしても、免許があれば、運転技術はあるはずだから、問題があるとしたら、道が分からない点でしょうか。

でも、それなら隣に座って道案内ができれば、何とか目的地までは行くことができますね。


タヌ川

例では、コン田ちゃんに聞くよ。コン田ちゃんは無理をしてでも自分で運転を続けたいかな?



コン田

めまいなら治してみせようホトトギス!なんてね。

めまいがしている以上、そのまま運転を継続していると、場合によっては、意識を喪失したり、めまいが脳梗塞の兆候だったりしたら、命が危ない事になりかねないね(②)。そうしたら、事故を起こす危険性はかなり高いよね(④)。人も自動車も危険だね。



タヌ川

そうだよね。じゃあイタチちゃんならどうする?



イタチ

僕なら、運転をあきらめて、路肩に自動車を止めて、自動車を降りてしばらく安静にしているね。場合によっては、自動車を置いたままにして電車で帰るよ(③)。そうしたら、人も自動車も無事だしね。



タヌ川

そうだよね。それでは、めまいじゃなくて、自動車のエンジントラブルが発生して自動車が動かなくなったらどうする?



コン田

それは、運転者の問題ではないよね。自動車の物理的問題だから、運転を止めて、自動車自体の点検や修理をするよ。



イタチ

自動車を修理さえしておけば、もしも自分の免許の返納の時期が来たとしても、誰かに自動車を譲ることはできるね。特に価値の高い自動車ならもらい手は多いはずだよね。



タヌ川

この表で①の場合は、自分の意思で運転を代わってもらう、そして運転を続けられるよね。③の場合は、自分の意思で運転を止めるので、運転は続けられないよね。

②の場合は、意識喪失は自分の意思によるものではないけど、無理やり運転を続ける事ができないわけではないよね。でもいずれ④に進んで、自動車が壊れて意に反して運転を止めざるを得ないよね。場合によっては、大事故になるかもしれないしね。



事業承継と認知症



これを事業承継に当てはめると以下のようになります。



自動車が壊れているかが、会社の健全性の問題なのです。 事業が不健全だったら、もはや承継ではなく、立て直しができるか否かを考えなくてはなりません。


タヌ川

健全性がある事を確認してから、この会社をこのまま続けていたら、どうなるのか?を考えるべきだと思うよ。



コン田

怖いのは明智の光ちゃんだけじゃないんだね。恐るべし認知症だね。



タヌ川

このような「もしも社長さんが認知症になったら」の場合に備えていないと、会社はいずれ凍結して望まない倒産への道を歩むことになるんだ。



コン田

もしも倒産になると、場合によっては社長さんに何も残らなくなるだけじゃなく、従業員さんや、取引先さん、融資で応援してくれた金融機関さんにも、大きな迷惑をかけてしまうことにもなるよね。



そのとおりですね。 特に、中小企業の創立者の場合は、そのカリスマ性で会社を引っ張ってきた方が多いので、他の人では代わりにくい場合もあるのです。

十分な準備をしておかないと②のような突然の事態には、会社として対応できないことになりますよね。


イタチ

コン田ちゃんのような魔王の代わりはいないからね!



サル富

コン田ちゃんは怖かったからね!



タヌ川

つまり、事業承継を考えるようになった時には、まずは、この会社は事業承継を進めるだけの「健全性」があるのか?それとも、少しでも早い段階で自主廃業をした方が良いのかを、社長さんが判断しなくてはならないね。



コン田

だから、①か③のどちらを選ぶのかという問題なのだね。



イタチ

確かに事業承継も自主廃業も、現在の社長さんが、社長という舞台から降りてお金で清算する事になる点では同じだからね。



コン田

なるほど。結果として良いか悪いかは別の問題として、事業承継を考える時には、自主廃業も考えなくてはならないから、一緒に説明されていたのだね。



イタチ

ありがとう。タヌ川ちゃん、事業承継を考える時には、自主廃業も頭に入れることがわかったよ。



コラムを読んで、参考になった!と思った方は、

小冊子「親と子供の未来を守る家族信託物語 認知症と「お金」の話」もぜひ読んでみてくださいね。



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