「事業承継」をカル~イ感じで勉強してみた NO.5
「家族信託」の勉強をしてみた ①
生前における認知症の問題はクリアできたし、亡くなった後の財産移転も遺言でクリアできた。
でも、何か不安。
それは、事業を承継した子供は、相続で突然に事業を受け継ぐと、どうしたら良いのか分からない局面に立たされるからです。
昔は家督相続制度があって、相続税も高くなかったから、親は隠居ができました。
隠居したとはいえ、親はまだまだ元気ですから、家督相続をした長男は、事業に困った時にはいつでも先代の親に相談ができました。だからとても安心でした。
ところが今は、家督相続制度がないので、相続が発生した時には先代に相談することはできません。
今の時代に、家督相続のように先代に相談しながら事業承継をしていく方法はないものでしょうか。
それが、家族信託なのです。
4匹が家族信託という何やら聞きなれない新しい方法を考えています。4匹の会話を楽しんで下さいね。
今日のテーマ「家族信託」の勉強をしてみた ①」
家族信託とは
この前、タヌ川ちゃんは「家族信託」を使ったと言っていたよね。家族信託とは何だい?
家族信託というのは、「私のお金(財産)をあなたに託します。だから、私達を守って下さいね」という「契約」のことなんだ。
自分を守ってくれる人と契約して、お金を預けるんだね。
簡単に言うとね、自分の財産を家族名義に変更するという方法で、名義だけを預かってもらうのさ。
財産の名義が自分から家族に変わっているのだから、財産の処分にあたっては、自分が認知症か否かは関係なくなるよね。
しかも、すでに名義が変わっているのだから、名義の移転の問題も出てこないよね。
少し難しく言うと、
所有権を、「名義」と「受益権」の2つに分けて、
「名義」を元気な家族に預け、「受益権」を自分で持っておくのです。
家族信託を頼む人を「委託者」 、信託で利益を受ける人を「受益者」、 頼まれた人を「受託者」、信託で預ける財産を「信託財産」 というのです。
財産を持っていて、その財産の信託をお願いする人。
自分のために信託する場合(自益信託)には、自分を「受益者」にします。
■受益者
信託契約によって利益を受ける人。委託者でなくても可。
例えば、障害のある自分の子供でも良い。
■受託者
信託契約によって、委託者から信託財産を預かる人。
信頼できる人なら家族でなくても大丈夫。
でも、信託業法があるから、司法書士さんでも、仕事で家族信託の受託者になる事はできません。
仕事で受託者になる場合は、商事信託と言います。例えば、信託銀行です。
それで、まずは僕が「委託者」になって、江戸城と金銀財宝を「信託財産」にしたんだよ。(だって、関が原と大阪の冬・夏の陣で、勝ったけどヘトヘトになってね。だから、誰かに任せて楽隠居の生活をしたいなぁ~と思ったんだよ)
それで息子に相談したら、「僕に任せてください!」と言ってくれたんだ。だから、最初は、受託者を息子にしようと思っていたんだ。
つまり、僕が認知症になった後でも、息子に僕のお金を上手に使ってもらえるんだよ。
そして、僕だけでなく、僕の妻や家族も今まで通りに安全な生活ができる事になるんだ。後見制度よりも融通が利くところが、家族信託の素晴らしいところなんだよ。
なるほど、それは確かにすごいね。
しかも、信託が終了したら、信託財産の帰属先を自分で決めておく事ができるので、
生前は自分のために使い、残った財産を誰にあげるのかは自分で決めることができるのです。
へぇ~!遺言と同じ事ができるんだね。
家族信託の機能
そのとおり、財産管理 と 財産承継 ができるんだよ。
家族信託は、後見制度のように「守る」、そして遺言のように「遺す」、そして、活用までできる「活かす」ができる機能があるんだよ。
身上監護は、受託者を家族にしておけば、家族の扶養義務によってある程度は守られるのです。
任意後見制度を併用しておけば、身上監護もバッチリだから安心ですね。
でもね、認知症になる前に、自分の財産を家族名義に移転・変更するという点で、ちょっと抵抗感があるかもしれないね。
名義を変えるという事は、先に贈与しちゃうということなの?
贈与ではないのです。あくまでも、贈与税は、名義ではなくて実質的利益の帰属先にかかります。
家族信託の場合は、実質的な利益は受益者のタヌ吉ちゃんに残って、受託者の息子さんには移転していないので、贈与税はかからないのです。
たとえば、コン田ちゃん名義の預金でいえば、口座の名義だけを息子さんに変えておくだけのことです。
もちろん、通帳の名義は「信託口口座」又は「信託専用口座」として、信託であることがわかるようにしておきます。
でもさ、僕のお金を勝手に使われる心配はないかな?
家族信託はその契約書の中で、「信託の目的」と「受託者の権限」も決めるから、受託者は勝手に信託財産を使うことはできないんだ。
受託者による資産の適正な管理・運用・保全・活用・処分を通じて、受益者の生活・介護・療養・納税等に必要な資金を確保及び給付することで、
受益者の日常生活の支援に努めることをもって、受益者の安心安全かつ平穏無事な老後の生活実現とを目的とする。
それに、家族信託は信頼関係が前提の制度なんだ。だから、勝手に使うかもしれないような信頼できない人とは、契約をしてはいけないよね(笑)
家族や家族同等に信頼できる人とだけ契約をするべきなんだ。
ところで、信託できる財産は、お金だけなの?
プラスの財産なら何でもOKです!マイナス財産はだめですが、不動産でも大丈夫です。
例えば、サル富ちゃんが高級な施設に入りたいから、「自宅を誰かに売りたいな」と思ったと仮定しましょう。
もしもサル富ちゃんが認知症になっていたら、売買契約も修繕契約もできないから、自宅はただのお荷物になってしまいます。
でもこれが、息子さんの名義で登記されていたらどうでしょうか。
息子さんが修繕して売ることもできるのです。自宅が売れたお金は、サル富ちゃんのために使ってくれるのです。
受益者連続
なるほど、財産管理はわかったけど、財産承継はどうなの?どういう方法で承継させたの?
ここが家族信託のすごいところなんだ。それは「受益者連続信託」と言われている方法を使ったんだ。
まずは僕が「委託者」になって、江戸城と金銀財宝を「信託財産」にしたんだ。それで、「受託者」はイタチちゃんにお願いしたんだよ。
え~ッ!ビックリ!そうか、タヌ川ちゃんとイタチちゃんは親戚関係だったね。ライバルなのかと思っていたよ(笑)確かに信頼できるよね。
それで「受益者」は誰にしたの?
最初の「受益者」を僕にして、僕が死んだら「第2受益者」を息子に、その後も「第3受益者」を孫にと、決めておいたのさ。
なるほど、遺言制度ではできない次の次までの承継を、家族信託を使って自分で指定したんだね。それは永遠にできるのかい?
永遠は無理なんだ。30年が一応の目安なんだけどね。でも、このシステムを我が家の家訓にしておいたんだよ。(武家諸法度や禁中公家諸法度と一緒に作っておいたんだ。それは冗談だからね(笑))
いろいろできる家族信託
すごいね。家族信託を使うと、いろいろなことができるんだね。
1.故郷で高齢の親が1人で実家に住んでいる
いずれ同居して親の面倒を見るつもりだが、親が認知症になった後は、故郷の実家を売却して病院代や施設代にしたいので、家族信託を使う
2.親がアパート経営をしているが高齢になった
でも親が認知症になった後もアパート経営は続けたい。今後の修繕や更新契約、新規契約のために、アパート経営に家族信託を使う
3.親が100%株主のオーナー企業の社長だが高齢になった
株主である親が株主総会や取締役会に出席できなくなると経営に支障が出るし、いずれは子供に社長の椅子を譲りたいと思っているので、株式を子供に家族信託しておく
4.障害を持つ子供がいる
今は自分たち(親)が面倒を見ているが、自分たちが亡くなった後の事が心配だから、家族信託を使う
いろいろできるね。
家族信託は最初の段階で設計費用や信託登記の費用がかかるから、一時的には後見制度よりも高くなると思うよ。
でも、家族で守るのだから、ランニングコストは安く済むから、長生きすれば高いとは限らないね。
例えば、財産が1億円(預貯金や不動産)があったと仮定。
法定後見なら、最初が、月額5万円強程度
1年間で60万円。
5年間で300万円。10年間で600万円。
家族信託だと、最初が、50万円~150万円程度。その後は特にかからない。
なるほど、もしも1年で亡くなれば後見の方が安いかもしれないけど、後見だと長生きすればするほど費用がかさむ。これは心理的な負担がありそうだね。
後見制度と家族信託の比較
それにね、病院の処方薬と同じで、各家族の事情ごとに設計が違うので、誰にでも同じパターンが当てはまるものではないんだ。
逆に、家族信託を使わない方が良い場合もあるんだ。
だから、費用の面だけで考えるのではなく、家族会議を開いて専門家と細かく相談して考えてほしいのです。
特に、身上監護を厚くするために、任意後見と家族信託を組み合わせることは良い方法ですね。
法定後見・任意後見・家族信託を比較してみましょう
タヌ川ちゃん、よく分かったよ。今日はありがとうね。
本当にありがとう。勉強になったよ。
次は、具体的な事例を検討しようね。
小冊子「親と子供の未来を守る家族信託物語 認知症と「お金」の話」もぜひ読んでみてくださいね。