グリーンインフラを具現化する建設業

企画 インタビュー

~グリーンインフラ特集・インタビュー~

グリーンインフラを具現化する建設業
多様な建設ノウハウでSDGsに貢献


一般社団法人日本建設業連合会
土木工事技術委員会 環境技術部会
島多義彦氏(グリーンインフラ官民連携プラットフォーム 技術部会・幹事)


―― 貴社(団体)の紹介をお願いします。

島多 当団体は、全国の総合建設業、およびそれらを構成員とする建設業者団体が連合し、建設業に関わる諸制度をはじめ建設産業における内外にわたる基本的な諸課題の解決等に取り組む団体です。会員数:154企業・団体。



―― 貴社(団体)のグリーンインフラに対する取組、考え方などを教えてください。

島多 取り組みとしては、2016年度から土木工事技術委員会環境技術部会でWGを立ち上げ、グリーンインフラの調査を開始し、2019年7月に一般向けの小冊子「グリーンインフラって何だろう?」、2020年3月に主に会員企業向けの調査報告書を作成し、ホームページで公表しました。
  
       
     グリーンインフラって何だろう?           グリーンインフラに関する調査報告書


また、日建連が大学等で出前講座を実施したり、会員会社の土木・建築の女性(けんせつ小町)が活躍する作業所で、小中学生を対象とした見学会を開催する際に小冊子を配布し、グリーンインフラや建設業の役割をPRしました。

グリーンインフラ官民連携プラットフォームにも参加おり、運営委員、技術部会幹事を担当し、建設業のノウハウを役立てることに努めています。課題が出た場合は必要に応じてWGで対応しています。

考え方としては、カーボンニュートラルが注目される一方で、激甚化する自然災害や気候変動への適応、少子高齢化や社会医療費の増大などの国レベル、地域レベルの諸課題に対して、自然の多様な機能を活用する効果的なグリーンインフラを普及することの重要性を認識し、グリーンインフラを具現化する建設業として、会員企業による取り組みを推進しています。また、発注機関をはじめ建設業に関わるステークホルダー、次代を担う子供たちをはじめ一般に向けて広くPRを行い、グリーンインフラや建設業の役割の認知度向上に努めています。

グリーンインフラは、単なる社会貢献ではなく、効果的な都市洪水対策など新しいインフラ整備になり、ESG投資やソーシャルインパクトボンド等による財源確保や社会の合意形成で有利なこともあり、新しい市場ととらえることがでます。一部の大手企業は先進的に取り組んでいますが、全国の中小の企業まで取り組むことで、持続可能な建設業や自然環境の保全にも寄与します。そのために必要な情報の整備と提供に注力しています。



―― グリーンインフラに関して、印象深い仕事を教えてください。

島多 グリーンインフラの定義や国内外の先進事例・要素技術の調査を行い、小冊子や調査報告書にまとめたことです(先進事例47件、要素技術94件)。

見学会や講演会を行い、知識の足りない分を補い、考え方に偏りが出ないように配慮しました。また、提言するような内容も盛り込みました。(グリーンインフラツーリズム、事前防災)

当時は明確な定義はなく、事例や情報が少なく、対象となるインフラが幅広く、モノではなく目標とする多様な機能を達成することが求められるため、概念や事例収集に時間を要し、約3年かけて作成しました。

※日建連が作成した小冊子、調査報告書は、ホームページ公表後これまでにそれぞれ5000を超えるダウンロード実績がある



―― グリーンインフラに関して、提言や課題、今後改善すべき点または展望があれば教えてください(自社努力または行政への要望なども)

島多 グリーンインフラを主流化するための課題や提言は、調査報告書等に記載していますが、特に、普及を促進するには、防災や国土強靭化ばかりでなく、環境や健康、地域振興など多様な機能を定量評価し、目標の達成度を見える化することや、主なグリーンインフラの計画・設計を標準化することが重要になると思います。その際には、会員会社の事例やノウハウを役立たせたい。

また、積極的に地域の課題解決に取り組み貢献している会員会社の企業評価、グリーンインフラへの税制優遇や助成、認定等の制度の充実が求められます。一方、あらゆる産官学民の横断的な連携・協働作業・合意形成の促進が必要であり、グリーンインフラの認知度の向上と推進体制が必要だと考えます。

制度設計について代弁すると、入札トラブルが出ないようにECI方式やCM/GC方式などで事業が行われるようにし、建設会社のノウハウを計画設計に反映しやすい制度が望まれます。



【取材後記】

 日建連HPには、「全国的に総合建設業を営む企業及びそれらを構成員とする建設業者団体が連合し、建設業に係る諸制度をはじめ建設産業における内外にわたる基本的な諸問題の解決に取り組むとともに、建設業に関する技術の進歩と経営の改善を推進することにより、わが国建設産業の健全な発展を図り、もって国民生活と産業活動の基盤の充実に寄与すること」を設立目的としている。

 日建連の活動は幅広く、15委員会33部会を擁する。掲げるキャッチフレーズは『確かなものを 地球と未来に』-ものづくり産業としての建設業が、その技術力により提供する建築物や構造物を「確かなもの」とし、それが地球規模で未来への礎になることを「地球と未来に」で表現。まさに国内の建設産業界をけん引する団体だ。

 取材を通して学んだことは、グリーンインフラの推進に当たっては産(企業や技術者)、官(国・地方公共団体)、学(教育・研究機関)、民(住民・NPO団体など)の横断的な連携と協働作業、合意形成が必要で、そのためにも社会認知度を高め、横断的取り組みを進めるための実施体制が実装を加速させるカギを握るということだった。
 今回お話を聞いた島多氏は土木工事技術委員会の環境技術部会に所属。株式会社フジタ 土木本部 土木エンジニアリングセンター企画部で上級主席コンサルタント(水環境技術担当)として技術士(建設部門)のほか、1級ビオトープ計画管理士、1級ビオトープ施工管理士、環境カウンセラーの肩書を持つ。現場レベルの視点から水生植物を活かした淡水域の水質浄化に植生浮島浄化法(フェスタ工法)を考案し、2005年テレビ番組の企画で旧芝川の環境再生に携わり、その後、西アフリカのベナン共和国、ノコエ湖でもカキ殻を水中に沈めて水質を浄化する技術を適用、地域住民の理解を得、かつ意識や行動の変容にも寄与するなど、地域住民を巻き込んだ自然環境の再生と持続的な取り組みに果敢にチャレンジした功績を残している。



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