屋根の種類とそれぞれの特徴
屋根の種類とそれぞれの特徴
【コラム 1級建築士による建設アラカルト】【独学1級建築士 nandskさん】
普段何気なく目にする建物の屋根。実は、屋根には形状ごとに名前がついています。
例えば、一般的な△型の屋根は切妻屋根と言います。切妻屋根の妻側(短辺側)にも勾配を付けたものは寄棟屋根と言います。少し複雑な形状ですが、寄棟屋根の上に切妻屋根を乗せたような形は入母屋屋根と言います。これは、切妻屋根や寄棟屋根よりも格式が高いとされており、神社の屋根や城郭建築などにみられます。
他にも、勾配を一方向だけに取ったものを片流れ屋根、工場の屋根などに多いのこぎり屋根、屋上に人が出られるように平らにした陸屋根など、屋根はその形状によって10種類以上に分類されるんです。
もう少し深堀すると、世界でも最も多くみられるのは切妻屋根です。2枚の板を△になるようにつなぎ合わせた形状、本を開いて逆さまにした形状、というとイメージしやすいでしょうか。
非常にシンプルな作りですが、その分強く、屋根の役割である雨水の侵入を防ぐという点でとても合理的です。シンプルなゆえに施工もしやすく、費用も安いということなしですね。さらに、傾斜に沿って雪も落ちやすいので、多雪地域でも非常によく使われます。
では、なんでもかんでも切妻屋根にすればいいかと言うと一概には言えません。
先ほども説明したように、屋根の形状は格式の高さにもつながります。切妻屋根の神社などはなかなかないでしょう。
複雑な形状ののこぎり屋根はのこぎり部分にトップライトを設けることで、工場などの大空間でも内部を明るくすることができます。そのため、古くから世界的に織物工場や染色工場などに用いられてきました。
陸屋根のメリットはもちろん平らな屋上に人が出られること。さらに、空調の室外機などの設備類を屋上に持ってくることもできます。いろいろな屋根があり、それぞれにメリットがあるんです。
逆に、デメリットもあります。
最も多くみられる切妻屋根では、大規模な建物では室内へ日光を取り入れにくいです。そもそも、一定の勾配を取って傾斜を付ける切妻屋根を大規模な建物に架けると建物の真ん中部分は相当な高さが必要になってしまいますね。
屋上が使える陸屋根では、屋上を使用することによる劣化や勾配がほとんどないことによる水たまりの発生、雨漏りが生じやすいといったこともあります。
一見同じように見える建物の屋根も、それぞれ特徴があるので、今後は屋根について、もうちょと意識してみるといいでしょう。
今回のコラムは【独学1級建築士 nandskさん】
独学により1級建築士に合格。住宅やアパートの設計・工事監理、特殊建築物の維持管理、公共施設の工事設計・監督の経験あり。2級、1級建築士試験受験者へのアドバイスも行っている。『建築の楽しさを多くの人に知ってもらいたい』と話す