「事業承継」をカル~イ感じで勉強してみた NO.2
「後見制度」の中の「法定後見制度」の勉強をしてみた
今日のテーマ 「認知症になった「後」からは、法定後見制度だけ!」
認知症になると、「身上監護」と「財産管理」を代理人にやってもらう事が考えられます。
認知症になってしまった「後」からでは、判断能力がなくなっているので
もはや自力で身体を守る事も、財産管理を管理する事もできなくなります。
従って裁判所の力を借りることになります。
これを「法定後見制度」と言います。
まずは裁判所主導の法定後見制度を考えてみましょう。
自力で人生を切り開いてきた4人の社長さん達は、どのように受け止めるのでしょうか、話を聞いてみましょう。
後見制度とは
まず「後見制度」全体について話をするね。
後見制度を簡単に言うと、
認知症になった後のお金の管理(財産管理)と身体の安全(身上監護)を誰にお願いするかの制度だと思ってね。
僕なら、まずは家族に。特に子供だね。
今まで君を育ててきたのだから、これからは、お父さんとお母さんの面倒は君に頼むよと言いたいね。
そのとおりですね。
元々子供には法律上の義務として、親に対する扶養義務(※)があります。
だから、身上監護や事実上の財産管理は、ある程度ならできます。
しかし、法律上の「代理権限」は認められていないので、特に財産管理面では困る事が多いです。
※ 夫婦、直系血族、兄弟姉妹には法律上の扶養義務(生活保持義務・生活扶助義務)があります。
民法752条 「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」
民法877条第1項 「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。」
生活保持義務 = 生活水準を同程度に維持する義務(親と未成年の子の間や夫婦間)
生活扶助義務 = 余力があれば余力で需要する義務(親と成年の子の間、兄弟間)
法律上の扶養義務だけでは足りないのだね。
明確な「代理権限」があれば、親の代理人として親のお金を使う事ができるんだね。
その代理権は、どうやったら与えられるの?
それが「後見制度」です。
「後見人」を選ぶという事が、代理権限を与えるという事になります。
コーケンニン?
代理権限を持つ後見人には、どんな種類の人がいるのかな?
認知症になった「後」から裁判所が選ぶ「法定後見人」と、
認知症になる「前」に自分で契約して頼んでおく「任意後見人」の2種類の後見人がいます。
法定後見人とは
法定後見人(※)には3種類があって、判断能力の低減度合いによって分かれているんだよ。
※ 法定後見制度には、判断能力の低減度合いによって
① 補助(判断能力不十分)② 保佐(著しく不十分)③ 後見(判断能力喪失) に分けられており
それに対応して後見人等も ① 補助人② 保佐人③ 後見人 が選ばれ、代理権の度合いが違います。
たとえば、③の後見人の代理権は、財産管理に関する法律行為全般に及びますが、
①②の場合は、裁判所が決める「特定の法律行為」だけです。
補助人・保佐人・ 後見人の違い
確かに、ウッカリ何もしないままで認知症になった場合や家族や信頼できる人がいない場合には
契約はできないから、裁判所に選んでもらう法定後見制度は助かるよね。
そうだね♪
じゃあ、僕は名軍師の黒田の官兵衛ちゃんを、法定後見人にしてくれるようにお願いしたら良いのだね?
ところが、それはなかなか難しいのです。
法定後見人は、裁判所が決めるから、事前の本人の希望や家族の希望が通るとは限りません。
特に多くの預貯金や不動産があると、希望は通りにくいと言われています。
親族後見人の場合は、親族がついウッカリ自分のために使っちゃう事を心配しているんだろうね。
それじゃあ、サル富ちゃんの場合は国内外の財宝を独り占めしているし
大阪城という高額な不動産も持っているから、希望は通りにくいという事だね?
えーッ!そうなの?
しかも、知らない人が家の中に入ってきて通帳や権利証を持って行っちゃって、その上、知らない人にアレコレ指示されるという事なの?
まあ、そうなるね。
全く知らない他人に頼るのは、家族としても落ち着かないかもしれません。
その点では、法定後見人は受け入れ難い面がありますね。
任意後見人をちょっとだけ
それに対して、任意後見人の場合なら家族はもちろん、家族以外の人でもなれるのだね?
その通りだよ。契約だからね。
それなら僕は、任意後見制度が良いな。
でも、1つ問題点があります。
任意後見制度が実際に動き出すためには、裁判所から「任意後見監督人」を選んでもらう必要があります。
後見人が暴走しないように、裁判所が後見監督人を通じて後見人を監督するシステムなのです。
ありゃ~!また裁判所が出てくるの?
という事は、後見監督人は知らない人がなるのだね。なんだかなぁ~。
でもさ、裁判所が勝手に決めるのだから、後見監督の費用は裁判所が払ってくれるんでしょ?
それは無理なのです!裁判所ではなく、自分で払うのです。
えーッ!いくらかかるの?誰が払うの?
まず、法定後見の場合をいうと、法定後見人の申立費用(※1)は、原則は申立人の負担になります。
子供が申し立てたら、原則は申立てた子供が払うのです。
法定後見人の報酬(※2)は本人、つまり親の負担になるのです。
もう一度法定後見人
えーッ!親のために申し立てたのに、申立をした子供が申立費用を負担するのか。
なんか兄弟喧嘩になりそうだな~。
※1
収入印紙(申立用・登記用) 4000円前後
郵便切手 4000円前後
医師の鑑定費用 5万円~10万円(医師によって違います)
専門家の書類作成等相談料 5万円~15万円(消費税別)
法定後見人への報酬については
東京家庭裁判所の目安額は、基本報酬が月額約2万円程度で、付加報酬が加算される事もあるよ。
いずれも、裁判所が決定するんだ。
※2
法定後見人等の報酬の目安(平成25年1月1日 東京家庭裁判所)
基本報酬
【後見人等】 目安は月額2万円
管理財産が1000万円~5000万円 = 3万円~4万円
管理財産が5000万円超 = 5万円~6万円
【後見監督人】
管理財産が5000万円以下 = 1万円~2万円
管理財産が5000万円超 = 2万5000円~3万円
付加報酬 基本報酬額の50%の範囲で不可(資産額と身上監護の困難度合による)
しかも、法定後見制度はあくまでも本人である親(被後見人)の保護のための制度なので
その財産の使用方法は、投資とか家業の拡大とかには使えません。
親が元気なら家族のために使うだろうと想像できる場合であっても、だめなのです。
直接に親の利益になるという点が基準になって、親の直接の利益になるかが不明瞭な場合には、使えないと考えた方が良いです。
そうしたら、子供達に暦年贈与するとか親が趣味で株や不動産に投資したいからといっても
不利益の発生が考えられる以上はできないのだね。
さらに、法定後見人選任されてしまうと、親が亡くなるまで費用を支払い続けるんだよ。
途中でやめる事ができないんだ。
その他に、ヘルパーさんや介護士さん等の、事実上の介護費用も別にかかるから費用的には大変ですよね。
身上監護と言うのはヘルパーさんと同じじゃないの?
違うのです。
成年後見人が行う身上監護は法律行為に限定されるので、
食事や排せつ、お掃除、送迎、買い物のお手伝いなどの事実上の介護行為は含まれません。
それじゃあ、家族で介護ができない場合には
どうしてもヘルパーさんや介護士さん等に助けてもらう必要があるから費用は高いね。
それに、例えば一人暮らしの親が施設に入居したからと言って、直ちに自宅を処分する事はできないのです。
自宅の処分については、家庭裁判所の許可が必要になります。
施設に入ったとしても、戻る自宅が知らないうちに処分される事は、本人の親にとっては重大事です。
だから、親の財産を使う場合も基本は、自宅以外の預貯金から使用していく事になります。
なるほどね。法定後見制度はありがたい制度だけど、いろいろと考えなくちゃならない点もあるんだね。
それにね、今回検討している事業承継の問題は、会社の経営という特殊な能力と優れた感性が要求される話だよね。
それを裁判所から選任された人に代わってもらう事はできないし、そもそも、会社経営は冒険的な判断を求められるので、後見人ではできない話だよね。
でも、家庭人としての社長さんを守ることも重要だからね。
小冊子「親と子供の未来を守る家族信託物語 認知症と「お金」の話」もぜひ読んでみてくださいね。