「事業承継」をカル~イ感じで勉強してみた NO.1
こんにちは、司法書士の梅本 芳(うめもと かおる)と申します。
梅が芳しい(かんばしい)と書いて「かおる」と読みます。
お友達からは「梅ちゃん」と呼ばれています。 梅の花のように可憐で清らかな乙女 のはずだったのですが…
仕上がりは95キロ、草野球の後の青空カンビールが大好きな中年太りのオッサンなのです。
期待させてごめんなさい。でも、人は見た目じゃないから…ね?(笑)
これから、一緒に「事業承継」を考えていきます。
日本では毎年約8万社の会社が設立され、毎年約2万5000社が消滅していると言われます。 事業承継をするという事はかなり難しい事なのですね。
別の数字ですが、設立された中小企業のその後の10年間の存続率を見ると1年後で40%(60%が廃業している)、5年後は15%(6社に1社しか残っていない)、そして10年後は5%(もはや存続している事が奇跡のような数字)と言うデータがあります。
事業承継を考える会社というのは、25年くらいは経過しているでしょうから、5%以下の厳しい倍率の荒波を越えてきた優秀な会社だと言うことです。
さて、そのような優秀な会社が、なぜ事業承継を考えるのでしょうか?
それは、簡単に言えば、人間に寿命があるからです。
同一人物が永遠に社長の席にいられないからなのです。 いつか社長の席を退く日が来ることが確かなのです。それなら、元気な内に適切な人に承継の準備をしておかなくてはならないのです。
そして、寿命に加えてさらに厄介な問題があります。 それは、社長を襲う「認知症」です。
元は正常な認知機能だったものが、後天的な脳の障害によって、記憶・思考・見当識・理解・計算・学習・言語・判断等において、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態をいいます。
つまり、今までのような適格な経営判断ができなくなるということです。認知症になったからといって、経営権限が自動的に誰か優秀な人に移動するわけではないので、経営権限は「凍結」してしまうのです。
あらかじめ別の人に経営権限を移転していないと、会社は行き詰まってしまうのです。
しかも、認知症になると、会社の事業承継の問題の他に、家庭における大黒柱が動けなくなるという家庭内の大問題も生じてきます。
認知症の予防・治療の特効薬はまだできていません。
5%の荒波を越えてきた社長さんの最後の仕事が事業承継のための認知症対策だと言っても過言ではないのです。
従って、事業承継を考える時には家庭問題も含めて認知症とその関連事項についても理解をしておく必要があるのです。
そこで、まずは認知症になると何が困るのか。 まずは社長個人の問題として、遺言・後見制度・家族信託で対処できる事を知っておきましょう。
そのうえで、会社の問題としての事業承継を考えたいと思います。
4人の社長さんがワイワイガヤガヤとおしゃべりします。カル~イ感じで読んでみて下さい。
「認知症」から親と子どもの未来を守る勉強をしてみた
今日のテーマ 「敵は認知症にあり!」
こんにちは、初めまして。東北イタチ会のイタチ政宗です。
本日は、近頃、森の仲間にも話題になってきた「認知症」のお話をいたします。親が認知症になると、親名義の預貯金は、「凍結」されて引き出せなくなります。
そうすると、子供が、親の介護費用を負担する事になります。
つまり「認知症」の問題は親の健康問題でありますが、実は子供の未来の問題でもあるのです。
天下取りの3人が、子供の未来に負担をかけない方法をカル~イ感じでおしゃべりします、少しだけお付き合い下さいね。
認知症とは、どういう事なのか
知っているかい?森の経済界では、高齢の社長の認知症が社会問題になっているらしいよ。
認知症という言葉は聞くけど、どういう事なの?
ちょっと難しいね。
認知症と言うのは、病気の名前ではないのだよ。特有の症状を示す状態を総称する言葉なんだ。
例えば、クシャミで考えると、クシャミが出るのは状態です。クシャミを引き起こす病気は、風邪もあれば花粉症もあります。
それと同じで認知症の症状を引き起こす病気があって、代表的なものは、
1.アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)
2.脳血管症
3.レビー小体型認知症
4.前頭側頭型認知症(ピック病) があります。
日本では、アルツハイマー病が全体の約60%を占め、高齢者に限定すると約80%を占めると言うデータがあるのです。
へぇ~、ほとんどがアルツハイマー病ということなんだね。
アルツハイマー病に罹ると、「見当識障害」の症状が出て場所・時間・人物などの認識ができなくなります。
身体機能の低下もありますが、進行状況によって個人差も程度差もあるので、認知症になったら直ちに判断ができなくなる という事ではないのです。
これらの病気を根本的に直す治療薬は今のところないのですが、アルツハイマー病とレビー小体型認知症は、薬(抗認知症薬)で進行だけは遅らせる事もできるようです。だから早目の検査が必要といえます。
つまり、認知症になると直ちに命に係わるわけではないですが、判断能力がなくなるという事なのです。会社の社長さんは経営判断ができなくなりますよね。
僕たちの時代には、認知症になる前に戸主が家督を子供等に譲って、自らは悠々自適の生活を送る隠居ができたけど、今は家督相続制度や隠居制度がないから大変だよね。
ところで、親が認知症になると、何に困るんだい?
認知症になると、何に困るのか
簡単に言えば、家庭の大黒柱である親の「お金」を、使える人がいなくなる事が困るんだよ。
何故使えなくなるの?
親が認知症になると、親は判断力を失って、単独では有効な法律行為をできなくなります。
まず、自分の身体(身上監護※1)を自分だけで守れなくなります。次に、自分のお金(財産管理※2)を自分だけで管理できなくなります。
※1
身上監護とは、
治療・入院等についての病院との契約や、居住・施設等の入退所に関する手続や介護サ-ビスの契約等の高齢者の身体を守るための行為。例えば、
1.医療や介護に関する契約
2.教育やリハビリに関する契約
3.住居や施設に関る契約
※2
財産管理とは、
売買契約や契約解除、税金や医療費、施設費の支払いを本人に代わって行う行為。例えば、
1.金融機関との取引・交渉
2.住宅の維持・管理・処分
3.生活費の現金・預貯金の管理
4.必要な衣料や生活用品の購入
難しいね。
たとえば、金融機関の場合、預貯金の払戻や解約する時には「本人確認」と言って、本人が窓口に行く必要があるのだけど、その時に認知症になっていると、「後見人を連れて来てください!」って断られちゃうのさ。
認知症になると、誰が困るのか
それは困る!という事は、誰が困るかと言うと、困る人は認知症になった親本人という事だね?
とても鋭い質問だね。もちろん、認知症に罹った本人は困るんだ。でも、認知症が進行すると親本人は「困った」という事も理解できなくなるんだよ。
久しぶりに実家に帰ってみたら、羽毛布団を10セットも買ってあって、親に聞いたら、ニコニコしながら「親切な方で私にだけ10セットも優先的に売って下さったのよ~」なんて、その上、逆に子供にも勧めてきたなんて話も聞くよね。
聞くね~。それなら、もしかして、親の面倒を見る子供が困る事になるのかな!?
そのとおりです。親が認知症になったからと言って、自動的に子供が親のお金を自由に使える事になるわけではありません。
その時に、もしも親のお金が使えないとなると、子供は自分の生活費の上に、親の介護費を準備しなくてはならなくなります。若い世代だったら二重の負担は厳しいですね。
親の立場としては、子供を苦しめる事になるのは不本意だよね。子供にだけは、お金の苦労はさせたくないと思って、今まで頑張って来たというのは、親心だからね。
子供としても、大切な親の介護ができないのは辛いですね。
しかも、親が自分の老後のために貯蓄してきたお金なのに、今です!と言う時にお金が目の前にあるのに使えないのは悔しいですよね。
認知症になる前にする贈与はどうか
だからといって、先に贈与をするのは、贈与税(※)の問題があるから、簡単にはできないよね。
贈与税の事は、税理士さんに確認した方が良いですが、一般的には次のように言われています。
でもさ、認知症対策を意識している人ってあまり聞かないのだけど、実際にはどうなの?
どうやら、まだ多くはいないようです。理由はいろいろあると思いますが、例えば、
1.まだ元気だから後回しでも大丈夫と思っている。
2.今まで沢山の苦労を自力で乗り越えてきた自信がある。
3.今なら十分な貯蓄もある。
だから「何とかなる」と思っている。という事かもしれません。
でも「何ともならない」のが、認知症の怖いところです。
認知症になった「後」では対処ができませんし、自信だけでは現実の認知症には対抗できません。そもそも貯蓄が使えなくなるから問題なのです。
健康寿命とは
ところで、平均寿命と健康寿命(※)という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
平均寿命はご存知だと思いますが、健康寿命というのは、他人の支援や介護を必要としないで、自力生活ができる年齢の事を言います。
※ 2016年・17年データ
平均寿命 = 男性81.09歳/女性87.26歳(2017年)
健康寿命 = 男性72.14歳/女性74.79歳(2016年)
介護生活 = 男性8.95年間/女性12.47年間
あくまでも統計ですが、要するに72歳を過ぎたら、認知症と介護を受ける生活を意識した方が良いということです。
え~ッ!72歳なんて、まだ元気モリモリだよ!
だから、みんなが後回しにしても不思議ではないのだよ。でも、元気だからこそ、対策をした方が良いのさ。
だって、認知症になった後からでは、自分では頭の中がボヤーッと白くなって、思っている事があるはずなんだけど、何を思っているのかが、自分で分からなくなって、もどかしくなると聞くからね。
なるほど。ところで、どんな対策を準備したら良いのだろう?
予防策には、「頭の健康トレーニング♪」が良いらしいね。
予防策は認知症にならないための対策です。それとは別に、認知症になった後でも生活を守れるための、別の対策も併せて考えた方が良いですね。
終活はその対策なのかな?
1.エンディングノートを作る
2.今の内に断捨離をして整理をしておく
3.墓地や永代供養、葬儀の準備をする
4.遺言書を準備する
確かに「終活」も必要だよね。でも、認知症でも安心できる法律的な対策を知りたいな。
「具体的な方法」と「それの費用」を教えてくれないかな。
それでは、次回は ①後見制度、②遺言制度、③家族信託契約 を説明する事にします。
会社の社長さんも、事業承継に関係するから考えてみてください。
小冊子「親と子供の未来を守る家族信託物語 認知症と「お金」の話」もぜひ読んでみてくださいね。