今こそ立地適正化計画を

コラム

今こそ立地適正化計画を

【コラム 1級建築士による建設アラカルト【独学1級建築士 nandskさん】

 

「立地適正化計画」という言葉を聞いたことがあるだろうか?

建築屋であっても知っている人は少ないが、今、国が推し進めている政策の一つで、これから話題になることも増えてくる計画である。

  

  

簡単に説明すると、読んで字の如しで、その土地の使い方を適正にするために行政が作るまちづくりの計画だ。

特に、立地適正化計画で位置付ける「居住誘導区域」は、行政が居住を誘導するエリアのこと。

    

なぜ、この計画が今必要とされているのかと言うと、行政資源を節約するためのコンパクトシティ化が求められているから。

例えば、山奥に数件の集落があったとする。すると、その集落までの道路、上下水道、電線などのインフラはもちろん、バスの巡回も必要になってくる。こういったインフラ整備は税金を使い行うことになるが、税収も無限ではない。

そのため、人々が住むエリアを大まかに決め、そこに集中してインフラ投資できるコンパクトシティは今後の日本に求められている街のあり方だろう。

国は立地適正化計画の策定を推進しており、多くの自治体が計画を策定している。

    

特に最近は台風などの自然災害が増えており、防災面からも立地適正化計画の必要性が語られることが多い。

国土交通省は、今までは技術的助言で考えを示すに留めていた災害レッドゾーンを居住誘導区域に含まないように、ということを政令明記するようにした。居住を誘導するエリアが災害の危険度が高いエリアではいけないのは当たり前だろう。

    

実際に、令和元年東日本台風では福島県須賀川市で阿武隈川支流の釈迦堂川が氾濫し浸水被害が生じた。

この浸水被害が生じたエリアは須賀川市の立地適正化計画では居住誘導区域内だったのだ。この被害を受けて、須賀川市は立地適正化計画を見直している。

  

居住誘導区域に災害の危険度が高いエリアを入れないことは、当たり前かもしれないが、これが意外と難しい。昔から河川の氾濫被害が多かったエリアでも、堤防が整備され、現在は住宅街になっていることも多いからだ。須賀川市の事例はこれだろう。

すでに家がたくさん建っているにもかかわらず、居住誘導区域にしないのはそこに住む人からの苦情にさらされる危険もある。建築計画が抑制されれば今後の建替えや家や土地の価値下落につながる恐れもある。

こういった問題点から計画策定に後ろ向きな自治体が多いのも事実だ。

しかし、被害が出てからでは遅いので、しっかりと計画を策定し、永く安全に暮らせる街を目指してほしい。

   

  

今回のコラムは【独学1級建築士 nandskさん】

独学により1級建築士に合格。住宅やアパートの設計・工事監理、特殊建築物の維持管理、公共施設の工事設計・監督の経験あり。2級、1級建築士試験受験者へのアドバイスも行っている。『建築の楽しさを多くの人に知ってもらいたい』と話す

 

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