今後のインフラ整備をどうすべきか
今後のインフラ整備をどうすべきか
【コラム 1級建築士による建設アラカルト】【独学1級建築士 nandskさん】
かつて、経済の発展とともに猛烈な勢いで整備したインフラが老朽化してきている。これらのインフラの整備は日本の課題であり、国や地方自治体も頭を悩ませている。
具体的に、どのくらいの負担になっているかと言うと、道路の維持補修だけで国民一人が年間3万円以上負担していることになる。
インフラには上下水道や電線などの電気設備、さらにダムなどの大型建造物も含まれるので、トータルすると国民一人が年間5万円以上負担しているかもしれない。
特に、人口の少ない地域では一人ひとりの負担額も高くなる傾向があり、インフラの維持補修だけではなく、不要になったインフラや稼働率の低いものは撤去していくことも考える必要があるかもしれない。
そのための立地適正化計画であり、コンパクトシティ構想なのだ。
現状の維持管理は自治体が業者に委託発注し行っているが、すでに計画よりも遅れがでている。国も問題を認識しており、国交省は補助制度を創設するなど、対策は取っているが追いついていない。
点検ができていないインフラでは事故が発生する確率も高くなり、笹子トンネルの事故や道路の陥没事故などにつながる恐れもある。
そこで新たに注目されているのが維持管理の手法だ。
立地適正化やコンパクトシティ化というのは一朝一夕でできるものではなく、これはこれで進めていくべきだが、直近の課題としての維持管理には対処が必要だ。現状、自治体のみでは手もお金も足りていないため、新たな手法が出てきた。
例えば維持管理の直営化。予算不足に悩まされる地方自治体では専門の技術職が講習会などを経て技術力を向上させ、道路や橋梁の点検を自分たちで行っているところもある。
初めのうちは慣れない業務にミスが生じることもあるだろうが、長い目で見れば技術が継承され、毎年違う業者に発注するよりも高い技術力を得られる上、費用は抑えられるだろう。
そこから派生して、大学などの教育機関と連携している事例もある。
長崎大学では長崎市と協定を結び、橋梁の点検・補修の研究をするという名目で、点検・診断業務を受託している。さらには、住民主体で点検を行っているところも多い。
都心部ではエリアマネジメント活動として道路やデッキでイベントを行ったり広告を掲示できる代わりに維持管理を行っている事例もある。地方であっても草刈りなどのイベントに合わせ、橋梁を点検しているところもある。
老朽化したインフラをどうするかは非常に難しい問題だが、放置すれば事故に巻き込まれる恐れもある。他人事と捉えずに、一人ひとりが今後のインフラ整備について考えてもらいたい。
今回のコラムは【独学1級建築士 nandskさん】
独学により1級建築士に合格。住宅やアパートの設計・工事監理、特殊建築物の維持管理、公共施設の工事設計・監督の経験あり。2級、1級建築士試験受験者へのアドバイスも行っている。『建築の楽しさを多くの人に知ってもらいたい』と話す