土木施工管理技士講座 第12回「第一次検定 コンクリート工」
どうも、Webライターの佐藤拓真です。
今回も前回同様に土木施工管理技士の基礎力養成ということで、「コンクリート工」について解説していきます。
土木施工管理技士の試験において、「土工」「基礎工」と難しい問題が多い土木一般の分野ですが、その中で得点源と言えるのが「コンクリート工」です。

ぜひ、時間があるこの時期に基礎から学び直して、得意分野に変えていきましょう!
今回も過去問を参考に、頻出問題を選んで解説します。
それでは参ります。
【前回の記事】
元準大手ゼネコン勤務|土木の現場監督7年|ブロガー兼Webライター|SNS総フォロワー2.3万名|出版書籍「仕組み図解 土木工事が一番わかる」
「コンクリート工」を勉強すべき理由
1級土木施工管理技術検定の第一次検定(試験問題 A)において、土木一般は選択問題として出題され、15問から12問を選んで解答します。
その中で、コンクリート工の問題が5問出題されます。
「コンクリート工」における頻出問題
出題される5問は傾向が決まっています。以下の項目がよく出題される問題です。
- コンクリートの材料(セメント、骨材、混和材)
- 暑中コンクリート or 寒中コンクリート
- 養生
- 配合
コンクリートの材料
コンクリートの材料は、毎年必ず出題されている問題です。
- セメント
- 水/混和剤
- 骨材
- 混和材
この中から骨材を中心に、セメント、混和剤、混和材について問われます。
分野によって難易度は異なり、中には難しい問題もありますが、その場合は他に簡単な問題も出題されます。
全体を通してバランスがとれているので、基本を押さえれば大丈夫です。
逆に、難しすぎる問題はあきらめましょう。
コンクリートの材料の頻出テーマと出題年度
コンクリートの材料については、次のようなテーマで出題されています。
【出題年度】
- 骨材:令和2年、令和3年、令和4年、令和5年、令和6年(※令和6年は2問出題)
- セメント:令和5年
- 混和材、混和剤:令和2年、令和3年、令和5年
セメント
セメントの問題はここ5年で、令和5年度しか出題されていませんが、出題されたら得点のチャンスです。

過去に出題されたセメントに関する問題は簡単な問題だったので、「遭遇したらラッキー」と思ってください。
JISで規定されたポルトランドセメントは、「普通」「早強」「超早強」「低熱」「中庸熱」「耐硫酸塩」の6種類。
さらに、混合セメントが「高炉セメント」「フライアッシュセメント」「シリカセメント」の3種類です。
以下のセメントについては、最低限覚えておきましょう。
【ポルトランドセメント】
- 普通ポルトランドセメント
一般的に広く活用されているセメント。国内で使用されるセメントの約70%がこの普通ポルトランドセメント。 - 中庸熱ポルトランドセメント
水和熱を少なくするように作られたセメント。初期強度は小さいが、長期強度は大きい。ダムなど断面の大きなコンクリート構造物に用いられる。 - 耐硫酸塩ポルトランドセメント
硫酸塩を含む海水、土壌、地下水などに対する抵抗性が大きいセメント。海水などに対する耐久性が必要な構造物に用いられる。
【混合セメント】
- 高炉セメント
一定の割合で高炉スラグを混合させたセメントで、混合割合によってA種・B種・C種に分類される。普通ポルトランドセメントに比べて初期強度は劣るが、アルカリ骨材反応の抑制効果が大きく、長期強度が高いといった特徴がある。 - フライアッシュセメント
一定の割合でフライアッシュを混合させたセメントで、A種・B種・C種に分類される。
骨材
骨材については難しい問題も出題されており、中にはあきらめた方が良いレベルの問題が出ることもあります。
ですが、簡単な問題もあるので基本を抑えれば大丈夫です。
まず、骨材は「細骨材」と「粗骨材」に分けられます。
- 細骨材:10mmふるいを全て通り、5mmふるいを質量で85%以上通過する骨材
- 粗骨材:5mmふるいに質量で85%以上とどまる骨材
【細骨材】
川砂利、山砂、砕砂などの粒径の小さな骨材。
- 細骨材中に含まれる多孔質の粒子は、コンクリートの耐凍害性を損なう可能性がある
- 砕砂に含まれる微粒分は、材料分離を抑制する
基本的に吸水率が小さいものほど、骨材の空隙が少なく品質が優れている傾向があります。
そのため、細骨材に含まれる多孔質な粒子は「一般的に密度が小さいが骨材の吸水率が大きい」といった特徴があり、コンクリートの耐凍害性を損なう原因となります。
また、砕砂に含まれる微粒分である石粉は、単位水量を増加させる原因になりますが、材料分離を抑制する効果を有しています。
【粗骨材】
砂利や砕石といった粒径の大きな骨材。
一般的に、経済的なコンクリートにする(単位水量や単位セメント量を小さくする)ためには粗骨材の最大寸法を大きくする方が有利です。
【再生骨材】
コンクリート構造物を解体する際に発生するコンクリート塊を原料に、破砕・磨砕・選別等といった処理を行うことで製造したコンクリート用の骨材のこと。
再生骨材は、密度や吸水率によりH(高品質)、M(中品質)、L(低品質)にクラス分けされます。
再生骨材・Hは、コンクリート塊に粉砕、磨砕などの処理を行ったコンクリート用骨材で、通常のコンクリート用骨材と同程度の品質を有している。そのため、レディーミクストコンクリート(生コン)として使用可能。
混和材
混和材はレディーミクストコンクリートに加える材料で、使用量が比較的多く、練り上がりの容積に含まれる材料です。
【フライアッシュ】
ポゾラン活性により、次のような効果があります。
- ワーカビリティーの改善により、単位水量を減らすことができる
- 長期強度が増加する
- 水和熱による温度上昇が小さくなる
【膨張材】
コンクリート1m3当たり20kg~30kgの膨張材を用いることで、乾燥収縮に起因するひびわれの発生を低減することができます。
【石灰石微粉末】
ブリーディングの抑制や材料分離の低減といった効果があります。

なお、膨張材と石灰石微粉末にアルカリシリカ反応の抑制効果はありません。
コンクリートの材料に関する過去問
実際の試験では、以下のような問題が出題されます。
【骨材に関する過去問】
☆問題
【出典】令和6年度1級土木施工管理技術検定 第一次検定 試験問題A
☆解答 [ 4 ]
砕石は岩塊を砕いて製造するため、天然の砂利に比べると表面がごつごつしています。
そのため、同一のワーカビリティを得るための単位水量は増加します。
【セメントに関する過去問】
☆問題
【出典】令和5年度1級土木施工管理技術検定 第一次検定 試験問題A
☆解答 [ 4 ]
耐硫酸塩ポルトランドセメントは、水和反応が非常に速い原料を少なくし、硫酸塩との反応性を小さくしたセメント。
高炉スラグの微粉末を混合したセメントは高炉スラグセメント。
【混和材に関する過去問】
☆問題
【出典】令和5年度1級土木施工管理技術検定 第一次検定 試験問題A
☆解答 [ 3 ]
石炭石微粉末にアルカリシリカ反応を抑制する効果はありません。
暑中コンクリートと寒中コンクリート
暑中コンクリートと寒中コンクリートは、令和4年度から3年連続で1問出題されています。
正直、簡単な問題なので出題されたらチャンスです。
暑中コンクリートと寒中コンクリートの出題年度
暑中コンクリートと寒中コンクリートの出題年度は次のとおりです。
【出題年度】
令和4年、令和5年、令和6年
※令和4年は暑中コンクリートのみ
暑中コンクリート
まずは暑中コンクリートの条件を押さえましょう。
【暑中コンクリート】
日平均気温が25℃を超えることが予想される時期に使用するコンクリート
気温が高い夏季は、レディーミクストコンクリートの水和反応が進みやすいことから、コールドジョイントの発生が懸念されます。
対策としては以下のとおりです。
- コンクリートの打ち込み温度は35℃以下
- 混和剤は遅延型を用いて、水和反応を遅らせる
- 使用する材料の温度を下げる
- 練り混ぜ後から打設までは1.5時間以内
特に、使用する材料の温度は非常に重要で、通常、セメント温度が±8℃、練り混ぜ水±4℃、骨材±2℃変わることで、コンクリートの温度が±1℃変動します。
寒中コンクリート
寒中コンクリートについても、暑中コンクリートと同様にまずは条件を押さえましょう。
【寒中コンクリート】
日平均気温が4℃以下になることが予想される時期に使用するコンクリート
気温が低い冬季は水和反応が進みにくいため、初期強度の発現をしっかりと行う必要があります。
実際の対策は以下のとおりです。
- セメントは、普通ポルトランドセメントまたは早強ポルトランドセントを使用
- 打ち込みのコンクリート温度は5℃以上
- 養生としてコンクリート温度を5℃以上に保ち、さらに2日間は0℃以上に保つ
初期凍害を防ぐために、養生をしっかりと行います。
暑中コンクリートと寒中コンクリートに関する過去問
土木施工管理技士の試験ではこのような問題が出題されます。
☆問題
【出典】令和6年度1級土木施工管理技術検定 第一次検定 試験問題A
☆解答 [ 4 ]
寒中コンクリートの施工は、日平均気温が4℃以下であり、日最低気温が4℃以下ではありません。
☆問題
【出典】令和5年度1級土木施工管理技術検定 第一次検定 試験問題A
☆解答 [ 4 ]
暑中コンクリートは、気温が高いため水和反応が進みやすいことから、遅延型の混和剤を用います。
養生
コンクリートの養生については、養生方法や養生期間が問われ、1問出題されます。

養生の条件や日数などについて、数字入りで根拠を問われるので、確実に押さえておきましょう。
養生の出題年度
コンクリートの養生に関する問題の出題年度は次のとおりです。
【出題年度】
令和2年、令和3年、令和4年、令和6年
養生について
コンクリートは打ち込み後、硬化を始めるまで、日光の直射、風などによる水分の逸散を防ぐ必要があります。
なぜかというと、コンクリート表面が乾燥するとひび割れ発生の原因になるから。
そのため、打ち込み直後は養生マットなどを用いて給水することで、湿潤状態を保つ必要があります。

また、温度の変化を抑えることも重要です。硬化が進むまでに、急激な温度変化による有害な影響を避けなければなりません。
そのためマスコンクリートの養生としては、コンクリート部材の内外の温度差を小さくすることに加えて、部材全体の温度を下げることで硬化速度が大きくならないようにする必要があります。
そして、コンクリートの温度をできるだけゆるやかに外気温に近づけるため、必要以上の散水を避け、断熱性の高い型枠材を使用するといった配慮が必要です。
実際の試験問題では、コンクリートの養生について、養生の方法や日数などが問われています。
【湿潤養生期間】
普通ポルトランドセメント | 高炉スラグセメントB種 | 早強ポルトランドセメント | |
15℃以上 | 5日 | 7日 | 3日 |
10℃以上 | 7日 | 9日 | 4日 |
5℃以上 | 9日 | 12日 | 5日 |
養生に関する過去問
コンクリートの養生については、次のような問題が出題されています。
☆問題
【出典】令和6年度1級土木施工管理技術検定 第一次検定 試験問題A
☆解答 [ 3 ]
混合セメント(高炉セメント)B種を用いたコンクリートは、初期強度発現が普通ポルトランドセメントより遅いため、高炉セメントを用いたコンクリートの方が普通ポルトランドセメントより湿潤養生期間は長くなります。
☆問題
【出典】令和4年度1級土木施工管理技術検定 第一次検定 試験問題A
☆解答 [ 4 ]
養生期間中はコンクリートを湿潤状態に保ち、水和反応を促進させることで、緻密なコンクリートになります。そのため、問題文にある「コンクリートを乾燥させる」は誤りです。
コンクリートの配合
コンクリートの配合については、スランプや水セメント比などについて問われ、1問出題されます。
水セメント比、スランプ値の決め方、単位水量や単位セメント量が配合に与える影響など、コンクリート工の基礎の部分なので確実に押さえましょう。
正直、簡単な問題しか出題されないので得点のチャンスです!
コンクリートの配合の出題年度
コンクリートの配合については以下の年度に出題されています。
【出題年度】
令和2年、令和3年、令和4年、令和6年
コンクリートの配合について
コンクリートの配合とは、コンクリートを所定の品質とするために、使用する適正な材料とその割合を決めることです。

試験によく出るポイントに絞って解説していきます。
【水セメント比】
水セメント比は、単位水量(W)と単位セメント量(C)の比であり、「W/C」で表します。圧縮強度と相関関係にあり、水セメント比が小さくなる、すなわち水の量が少なくなるほど、水密性、耐久性は高くなります。
一方で、水セメント比があまり小さくなりすぎると単位セメント量が多くなるので、水和発熱量が増加し、自己収縮量も多くなります。
- 単位セメント量
コンクリート1m3当たりのセメント量。 - 単位水量
コンクリート1m3当たりの水の量。単位水量はスランプと相関関係にある。単位水量が多いと、材料分離の抵抗性が低下し、乾燥収縮量が増加することでコンクリートの品質が低下する。
【細骨材率】
骨材全体(a)の中で細骨材(s)が占める割合のことで、「s/a」で表します。
細骨材の量が減ると、骨材全体の表面積が減るため、同じスランプを得るために必要な単位水量が少なくなります。そのため、所要のワーカビリティーが得られる範囲で、単位水量ができるだけ小さくなるように設定します。
細骨材率が過少となると材料分離を起こしてしまうため注意が必要です。
なお、コンクリートの配合の基礎的な内容については、[生コンの配合や規格「18-8-20BB」などコンクリートの呼び強度の意味や覚え方を解説]の記事で詳しく解説しています。
コンクリートの配合についてもっと基礎の部分から学びたい方は、ぜひ参考にしてください。
コンクリートの配合に関する過去問
コンクリートの配合については、過去に次のような問題が出されています。
☆問題
【出典】令和6年度1級土木施工管理技術検定 第一次検定 試験問題A
☆解答 [ 1 ]
スランプの値が大きくなるほど流動性の高いレディーミクストコンクリートになるため、作業高さが2mの方がスランプ値を大きく設定します。
☆問題
【出典】令和3年度1級土木施工管理技術検定 第一次検定 試験問題A
☆解答 [ 1 ]
水セメント比は、その値が小さくなるほど強度・耐久性・水密性が高くなるため、最も小さい値に設定します。
まとめ
以上、土木施工管理技士の試験において頻出問題であるコンクリートについて解説しました。
- コンクリートの材料
- 暑中 or 寒中コンクリート
- 養生
- 配合
この4つは頻出問題ですので、必ず押さえておきましょう。
昨年4月から全12回に渡って連載してきた『土木施工管理技士講座』ですが、今回で最終回となります。
少しでも皆さまのお役に立てたら幸いです。
なお、
「今後、こんな内容のコラムが読みたい」
「こんなことを教えてほしい」
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最後までお読みいただきありがとうございました。

作者紹介 佐藤拓真さん

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