第22回:設計通りは無論、見映えと少しの配慮が大事【若手社員向け建設業界の豆知識】
あらためまして、りゅう坊です。
今回の話の結論は“一見にこだわるべし”です。
仕上がりから垣間見える作業の丁寧さと配慮
現場でつくり上げる構築物は、やはり見映えで印象がかなり変わります。
細かな部分まで丁寧な仕上げがしてあると、印象は一段とアップするでしょう。
たとえば、コンクリートの表面仕上げで言えば、セパレータの穴埋めもその一つです。
建設は人の手が多く入る業種なので、仕上がりを見るだけで丁寧な仕事かそうでないかの判断基準になります。
自分が担当して毎日見ている現場はもちろん、作業を見ていない現場であっても、第三者的に見ただけで良い印象を持つこともあれば、その逆もあります。
「少し横着をしているな」とか、「あとひと工夫してくれたら」などと感じることがあるのです。
第一印象というのは、人間に対してだけでなく様々なものが対象となります。
建設工事の場合、現場の全工程が終わると施主による検査が行われます。
設計・計画通りに出来ているのは当然のこと、加えて、良い見た目は印象を俄然良くします。
私にとっては、現場監督2年生の頃、担当の総括監督員さんから受けた指摘が“見た目”を意識するうえでのベースになっています。35年前のこの指摘は、自身の中に今なお強烈に残っています。
それは冒頭に書いたセパレータの穴埋め処理の作業についてです。
セパレータは「ただ埋め戻しをすればいい」という感覚を持っていたら、改めるべき大事な部分。一般に使われているセパレータは鋼棒、つまり鉄製なので、穴埋めが十分でないと水分が染み込み腐食の要因になります。
きっちりときれいに仕上げることによって、技術的にも見映え的にも好印象が得られるのです。
大げさに聞こえるかもしれませんが、たかが穴埋め、されど穴埋め。このひと工夫が好印象を与えるということです。
仕上げ作業は、重視すべき大事なものであることを再認識してもらえれば幸いです。
そして、少しの配慮を心掛けることで信用につながるということも併せてお伝えします。
ものづくり全般に言えることですが、仕上がり・仕上げの良し悪しによって、丁寧さや配慮という部分が垣間見えます。
決して「これぐらいでいいだろう」と適当にやっている人はいないと思います。ただ、“より丁寧にやるかやらないか”で見る人の印象を変えてしまうのです。
丁寧さを心掛け、配慮を忘れないこと。
ちなみに、先ほどの総括監督員さんには書面についても忘れられない指摘をいただきました。
施工計画書について8回に渡り修正依頼を受け、工事期間中、後半まで修正していたので、もはや実施報告書みたいな状態でした。
「計画書はあくまで計画なので、施工実施段階で多少の相違があっても仕方ない」などと考えがちですが、これは大きな間違いです。
工事は“施工計画書ありき”です。
近頃は「やらないことまで書かないでください。書いたことは必ずやってください」と言われます。
35年前の総括監督員さんの8回に及ぶ修正は、今につながる部分であるとつくづく実感しています。
現場検査はまず見た目
今回は、見た目の話。
社会的に“人”のことで言えば『人を見た目で判断しない』とか、『まずは見た目が大事』だとか、
いろいろな言い方、考え方があります。
ものづくりの現場の出来映え・仕上がりは、まず見た目から入らざるを得ません。
竣工検査において、工事の経過は書面と写真。実際に目視できるのは構築物そのもの、すなわち結果だけです。
現場検査は、まずは見た目です。
寸法や形状が規格を満たしていることはもちろん最重要。
そして、見た目が芳しくないと印象が変わります。
「見た目が良くないけど、ちゃんと出来ているのだろうか?」
そう思うのは当然でしょう。
くどいようですが、見た目の意識付けは欠かせないのです。物も見た目が大事です。
見た目に関する【現場あるある】と対策
見た目という観点から自分が実感した【現場あるある】的なことを紹介します。
建設現場においても“見た目”が重要です。
まずは前提として、その理由を3つ挙げてみます。
1.安全性の確保
見た目が整っている現場は安全性が高いと判断されやすいです。
整理整頓が行き届いている現場は、事故のリスクが減少する傾向にあります。
2.信頼感の形成
清潔で整然とした現場は、顧客や関係者からの信頼感を高めます。
プロフェッショナルな印象を与え、信頼関係を築きやすくなります。
3.作業効率の向上
見た目が整った現場は、必要な道具や材料が見つけやすく、作業効率が向上します。
無駄な時間を減らし、スムーズな作業進行が可能となります。
これを踏まえて、ここから本題です。見た目に関する現場のあるある事項と対策についてお伝えします。
1.整理整頓
【あるある事項】
- 資材や工具が散乱していて必要なものが見つからない。
- 作業エリアが狭くなり、作業効率が低下する。
【必要な対策】
- 使用頻度の高い工具や材料は、特定の場所にまとめて保管する。
- 定期的に整理整頓を行い、不要なものは速やかに廃棄する。
- 棚や収納ボックスを活用して、物品の収納場所を明確にする。
2.清掃
【あるある事項】
- 現場が汚れやすく、ゴミが散乱する。
- 作業終了後の清掃が行き届かないことがしばしば起こる。
【必要な対策】
- 作業終了後は必ず清掃時間を設け、ゴミや汚れを取り除く。
- 週に一度は大規模な清掃を行い、現場全体をリフレッシュする。
- 清掃担当者を決め、責任を持って行うようにする。
3.服装や身だしなみ
【あるある事項】
- 作業着が汚れたり破れたりしている。
- ヘルメットや安全具の着用が不十分。
【必要な対策】
- 定期的に作業着を洗濯し、破れた場合は速やかに交換する。
- ヘルメットや安全具は正しい方法で着用し、常に清潔に保つ。
- 作業開始前に全員で身だしなみをチェックする時間を設ける。
4.標識・案内板
【あるある事項】
- 標識や案内板が汚れている、または見えにくい場所に設置されている。
- 必要な情報が欠けていることがある。
【必要な対策】
- 定期的に標識や案内板を点検し、汚れや損傷があればすぐに修理・交換する。
- 見やすい場所に設置し、必要な情報を明確に記載する。
- 現場の変化に応じて、標識や案内板の内容を更新する。
5.資材の保管
【あるある事項】
- 資材が乱雑に置かれている。
- 資材が雨や風で汚れたり劣化したりしている。
【必要な対策】
- 資材は定められた場所にきちんと保管し、乱雑にならないようにする。
- カバーやシートを使用して資材を天候から保護する。
- 資材の管理担当者を決め、定期的にチェックする。
まとめ
建設現場では「安全性の確保」「信頼感の形成」「作業効率の向上」
これらが見た目に直結します。
整理整頓、清掃、服装・身だしなみ、標識・案内板、資材の保管に特に注意を払い、定期的にチェックすることで、現場全体の見た目を整え、より良い作業環境を維持するよう徹底することが必要です。
“一見にこだわるべし”
意識を持って取り組んでみてください。
自分の気分も、現場で働く人の意識も、きっと変わっていきます。
作者紹介 りゅう坊さん
作者紹介 りゅう坊さん