グルメ司法書士・梅先生のチョコっと舌鼓と司法相談アルアル【11回】

経営/マネジメント

グルメ司法書士・梅先生の
チョコっと舌鼓と司法相談アルアル



司法書士、梅本先生による連載第2弾。
東京都内のランチが美味しいお店を紹介しながら身近な司法書士への相談アルアルを会話形式でやさしく解説していただきます。

今日のランチの舞台は「神保町ランチョン」。明治42年(1909年)創業の洋食屋さん。
ビアホールなので昼から生ビールが飲める洋食屋さん。従って、今日のメイン料理は、大好きな「ビール」です。
「ビールを注ぐことができるのは店主だけ」というこだわりの店。きめの細かい泡までが美味しい!オリジナルの洋食を頂きながらのランチビールは最高。

メンチカツ、ビーフシチュー、エビフライ、オムレツ、そしてビーフパイと一緒に頂く幻のウィスキーリプトン(飲めるのかなぁ?)。
歴史のある美味しいビアホールで洋食を頂くのは贅沢の極み。早く食べたい!今回もすごく楽しみ!




・梅先生
梅先生新宿区四谷で業歴約30年の司法書士
趣味は、神輿担ぎと草野球。どちらも終われば潰れるまでの酒盛り
お酒が大好きだけど、呑むと直ぐに寝てしまう、昭和生れの頑固オジサン

・ノリスケ君
梅先生の執筆を担当して3年目の編集者
自称グルメの大食漢。守備範囲は和洋中のオールマイティー



今日のメニュー
高齢者=認知症=後見 は間違い!高齢者は家族で守る



今日の舞台 ~神保町 ランチョン~

① 何歳になったら高齢者なの?

② 誰に守ってもらうの?扶養義務でどこまでいけるの?(※後編で解説)

③ 当たり前の「扶養義務」から考える高齢者保護権限(※後編で解説)



ピンポーン!


先生、お久しぶりです!今日は少し暑いですね。




おはよう、ノリスケ君。確かに今日は朝から少し暑いね。




こんな日はグビグビッと泡が出るものが飲みたいですよね。せっかくですから歴史のあるお店で、美味しい洋食を頂きながら生ビールを飲みませんか?




あらま、昼から生ビールが飲めるなんて、そんなに良いお店があるのかい?




お連れしましょう。明治42年創業の洋食屋さんです。




エッ?その歴史あるお店は、もしかして「神保町ランチョン」じゃないのかい?




ランチョンをご存じだったのですか?




もちろんだよ。学生時代に神保町の古本屋街をウロウロした後に憧れた店だよ。でも当時はお金がない学生だったから高嶺の花でね。実は入口までしか行ったことがなかったんだ。これは嬉しいお誘いだね。




それは良かったです。それでは、今日のランチのメインは「生ビール」ですね。でもちょっと待ってください。

実は、スッキリしない問題があるので、教えて欲しい事があるんです。




どうしたんだい?




最近、マスコミやテレビでも、高齢者の後見制度が話題になっていますよね。 僕も雑誌編集者で資料は読んでいるので、高齢化社会の問題は何となくわかっているつもりなんです。

僕は両親と同居していて、両親ともに70歳。自宅兼店舗の飲食店を2人で営んでいます。最近、高齢者になったねと笑っているのですけど、10年前と変わらず元気にバリバリ仕事をしているんです。
とはいえ年齢を考えれば、身体に衰えがないはずもない。そうすると、認知症対策で後見制度を誰かにお願いしなくちゃいけないのかな?どんな人に後見制度を必要とするのだろうか?もっと前から僕も両親の後見制度を考えておくべきだったのかな?でも、僕の家族で今必要なのかな?と、モヤモヤしてスッキリしないのです。




なるほど、ノリスケ君は結婚していたよね。




はい、子供も小学生が2人います。家族6人で毎日ワイワイガヤガヤ楽しく生活しています。




それは楽しそうだね。お祖父ちゃんお祖母ちゃんも、仕事に頑張れて、家庭でも生き甲斐があって良い家族だね。




はい。だからウッカリ、後見の話を出したら怒られかねないし、両親との関係が悪くならないのかと不安なのです。でも、話をしなくちゃいけないのなら、どういうタイミングで話を出せばよいのかわからないのです。




ノリスケ君は親孝行だから、かえって悩んじゃうよね。もちろん高齢者保護の問題は算数の問題とは違うから、誰にでも同じ回答が用意されているのではないんだ。それぞれの家族ごとに違うんだ。でも、法律や技術の前に、誰が誰を守るのかは、親も子供も考えておいた方が良いよね。

じゃあ今日は、生ビールを飲んで洋食を頂きながら、一緒に考えてみようね。



今日の舞台 ~神保町 ランチョン~



神保町 ランチョン
(東京メトロ他各線「神保町駅」A5出口徒歩1分、JR他各線「御茶ノ水駅」徒歩10分、JR他各線「水道橋駅」徒歩10分)

JR御茶ノ水駅から、右手に明治大学を見ながら駿河台下の交差点までおります。 交差点を右折して古本屋街の神保町交差点に向かって歩いて行くと、右手にスマトラカレーの共栄堂(創業大正13年の老舗)の少し先に、僕たちが目指すランチョンがあります。

到着しました。ここが神保町ランチョンです。 黄色の看板に黒文字でランチョンと書いてあります。 実はその上に小さな文字で「ビアホール」と書いてあるのですよ。ビアホールという言葉自体が、なにか懐かしい感じがする言葉ですよね。


「OPEN」の看板を持ったランチョンおじさんの人形が出迎えてくれます。


さあ、2階へ上がっていきましょう。


階段にはランチョンの創業時代からの写真が何枚も飾られていて、時代を感じさせてくれます。 混んでいる時間帯には、この階段で待ってお店の方に呼ばれるのを待ちます。ランチタイムなら回転も速いので5分くらいで着席できますから心配いりません。



お店の中は広くてとても明るいです。たくさんの店員さんが元気に働いていて、イメージ通りの洋食屋さんの感じ。左手にはビールコーナーがあって、ここで生ビールを注いでいます。




ワクワクするね。まずは生ビールだね。水分摂取を我慢して、口の中カラカラでお店に着いたものだから、写真を撮るのも忘れて一口飲んじゃいました。生ビールの盛り上がったきめ細かい泡の感動は、是非ランチョンにお越し頂いて体験してみてくださいね。






フ~ッ!美味しいですね。特に泡が美味しいなんて、不思議ですね。




じゃあ、何を食べようか。




お任せください。ランチョンは神保町という学生街という土地柄もあってか、1皿の量が多いのです。だから二人でシェアしながら頂く方が楽しめますよ。まずは、前菜で白アスパラから行きましょう。お腹が空いていて、つい食べてしまってから写真を思い出しました。実際の量はこれの倍はありますから。

生ビールが一口で蒸発してしましました(笑)次は何を飲みましょうか?




ノリスケ君はビールを飲むのが早いね。一瞬にしてグラスがカラになるね。以前に元力士の方とビールを飲んだことがあるけど、同じスピードだね(笑)




恐れ入ります。では次は黒ビールにしましょう。






黒ビールもコクがあって美味しいね。泡が蓋になっているので、ビールの味が逃げないのかな。美味しいよ。




さあ、洋食を頼みましょう。ランチョンと言えばなんと言っても…




メンチカツ!!
ナイフを入れると、中から大量の肉汁が溢れ出て、舌にのせると肉の旨味の快感が頭を突き抜けて、少し遅れて頬がとろけてくるね。我を忘れて咀嚼するんだけど、気が付いたら口の中には何もない。昔、毎日空腹だった学生時代を思い出したよ。

今、これを食べる事ができてとても嬉しい!ランチョンありがとう。






メンチカツの美味しさに青春時代の思い出が重なって、特別に美味しいのですね!もう一品食べましょう。次はビーフシチューです。




わぉ!学生時代には高くて食べられなかったよ(笑)言葉でしか聞いたことがなかった洋食だね。






ウメ~!僕の名前じゃないよ、美味しいという意味ね(笑)。味に深みがあるよ。スプーンですくって口に運ぶ動作が永久運動になりそうだよ!




僕はお肉が大好きなんです。このビーフシチューは最高ですね。肉の旨味が肉自体に残っていて、ルーが肉と野菜の旨味を含んで複雑な味わいしています。僕、大好きです!ご飯にかけて飲んでしまいたいくらいです!




カレーじゃないのだから、飲むのは勘弁してね。




次に食べたいものがあるのですけど、その前に、少しお話を聞いても良いですか?




そうだったね。あやうく忘れるところだったよ。




① 何歳になったら高齢者なの?




あくまでも僕の感覚なのですけど、高齢者になったら、誰でもが認知症になって介護が必要になって、誰でもが後見制度を利用する必要があるのかな?というイメージなんですけど、そうなのでしょうか?




なるほど。確かに最近はマスコミで高齢者問題を扱う事が多くて、後見のワードが出てくるよね。でも、誰でもというのは少し過激だね。結論から言うと、高齢者と認知症と後見制度は「=」ではないよ。

ところで、ノリスケ君は、「高齢者」を何歳からだと考えているかな?




考えたことがなかったです。お祖父ちゃん、お祖母ちゃんと言われるようになったら高齢者かな~、という程度の認識ですかね。




お祖父ちゃん、お祖母ちゃんになる人は、早ければ、40歳代でもいますよ。




ですよね(笑)。何歳から高齢者なのですか?




実は、僕には答えがわかりません。高齢者という言葉は曖昧に使われているのです。

例えば、「高齢者の医療の確保に関する法律」では簡略すると「65才以上を高齢者、65歳以上75歳未満を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者」としています。




この基準はよく聞きますね。笑い話ですが、先日お会いした方は、「俺は後期を超えて末期高齢者だ」と笑っていた方がいました。65歳から年金の支給を受ける人が多いですから、65歳から高齢者でしょうかね。




「高齢者の居住の安定確保に関する法律」では、簡略すれば「60歳以上を高齢者」としています。




60歳とは早いですね。60歳ではまだまだ若いじゃないですか。




「高年齢者の雇用の安定等に関する法律」では、簡略すれば「55歳以上を高年齢者」としています。




ますます若いですよね。分からなくなってきました。大昔の日本の会社では定年の年齢だったと聞いています。




「道路交通法」では「高齢」の用語は使っていませんが、簡略すれば「70歳以上の人には特別な講習」を求めていますね。




大都市圏なら電車や地下鉄、バス、タクシーが充実しているから自動車の運転ができなくても、それほど困らないとは思いますね。でも、地方で生活する人にとって自動車は下駄替わりの道具にすぎない。
気軽に使えないと買物や診療にも困るから、少し遅めの70歳なのですかね。それでも70歳では若過ぎるような気がしますけどね。とはいえ、高齢者ドライバーの道路の逆走は頻繁に問題なっていますから、この年齢も逆にこれで良いのかも難しい問題ですね。




もっと曖昧なのは、例えば「高齢者、障碍者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」では、「加齢によって心身の機能が低下し日常生活を営むのに支障がある人を高齢者・老人」と言っています。年齢ではないからさらに曖昧です。

さらに、「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律」では、「年を取った人を対象」としています。



誰を基準にして年を取った人というのでしょうか?もはや、判断基準すらわからないですね。




だから高齢者と言っても、何歳からなのかがわからないんだ…。




今まで「高齢者」と言われたら、つい「認知症」は大丈夫ですか?と考えていたけど、高齢者の概念がこれだけ曖昧だと、高齢者だというだけで認知症と結びつけては失礼なわけですね。




僕はそう思うね。認知症を定義づけるなら、後天的な「脳の障害」によって、記憶、思考、見当識、理解、計算、学習、言語、判断等において日常生活や社会生活に「支障をきたす」状態と言われているね。




よく、「もの忘れ」と対比されますよね。どう違うのですか?




もの忘れは、若い人で老人でも、程度は違えども誰にでもあるんだ。これは脳の障害による支障ではないから認知症ではないんだよ。




簡単な基準を1つ言えば、
・もの忘れ=指摘されれば思い出す。
脳の中にある情報を自力で復活、引き出すことができる。後からでも思い出せる。

・認知症=全く思い出せない。
なぜなら本人の脳の障害によって消失してしまった情報だから記憶は復活しない。思い出せなければ、認知症。



そうしたら、認知症は年齢で発生するわけではないという事ですね。でも、事前準備をするためにはある程度の年齢が目安になるとありがたいですよね。年齢的にはどう考えたらよいのでしょう。




1つの考え方だけど、「健康寿命」という言葉を知っているかい。




はい、健康寿命は「他人の支援や介護を必要としないで、自力生活ができる年齢」の事ですよね。




そのとおり。2019年のデータだけど、こういう数字があるよ。



男性 女性
平均寿命 81.41歳 87.45歳
健康寿命 72.68歳 75.38歳


もちろんこれは、平均の数字だから、90歳を過ぎても、矍鑠(かくしゃく)とされた方も沢山いらっしゃいます。


そうしたら、仮に健康寿命を超えた方を高齢者と呼ぶとしても、「他人の支援や介護を必要としないで、自力生活ができる」人であれば、高齢者と呼ばれたとしても、それは直ちに認知症を意味するというものではないという事ですね。




そういう事ですね。ただし、年をとると、白髪や老眼になるように、脳だって年相応に衰えるんだ。これは人間が生物である以上仕方がない事だよね。そして、脳の衰えはその衰え具合が目に見え難いから、その時には、衰えが突然かつ急激にくるんだ。だから、健康寿命の平均年齢に至った人は、元気であっても認知症になる事を想定しておいた方が安全だと思うね。




確かに、今の日本は、医療技術・介護技術が各段に進歩したし、衣食住も安定安全な供給がされ、戦争もないので、平均寿命が毎年伸びていますからね。そうすると、認知症になった後の状態で生活しなくてはならない年数が長くなっているということですよね。




そのとおり。平均寿命と健康寿命の差の年数(男性約8.7年/女性約12年)は、他人の支援や介護を必要とする生活(=認知症の生活)になるのだからね。

ただし、もう1つ忘れないで欲しい事があるんだ。今、僕たちが使っている認知症という言葉は、民法の用語ではないんだ。つまり医者が脳の様子を判断した結果なんだ。




どういう意味ですか?




医者の立場からは認知能力が衰えているのだろうけど、後見制度と結びつく「能力」は「事理弁識脳威力」であって、医者が言う認知能力とは違うんだ。事理弁識能能力は「不充分」「著しく不十分」「欠く」の3段階で判断して、後見制度の「補助」「保佐」「後見」に結びついていくんだ。この3段階の判断は、実はとても曖昧で、家族や弁護士でもわかるものではないんだ。

最終的には、裁判所が判断せざるを得ないのだけど、その境界線はとても微妙なんだよね。他人の支援がどれだけ必要な人であるかを判断するのだから、正確には分からないよね。だから、医者に認知症と診断されたからといって、直ちに事理弁識能力が不充分だ、だから後見制度が必要だとは言えないんだよ。




確かに、高齢になると、お医者さんから認知症ですと言われる場面がありますけど、最初の頃は、自分の事は自分で判断できるし介護も不要ですからね。




そうだね。医者に認知症だと言われたらその程度にもよるけど、多くの場合はその時点からでも今後のために一緒に対策を考えて行きましょう、と提案できますからね。もちろん、医者に認知症と言われる前からでも準備はできます。




だから、認知症と言われても、即座に後見制度ではないのですね。







ビールがなくなりましたね。次は少し変わったビールを飲みましょう。外国のビールみたいですよ。グラスが違いますね。 ビールで酔いの勢いが付いちゃって、このビールの名前を忘れてしまいました。カタカナでした(笑)飲みに行ってください!






食べる物もなくなってきたね。次は、ランチョン名物のオムライスにするか、オムレツにするかだね。だいぶ食べてお腹に入っているから、ご飯ものを避けて、オムレツにしようか。




悩みますね。でも、今日はオムレツにしましょう。実はまだ食べたいものがあるので。






フワフワで美味しい!大感激です!しかも中がクリーミーでトロトロです。歯がいりません。




そうだね。エビが付いているところも嬉しいね。ソースが美味しいよね。野菜にかけて食べちゃいました。ところで、次に食べたいものは何かな?




さあ本日のメインです。それはエビフライです。




良いね。軽くサクッとエビフライだね。




フフフッ、軽くですね(笑)。サクッと食べられるかは見てのお楽しみですから。次のビールをお願いしましょう。




ハーフ&ハーフです。生ビールと黒ビールを混ぜたいいとこ取りのビールです。






これは生ビールのスキッと感と黒ビールのコクが混ざって、〆ビールに良いね。




メインのエビフライが来ました。いかがですか?






何この大きさ!でかいね~。子供の頃に東映怪獣映画祭で見たエビラみたいな大きさだよ(笑)長さで言ったら25センチくらいあるね。こんなに大きなエビフライは見たことないよ。




まず頭を外して、味噌を食べます。その次に頭の甲羅を分解して身を取り出します。頭の部分だけでも十分に海老を堪能できますね。




美味しいよ!




いよいよ胴体部分です。レモンを絞って、タルタルソースを付けて、ガブッ!とあかぶりつきます。




夢のようだよ(笑)。巨大海老にかぶりつくなんて!美味いなぁ!フライの衣まで美味しいからね。




満足してもらえたようで嬉しいです。




大満足だよ。じゃあ、もう少し話を続けようか。





前編はここまで!後編では後見制度や家族信託についても詳しく学んでいきます。

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