グルメ司法書士・梅先生のチョコっと舌鼓と司法相談アルアル【第5回】

経営/マネジメント

グルメ司法書士・梅先生の
チョコっと舌鼓と司法相談アルアル




司法書士、梅本先生による連載第2弾。
東京都内のランチが美味しいお店を紹介しながら身近な司法書士への相談アルアルを会話形式でやさしく解説していただきます。

今日のランチの舞台は「アンコウ」専門の名店、 「神田 いせ源」
創業は天保元年(1830年)、京橋三丁目付近で初代立川庄蔵が始めたそうです。2代目立川源四郎が店を神田連雀町に移して、店名も「いせ源」に改名したとのこと。

いつも最後は夢心地の梅先生。土曜日のランチタイム。果たしてどんなお話になるのか。 お楽しみに!




・梅先生
梅先生新宿区四谷で業歴約30年の司法書士
趣味は、神輿担ぎと草野球。どちらも終われば潰れるまでの酒盛り
お酒が大好きだけど、呑むと直ぐに寝てしまう、昭和生れの頑固オジサン

・ノリスケ君
梅先生の執筆を担当して3年目の編集者
自称グルメの大食漢。守備範囲は和洋中のオールマイティー



今日のメニュー
法律改正 相続登記が義務になる!しかも忘れると過料」(前編)



今日の舞台 ~ 神田 いせ源 ~

① アンコウみたいに大口明けて笑ってる場合じゃない。だって過料ですから

② 相続登記が義務化!ご葬儀が終わったら、登記の手配も準備して下さい(※ 後編で解説)


③ 引越届は、市(区)役所だけでなく、法務局にもお願いします(※ 後編で解説)



ピンポーン!


こんにちは、先生!先日もごちそうさまでした。




やあ、ノリスケ君。この前のお店も美味しかったね。料理のおかげもあるけど、土曜日のお昼に頂くお酒は格別の味だね。癖になりそうだよ(笑)ところで、今日はどうしたんだい?




のんびりしている場合じゃないですよ。大変な情報を聞きつけたので、先生に確認しに来たんです。




どうしたんだい、バタバタして。




法律改正があるそうですね?

それで、土地建物を持っている人が、相続があった時や引越で住所が変わった時に名義変更の登記を忘れると、罰金になると聞いたんです。もしかして、登記を忘れただけで、前科がついちゃうんですか!?




あらら、それは間違いだよ。見事に中途半端な聞き間違えしたものだね(笑)。そんなアンコウみたいに、大きな口を開けてポカンとしなくても大丈夫だよ。ちゃんと説明するから、水でも飲んでよ。




罰金取られて前科が付くわけではないのですね。それなら安心だ。安心したら、お腹がすきましたね。




そうだね、今日もちょうどお昼ご飯の時間だね。ノリスケ君、どこか美味しいお店を知っているならそこで話をしようか?




待ってました!アンコウみたいだと言われて思い出しました。神田に美味しい「アンコウ」のお店があるんですよ。創業は江戸幕府11代将軍徳川家斉公の時代というから、江戸っ子としては一度は食べておきたいですよね。



今日の舞台 ~神田 いせ源~



神田 いせ源 (東京メトロ丸の内線淡路町駅A3出口徒歩2分・銀座線神田駅4番出口徒歩2分・JR神田駅又は秋葉原駅徒歩5分)



さあ、到着しました。ここは神田いせ源です。JR御茶ノ水駅の聖橋口で降りて、線路際を秋葉原方面に歩いて、神田郵便局の裏あたり。 再開発で建った高層ビルの裏ですね。



古いお店がなくなったのですが、この一角だけは古くからの建物とお店があって昭和の香りがプンプンします。歩いているだけでもワクワク感がある街並みです。その中にある木造のお店が、いせ源です。

神田須田町の木造の建物が並んだ一角に、いかにも昭和の香りがプンプンしたお店があります。引き戸をガラガラと開けると、期待通り昭和へタイムスリップします。関西生まれだけど今日だけは江戸っ子になっちゃうよ。



入口に下足番の方がいて、靴を脱ぐと下足札をくれます。ちなみに下足札が帰りにお会計の伝票にもなります。今は昔、神楽坂に料亭が沢山あった頃に、一度だけ料亭に連れて行ってもらった事がありました。その時に下足番の方に迎えられた事を思い出しました。いよいよ昭和レトロの世界に入ります。



階段を、トントンッと上がっていくと、お座敷の大広間があります。2人・4人の座卓が間隔をあけて設置されています。ガスコンロが備わっていて、アンコウ鍋を食べる雰囲気が満々。1人客の方もいらっしゃいます。壁の額も調度品も全て和風なので、とても落ち着きます。



ランチ時間なのに待たずに入れたね。とても運が良いね。さあ、何を食べようか。




料理はお任せください。まずは、ビールからが良いですね。ビールのあてにレンコンの煮物がつきました。

今日のメイン料理はアンコウ鍋です。お酒のあてにはあん肝が食べたいですよね。それにアンコウの煮凝り・アンコウのからあげ・アンコウの刺身はあるかな?刺し身はランチではめったに食べられないんですよ。






さっき中居さんから聞いたけど、今日はお刺身もあるらしいよ。ぜひ食べてみよう。アンコウのお刺身は初めてだから楽しみだよ。




まず最初に来ました。あん肝です。いかがですか。






タレに紅葉おろしを溶かすと、ピリッとくるけど、甘い肝がとろけて美味いね~。濃厚なあん肝をビールで流し込むから、ビールがすすんじゃうね。もう1本お願いします!




ビールのピッチが速いですよ。先生が大好きな熱燗は、まだ先ですからね。





この日のアンコウは、津軽海峡で捕れたアンコウを活〆して持って来ているそうです。新鮮さが大切ですからね。




続いて、アンコウの煮凝りとから揚げです。






煮凝りがプリプリ。僕は煮凝りが大好きなんだ。




アンコウのから揚げも、油が美味しいから、ビールが体にしみわたりますね。フグのから揚げにも似ていますけど、アンコウの身の方がフワッとしていますね。




お塩を軽くつけて頂くとさらに美味しい。





お刺身は夜のメニューで、ランチではめったに出ないけど今日は特別に出してくれました。ラッキーです。



スダチを絞ってお塩で頂くと格別ですね。ポン酢でも美味しい。頬肉は肉厚でコリコリ。皮も歯ごたえがあって楽しい。




貴重品の刺し身は、肉厚感を楽しめるね。アンコウの刺身は珍しいから、じっくり味わいたいよね。美味しいなあ。今日はアンコウ尽くしで嬉しいな。




ビールも頂いたことですし、そろそろ今日のテーマの法律改正の話ををしてくれませんか。




美味しさに興奮して、忘れていたよ。その話もしなくちゃね。



①アンコウみたいに大口明けて笑ってる場合じゃない。だって過料ですから




犯罪者になっちゃうとか罰金だとかは間違いだよ。でも、法律が改正された事で、今までは登記しないで放置していても問題にならなかった事に登記義務が発生する事になるんだ。

例えば「相続登記」や「住所・氏名の変更登記」に、登記義務が課せられて、義務違反者には「過料」という一定額の金銭の支払いのペナルティーが課せられる事になるんだよ。




え~!じゃあ、やっぱり罰金なのですね?




違うよ!「過料」だよ。「罰金」じゃないよ。まず、最初にはっきりさせておこうね。「罰金」と「過料」は違うんだ。




え?「罰金」と「過料」は違うのですか?




違うよ。「罰金」は刑事罰なんだ。だから「前科」が付くんだよ。「過料」は行政罰の秩序罰なので「前科」は付かないんだ。刑事罰には「科料」という刑罰もあるんだ。

「過料」と同じ「カリョウ」と読むので間違いやすいから、区別するために「過料」は「スギリョウ」、「科料」は「トガリョウ」という人もいるね。




な~んだ。じゃあ、心配ないですね。




コラコラ。「前科」は付かないけど、一定額の金銭を支払う不利益は受ける点は同じだよ。しかも、もしも支払わなければ、自分の財産が差し押さえられてしまうから、大口明けて笑ってはいられないのだよ。




ん~。確かに気を付けなくてはならないですよね。でもなんで、今までは権利だった登記が義務になって、しかも国民に過料という不利益まで与えるような法律改正がされるんですか?




国民に不利益を与えるのか、利益を与えるのかは、今の社会事情を踏まえての政治的な判断になるから一概には言えないな。だって、それを決めたのは僕達が選んだ今の国会議員達なのだからね。




改正のきっかけは何なのですか?




マスコミでも話題になっていたと思うけど、「所有者不明土地」の解消のためなんだよ。




所有者不明土地というのは何ですか?



「所有者不明土地」というのは、不動産登記簿からでは直ちに実際の所有者が判明しない、又は判明しても連絡が取れない土地の事なんだよ。これがなんで社会問題なるかというと、例えば

 ・公共事業や大規模災害の復旧・復興事業がいつまでも進まない

 ・土地の管理や利用のために必要な所有者の合意形成がむずかしい

 ・土地の管理が不十分で隣接土地に悪影響が発生している

という不都合が発生しているからなんだよ。




巷で、幽霊屋敷とかゴミ屋敷とか言われる場所の事ですね。




昔でもあった事なんだけど、近年著しく増えているんだよ。
高齢化社会が進んで相続の発生後に名義変更がされていない場合とか、登記の名義人が住所・氏名を変更したのに変更登記をしないまま放置していることなどが原因なんだ。 (所有者不明土地の内で、相続登記未了が約66.7%・住所等変更登記未了が約32.4%)

しかも現在、日本国中の所有者不明土地を全て合わせると九州を超える程の広さで、2040年には約720万ha(北海道本島に近い広さ)くらいになると言われているんだよ(2021年3月19日 日本司法書士連合会資料)




確かに登記費用が高い・遺産分割の話し合いが煩わしいとか、登記を放置している理由はそれなりにあるとはいえ、その広さが九州程の大きさになっていると言われれば、もはや放置できない状況ですよね。

学生時代の友人の話ですが、彼は一族で山を持っているとのことですが、それが誰の物かわからないし、場所も「南のあの高い木~西のあの高い木のあたり」くらいの話で、現地に行った人も今までいないと言っていました。




そうなんだよ。山林まで含めれば実際にとても多い話なんだよ。ところが今は、街中でも所有者不明土地が増えてきているんだ。

それで、不明土地の発生に歯止めをかけるとともに、既存の不明土地の解消もはかりたいと言うのが、今回の過料を伴う登記の義務化という法律改正なのさ。




でも今までは「登記は自由です」と言っていたのに、いきなり過料を振りかざして「自由を奪う」なんて脅しみたいですね。




あはは。脅しは大げさだよ。今までだって、義務のある登記はあったんだよ。



例えば、会社の登記(商業登記)は義務なのです。もし役員の1人がお亡くなりになれば、本店所在地では、お亡くなりになった日から2週間以内に死亡の登記をしなくてはなりません。もちろん後任の役員さんも考えなくてはなりません。

不動産登記でも、「表示登記」は義務があります。例えば、家を新築・増改築をしたら、新築登記や建物の床面積の変更登記は義務なのです。




そうでしたね。脅しなんて口が滑りました。ごめんなさい。




実際に、会社の登記を懈怠していて、裁判所から社長の自宅に過料の手紙が届いて、総務部長が叱られたなんて話はよく聞くからね。それでは、もう少しお酒を呑んで、僕の口の滑りを良くしてから、詳しい話をしようね。





お銚子の横にもいせ源と書いてあります。特別な感じがして嬉しいですね。1合のお銚子なのだけど、少し多めに入っているような?呑兵衛の勘違いでしょうか(笑) 



前編はここまで!

後編では、相続登記ついてさらに深掘りして解説していきます。アンコウ鍋の紹介もあります!お楽しみに!

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