建築基準法とその解釈② 面積に算入するかしないか

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建築基準法とその解釈② 面積に算入するかしないか

【コラム 1級建築士による建設アラカルト】【独学1級建築士 nandskさん】



前回から連載形式でお伝えしている建築基準法の解釈について。
前回は、「建築物」についての定義や考えをご紹介しましたが、今回は面積についてです。建築物の面積というのは建物の価値や税金などにも影響してきますが、意外と判断が難しい部分です。



建築基準法施行令第2条第1項第2号で定められている建築面積。法文上は水平投影面積と書かれています。
この水平投影面積とは、建物を上空から見下ろしたときの面積と考えるとわかりやすいでしょう。ほとんどの建物が屋根の形がそのまま建築面積となるかと思います。これだけならわかりやすいですが、これに緩和措置があります。
法文には外壁、柱の中心線から1m以上突き出たものがある場合おいては、その端から水平距離1m後退して計算すると書かれています。建物の外壁に庇が付いていたり、屋根の軒が建物の外壁より突き出している場合は先端から1m後退して面積を計算することが可能です。ここで重要なのは突き出した、ということであり、庇の先に柱や壁が付いていたり、1階の一部を駐車場にしたピロティなどでは緩和できないことがあるので注意が必要です。
同じように吹きさらしのベランダや廊下も緩和対象ですが、ベランダの両サイドに壁があったりして3面が壁に覆われていると吹きさらしとは言えずに緩和対象外となります。

床面積についてはさらに意見が分かれます。
建築基準法施行令第2条第1項第3号で定められている床面積は建築物の各階又は一部で壁の中心線で囲まれた部分の面積と定められています。次の4号には不算入部分として防災備蓄倉庫や宅配ボックスなどが示されています。
建築面積と同じくポーチやピロティ、廊下などで開放的な部分は緩和措置がありますが、先端から1mとかではなく、すべて面積から除外することができます。ただし、建築物としての利用がある部分については面積に算入するとされていて、これが非常に難解です。
例えば、玄関ポーチの下に自転車を止めると、その部分が駐輪場となり面積算入となります。他にもベランダや廊下にエアコンの室外機を設置してフェンスで囲うと、囲った部分が機械室扱いとなり面積に算入する必要があります。
判断が分かれる事例としては体育館のギャラリーでしょうか。保守点検用で一般の人が上れない場合は面積不算入が多いですが、一般の人が登り観覧できるような形状だと面積算入することが多いです。
他には、外壁が曲面になっているような球体の床面積、床は無いけど棚のようになっている出窓部分の取扱いなど、床面積については設計者が判断に迷うケースは意外と多いんです。

街中で変わった建物やスペースを見つけたら、面積はどうやって計算しているのか、考えてみるのも面白いかもしれません。



今回のコラムは【独学1級建築士 nandskさん】

独学により1級建築士に合格。住宅やアパートの設計・工事監理、特殊建築物の維持管理、公共施設の工事設計・監督の経験あり。2級、1級建築士試験受験者へのアドバイスも行っている。『建築の楽しさを多くの人に知ってもらいたい』と話す

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