若手社員向け建設業界の豆知識_~経歴35年土木現場監督のあるある話~

ナレッジ/ノウハウ

第15回『時間の価値を見直す』





あらためまして、りゅう坊です。

今回は、時間について考えたいと思います。



時間の重要性

時間は、建設業界に限らず、どの業界においても大変貴重なものです。

時間は“資源” であり、時間は“人にとって命” と言えます。
今、こうしている間にも時間は流れ、過去になっていきます。人も老いに向かうのです。

ひとつの現場を担当する場合、例えば作業期間が半年あっても、無情にも瞬く間に過ぎ去っていくのは必然です。
「半年あるから大丈夫!」 これはいささか危険です。

公共工事を受注した場合、共通仕様書のほか、特記仕様書に以下のことが添付されています。


  • 工期設定の理由
  • 休日、悪天候を見込んだ日数

まず、これらの記載を確認することが必須です。
そして、工事全体を通してチェックすべきは、『工事期間と工事数量が妥当であるか?』『現場の条件によってやりやすいか否か?』

なんといっても究極は、単純に『工期内に納めることができるか?』
これに尽きます。

土木工事である場合、ほぼ屋外です。天候に左右されることが必然なので、予定は簡単に狂いが生じます。四季によって、おおまかな予想は立てられますが、日々の天候は直前にならないとわかりません。
時間を最重要と捉えていないと、結構痛い目に遭うのです。

自身の経験から考える危険な判断は、【先延ばし】です。

「後でいいや」「明日でいいか」
こんなふうに思ってしまうと危険です。気持ちにこれが出てきて、流れにまかせてしまうとクセになり、なかなか戻すのが大変なのです。
後々、こういった時間が工期を圧迫し、精神的にもきつくなり、つらくなる現実が待ち受けています。

【先延ばし】は避け、【前倒し】ぐらいでちょうどいい具合になると思うので、実践することをおススメします。

あらためて、時間の重要性を意識して進めていくことが大切です。




時間の有効活用

現実問題として、「時間を有効に使おう!」と言っても、機械のようにはいかないのが人間です。
時に、不測の事態やトラブルなど問題が出てきて、時間を奪われることもあります。

一日の作業時間は限られているので、どうしてもやり残してしまう作業が発生するのは致し方ないところです。

これは、現場の作業においても、管理面の書面作業においても言えることです。
やり残しが発生すると、少しずつ、翌日以降にズレが生じて溜まっていくのが定番なので、極力増やさない意識が必要です。

この負担を軽減する工夫も考えなくてはならないですが、作業量と時間が比例していないのも現状です。

一分一秒たりともムダにできませんが、人間の集中力はそんなに続かないものです。
ここも計算に入れて進める必要があります。



“書面管理の時間の有効活用”

書面管理は事前の準備が大切です。


  • 計画準備段階でのフォーマット作成
  • 現場稼働時の発生数量、出来形値のメモ書き

パソコンへ直接打ち込むのもいいですが、現場でタイムリーに下書きやメモを取るだけでも、後々の作業が困らなくなります。

『材料などの搬入数量が残り、管理表に記入できる』『計測した寸法の数値が残り、再計測などの手戻りが防げる』といったことにつながるからです。

その場で記録することで忘れない、ということです。

人間は忘れる生き物なので、記録に残すのが一番。一分一秒をムダにしないために大事なことです。




建設業の2024年の動向

国土交通省は、工事関係書類の簡素化・電子化による「スリム化」の取り組みを全面展開すると発表しています。


◆スリム化のポイント6項目◆

1.工事書類の原則電子化(ASP活用)

2.受発注者間での作成資料の役割分担明確化

3.作成・添付不要な書類の明確化

4.二重作成・提出防止

5.検査書類限定型工事の活用

6.遠隔臨場を活用した段階確認、材料確認、立ち会いの効率化

2023年12月12日 日本工業経済新聞社の記事から抜粋・引用


2023年度内にガイドラインなどを作成して、2024年度から進めていくもようです。
30年以上前から書類の簡素化が提唱されていましたが、建設業者が作成する書類の量は少なくないのが現状です。



“自身の実体験の話”

1992年頃、建設省(現・国交省)の工事に携わっていたときのことです。
監督官から「これらの書類は提出不要」と言われ、思わず自分の口から出た言葉が「では、作成も不要ですね?」でした。

しかし、当然ながら即答でした。
「作成は、しておいてください」と。がっかりしました。

当時の簡素化の意味合いは、現在の【提出書類】と【提示書類】のルーツのようなものだったのです。

あれから30年超を経て、社会情勢の変化やIT化の流れなども相まって、ようやくこういった流れが来たと感じています。働き方改革における労働時間の取り決めによる影響も大きいでしょう。

時間短縮をしようとすれば、単純に作業量を減らすのが得策ですが、必要・不要の見極めと吟味は不可欠です。

施工者側からも、必要書類に対して積極的な提案や意見を出していくべきだと思っています。




今回のまとめ

今回は、時間について考えてみました。
時間はとても重要なものですが、時間に追われ、忙殺されるようなことは避けたいものです。

これからいろいろな変化を期待したいですが、労働時間と作業期間が比例しないこともまだまだ多いでしょう。

時間を重要視しつつ、【前倒し】で進めていくことが肝要です。




◆作者紹介 りゅう坊さん
関西在住。1級土木施工管理技士。中堅ゼネコンで土木工事現場監督35年の経歴を持つ。
現在も請負で施工管理業務のほか土木建設工事のお悩み相談、管理書類の作成補助を行うなど、趣味のDIYと合わせて人生を謳歌中。自身のブログ『りゅう坊の楽楽ブログ』では、サラリーマン時代の経験をもとに人生、人間関係について考察中。また、ウッドデッキのつくり方やネットビジネスの始め方などの無形商品(コンテンツ)の作成・販売にも対応している。

りゅう坊さんのブログ   DIYとWorkを簡単に! りゅう坊の楽楽ブログ

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